#9 冒険者達
部屋を出るとウェルンが駆け寄ってきてなぜか手を握られた。そのまま階段を駆け降り受付の横に備え付けられている先程の部屋にあった測定器と似たような謎の置物の前にやってきた。
「ここにその羊皮紙を置いたら冒険者登録出来るよ!」
「あ、ありがとう」
置物の前に着いてウェルンの手が離れてしまったことに多少の残念味を感じながら言われた通り台座の上に羊皮紙を置いた。
しばらくすると白色のカードが出てきて受付さんがカードについて説明しはじめた。これは冒険者としての身分を示す冒険者カードというものらしい。カードは上から紫・青・赤・黄・白・黒の色で冒険者ランクが区別されている。冒険者ランクとは実力ランクと探索ランクの合計値で決まり、その中でも特に紫色のカード持つ者は実力と探索の能力をどちらも兼ね備えていて、とても珍しく全世界で約10枚程しか存在しない。もちろんのことだがギルド長のノレージ様も紫色で他にも前世界大戦の覇者はみな総じて高ランクらしい。
ではなぜ自分が一番下の黒ではなく白なのかと言うと、自分はサタニエルキラーというA級称号が与えられていて、実力ランクが赤相当なのだが探索ランクが全くないためカードの色がいきなり白色になったという説明を受けた。そうかあの時倒したやつはサタニエルって言うのか・・・
「えー!?なんでいきなり白色なの!?すぐ追いつかれちゃったなー」
「ウェルンも白色なのか?」
「なのか?じゃなくて私は前ここに魔能審査に来た時に登録してコツコツとランク上げして来たのになーずーるーいー」
そりゃそうだ初日から黒ランクをすっ飛ばしていきなり白ランクなんて他の人から生意気だと思わ...
「おいぃぃ、なんでてめぇぇよぉぉいきなり白ランだぁぁ?」
・・・やっぱり絡まれた。うんまぁなんか予想通りって感じでいちゃもんつけてくるよな。文句言ってきたやつとそいつの仲間らしきやつらに囲まれた。うーんギルド内での戦闘行為に当たるものは禁止と聞いているからな。どうするかなーこれ完全に因縁つけられてるからなー正面の男が手を挙げ肩に手を回してきた。
「ちょっとカード見せてみい!」
「あ、はいどうぞ」
「うーんと、うお!こいつサタニエルキラーじゃねぇかやばすご!」「まじか俺初めて見たわー!!」「いつか倒したいもんだなー」
「・・・へっ?」
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「兄ちゃん仕事で一緒になったらよろしくな!」「それじゃあなぁ!」
因縁つけられたかと思えば歓迎されてなんかよく分からんうちに夜になってるし。ギルドの先輩方と仲良くなって色々教えてもらえたな・・・都会ってこんなもんなのかー
「私がギルドに初めて行って登録済ませた時もお祭りみたいだったんだよね」
「へぇみんなすごく友好的なんだな」
「まぁね私もだんだんと理解していったんだけど仕事仲間としてある程度関係作ってた方が楽なんだよねー」
確かに一理あるな冒険者ギルドには色んな人が集まる。1人で依頼をこなす人もいるだろうが複数人でこなした方がいいものもあるだろう。自分達もパーティメンバーを募集してみるのもありかもしれない。
だがしかしそれは同時に互いに能力を教えあわなければならない。自分の術適性のことをノレージ様からは教えることをあまり勧められていない、それともし自分が勇者であるかもしれないということは一度関わると何か良くないことが起きてしまう恐れもある。
宿に帰る途中でウェルンにはちゃんと今日分かった自分の能力のことを伝えた。最初こそ驚いていたのだが絶対に誰にも言わないと約束してくれた。今日は色々と予定が重なりすぎて互いに疲れていた。宿に着くとすぐにそれぞれの部屋に分かれて、明日からのことを考えようとはせず寝る態勢に入り今日の疲れをとることにしたのだった
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「う、うわぁぁぁぁぁ逃げろぉぉぉ」「おかあさーん!!おとうさーん!!」「誰かたすけてくれぇぇぇぇ」
「くっ!遅かったか!これでメルドリア西部地帯の町村の襲撃は7件目か・・・やはり元を潰すしかないのか・・・とりあえずこの町の悪魔共を殲滅せんとな!」
やはり行くしかないのか。突如現れたあのダンジョンらしきものに、だがあそこのダンジョンは自分1人での攻略は厳しいぞ・・・今からギルドに依頼してもまた違う村が襲われるかもしれない。
「あ、ありがとうございます!俺なんか出来ることないですか?う、うわぁ!!」
「危ないから下がってろ!!」
「え?」
「はぁぁぁぁぁぁ!!でこれで最後!っとそうだぁ!じゃあ1つ急ぎで王都のギルドに伝えてくれないか?」