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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
明かされる真実

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90/246

#90 決着

 コートをなびかせ宙に浮かぶシーさんが手をかざしそのまま横に動かす。辺りに落ちていた瓦礫が物凄い速さでジャックに飛んでいった。即座に反応して上体を逸らしてジャックが躱した。その瓦礫の陰からレイピアを構えて飛び出してきた。攻撃を右腕を硬化して防ぎハイキックをしたが瓦礫で壁を作り防ぎ宙に浮いていた。


「前言撤回をしましょう。あの時の強さのままではなくそれに加えて魔の力を使えるようになった。私達魔王軍からしたら即戦力級の魔族へと転化することに成功した我々の裏切り者」

「裏切り者だぁ?お前らの仲間になったつもりはねぇよ。この身体になったからよ確かに誰とも関われないのは嫌だがよ便利なこともあるんだよ。俺が大好きな海でよ、昔以上に人を助けられるようになったからよ」


 手を合わせると地面から石柱が現れ、ジャックが打ち上げられ隙が出来たかのように見えた。身を翻して天井を蹴り襲い掛かり顔を掠める。何故かシーさんは笑っており四方から石柱が取り囲みジャックを押しつぶしたかのように見えた。だが破壊して飛び出してきた、流石に無傷ではないようだ。

 自分はなんとか目で追えてはいるがあまりにも速い展開で物事が進んでいる。互いに自身の持つ能力を最大限に活かして戦っている。その様子を見ているとどうしても加勢したくなってしまうが『魔の力で作られた術壁を越えられないなら足手まといだ』と言われてしま・・・

 いや待てよ、これを何とかさえ出来れば自分も加勢できるのか!?キュミーを少し離れたところに置いて剣を構えて魔力を込め剣術を放つが一向に壊れる気配がない。もしや攻撃では壊せないのか、別の方法を試そうにも今の自分には他に何が出来るんだ。

 魔の力でどうにかするのか?辛うじて右腕だけ魔の力を纏わすことに成功し壁に触れると紫色になる。そのまま触れ続けるがそれ以上変わることはなかった。何か似たような事を過去に見たことがある気がするが思い出せなかった。一体いつなんだここ数カ月の間で魔の力を使った時の記憶を巡っていた。

 そんなことを考えてる最中も目の前では目まぐるしい戦いが繰り広げられていた。一見互角のようにも見えるシーさんとジャック。それぞれ能力に差があり段々と離されるだろう。シーさんは魔力による正確な攻撃で着実に削り、そしてジャックは単純なパワーをぶつけ力押しをしている。それにしてもここまでの戦いは早々ないだろう。ベルゴフさんも本気を出したらこの戦いと同じかそれ以上の物が見れるのだろうか?


「そろそろ埒が明かないなこうなったらこうするしかねぇな!!」

「っ!?」


 術式を高速で描いて中から大量の尖った骨が飛び出しそれが全てシーさんの背後に円を描くように大小様々な骨がともに浮かび始める。そのうちの1本だけジャックに飛んでいき相殺しようと打ち砕く。だがその右拳からは血が滴り落ちシーさんの背後に新しいものが補充された。


「先程までと何かが違うなこれはまるで魔剣で斬られた時と同じ感覚か?」

「魔の力を込めてふんだんに使って魔剣並みの切れ味と強度を持ち合わせた。俺特別製の骨の剣は痛いだろう?」

「ならこちらも奥の手を出すとしようじゃないか」


 ジャックの身体が一回り程大きくなり肌は赤水晶色へと変化した。これはベルゴフさんも本当にやばい時にしか使用しない{奥義・纏神}と似たものだろう。それならば先程までとは比べ物にならない程の力を持っているはずだ。互いに威圧感を放ち始め息を吞んでいる。

 そんな中自分は記憶の中でようやく見つけた。今まで助けてくれた魔王の娘ラ・デビア・アンクルによって一度死の危機から助けられた時のことを思い出した。あの時は確か自分に力を分け与えるために魔の力を使っていた。

 ならばその逆も可能ではないか?もう一度壁に手を当てる。今度は壁と一体化するように魔力を腕に込め始める。壁にうっすらと渦巻き状の模様が発生し体内に何かが入ってくる感覚を感じた。無くなっていたはずの魔の力が段々と回復するのを感じる。吸収しきるまで時間がかかるようだ。

 自分がそれを始めたのを皮切りにシーさんも動き出した。細剣に加えて骨の剣による視覚外からの攻撃を繰り出し始めた。ジャックも距離を詰めて攻撃を繰り出し拳と脚を合わせ始めていた。武術を嗜んでいない一般人にも分かる。一生に一度と言っていい程のとてもハイレベルな戦闘が繰り広げられている。

 互いにダメージを喰らいながら先に動いたのはジャックだった。超至近距離での肉弾戦をやめて急に距離を取った。そこに骨の剣が向かっていくが既に姿はなかった。超高速でシーさんの辺りを回り始めその残像が残り黒い円を作り出していた。真ん中にいるシーさんは手を合わせて集中しているように見えた。急に多数の線が突き抜け始めた、おそらくジャックが攻撃をしていたが突然黒い円が消えシーさんとジャックが地面に落下した。

 シーさんの身体にあちこちに傷がついているのはもちろんのことだが身体の色が元に戻ったジャックの身体には多数の切り傷がみられた。すれ違う際に互いに攻撃を与えていたのだろう。シーさんがなんとか身体を起こし細剣を構える。どうやらシーさんの方が若干勝っ...急に背中に猛烈な寒気を感じ奴から違和感を感じた。


「はぁ、流石にこれで終わりだよな?念のためとどめを刺しておくか」

「シーさん気を付けてまだそいつ何か企んでい、」


 自分が危険を知らせる前にシーさんの身体が粉々にされ吹き飛ばされた。厳重に守られていた魔道具がむきだしになっていた。


「どうやら私の方が上手だったようですねシーウェーブよ?」

「へっそのようだな、お前さんもなかなか苦しそうだな。もう俺には抵抗する力も残っちゃいないからな」

「最後に何か言い残したいことはありますか?」


 助けに行きたくても未だ吸収が終わらないので向かうことが出来なかった。頼む、このままだとシーさんがやられてしまう。早く終わってくれもう目の前で誰かを失うのだけは嫌なんだ。


「お前さん勝ったと思ってるだろ」

「誰がどう見ても私の勝ちではないですか?」

「へっ、気づいてないのかそこに今のお前さんじゃあ勝てない奴がいるってことによ」

「あそこで何かをしている紛い物ですが?」

「さっきから人のことを下に見過ぎじゃないか?若いやつらってのは成長が速いんだぞあっという間にでかくなりやがる」

「最後の最後につまらないものになりましたねシーウェーブこれでお別れです」


 ジャックの手が魔道具に伸びていきがっちりと掴んだ。シーさんが声をあげ始めた無理やり取ろうとしている。吸収が終わり立ち上がろうとすると頭の中を何かにかき混ぜられているような激しい頭痛に襲われてしまう。何かをしようとしてなんとかシーさんに手を伸ばすが破壊音と共に魔道具が取り外された。またも自分は助けることが出来なかった。

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