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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
明かされる真実

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88/246

#88 交わる剣と拳


「理解が出来ないことがある。感情に身を任せて勝てぬ戦いに挑む貴様らは愚かでしかない。問おう貴様は勝てる見込みもないのになぜ戦おうとする?」

「勝てる見込みがない?まだ全力を、」

「いいや勝てないさ。今まで同じことを言った奴と戦ってきたが私に勝てた者はいない。強者としてフュペーガ様の右腕である、この私ジャックが弱者には敬意を払い華麗に美しく葬ってやろう」


 ジャックと名乗ったマーマンは高笑いを始めた。もう一度剣で振りかかるが身体を捻り躱された。そのまま自分の顔に回し蹴りしてきたのでなんとか盾で防ぐが飛ばされ柱に激突させられた。動きの速さに関してはベルゴフさん以上で何も力を開放していない自分よりはパワーがあるみたいだ。

 素の実力では叶わないのは分かっていたので先程から勇者の力を引き出そうとしていた。だが自分はこの力をコントロールした気でいた。今までも自分の意志で引き出せたのは片手で数えられるか、この自分が着けているペンダントが呼応した時に力を引き出すことに成功させたことしかない。


「もう終わりか?まだまだこれからだというのに」


 まだ終わるわけにはいかない。両腕が鱗に覆われ今まで片翼だけだったが、今回はなんと両翼生えてきていた。今の自分はより魔族に似た姿になってしまっているだろう。


「お前その姿ということは、サピダム様が言っていた偽勇者か?」

「偽勇者?」

「ああ、魔族の中の裏切り者が勇者として我らの邪魔をしている。この船を襲う前に聞かされていてな」

「それが自分だと言いたいんですね?」

「実際目の前にしてみたがお前魔族ではないよな?」

「魔の適性を持ってる珍しいヒュード族ってだけですよ?」


 だが実際自分はデビア族なのか魔の適性を持つ珍しいヒュード族なのかは分からない。この力を使う度に自分は段々と化け物になるのかもしれない。今はこの場を乗り切るためにこの力に頼らざるを得ない。そのうちしっぽとか生えてくるかもしれないな。


「まぁなんにせよ少し見た目が変わっただけだろう?」


 その会話を聞いた頃には既に奴の反対側に回り込んでおり肩を斬りつけていた。今までも中々能力が上がっていたが今回は格段に変わっているような気がする。正直自分が最も驚いている程ではある。またも高笑いをしだしたジャックは先程と違い声量が上がっていた。段々と奴が元々座っていた所に近づいていくと玉座をこちらに蹴り飛ばしてきた。


「三魔将軍様方以外にこの私の身体を傷をつけた者はあなたが初めてですよ!名前を聞いておきましょう特別に墓を建ててあげましょう。ですがその身が一切残ることはないでしょう、この怒りは収まらないですからね」

「自分が初めてなら相当狭い世界を生きてきたんですね」

「・・・調子に乗るなよ擬い物が」

「擬い物じゃないソールだ」


 一定の距離で動きを止め拳術士ぽい構えをしてとても集中した様子を見せていた。奴の速度がまた一段と上がったようだが動きは目で終えていたのでこの状態ならギリギリ戦えそうだ。今度もこちらから仕掛ける。剣は空を斬り自分は殴り飛ばされるが空中で受け身を取りもう一度斬りかかり攻撃を当てることに成功した。

 実力はほぼ互角のようで、その後も激しい戦闘を繰り広げた。どれくらいの時間が経ったのだろうか気を抜くと致命傷を喰らいかねない。ジャックも口数が減り集中している、しかしこのまま戦っていても自分はおそらく負けてしまうだろう。理由としては互いにダメージの蓄積はもちろんあるのは分かるのだが全く倒せる気がしないことだ。


「中々やるようだがソール、貴様魔力が尽きかけているのではないか?」

「さぁてどうでしょうね。魔力なんて出そうと思えばもっと出せるんですけどね」


 またもハッタリをかまして自分が使える残っている魔力量を相手に悟らせないようにする。実際奴の言う通りで全力で竜剣術を振るうならば、あと1、2回が限界。

 普段使っている魔力と違ってこの力は少し待っても一切回復する気配がない。このまま戦い続ければ自分だけがいずれ倒されてしまうだろう。なら一気に決めにかかるしかない。剣に魔力を纏わせ竜を具現化させジャックに竜剣術を振るう。


「{撃竜牙(スティング)}!!」


 最初は躱していたジャックだったが最後の突撃を正面から喰らった。まだだ!再び竜を具現化させて竜剣術を放つ


「{竜旋(ドラグーン)}!!」

「ぐおおおおお!」


 正面で防御態勢を取っていた奴に対して確かな手応えを得る。だがまだ倒れる気配はしなかった、なら限界まで剣を振るうだけだ。一瞬脚から力が抜けるがなんとか踏みとどまりもう一度竜を具現化する。


「{竜獄爪(スクラッチ)}!!!」


 今出せるだけの力を出し切り自分の身体は元の身体に戻り倒れそうになっている。剣を地面に立てなんとか片膝立ちで相手を見据える。奴の身体から大量の青い血が飛び散り血の海を作ってそこに倒れこんでいた。これで終わってるといいんだけどな。


「おにいちゃん!だいじょうぶ?!」

「ああ少し休めば大丈夫だよ、キュミーこれでお父さんの敵は取れたよ」


 そう安心して声をかけていて完全に油断をしていた。突然跳びかかってきたジャックに対して咄嗟に盾を構えようとするが肩を抉られてしまった。


「ぐわぁぁ!!」

「おにいちゃん!?」

「フハハハハハハ!!!これだから人族は甘いのだよ。相手が倒れたかどうかの確認もせずに勝ったと思うのだからな!」

「て、手応えは確かに・・・」

「確かに無傷ではないですがね。私は闘気を使い身体を瞬間的に固めていたのですよ。血が足りなくて頭が痛いですがまぁ問題はないですね」

「きゃぁ...」


 キュミーが殴り飛ばされ壁に激突して気を失ってしまう。自分は首を絞められながら持ち上げられており段々と意識が遠のいていく。どう、やらここま、でのようだ自分の、力は足りな、かったようだ。突然拘束が外れ地面に落ち息を整えて目の前のジャックを見る。シーさんが奴の肩を細剣で貫いていた。


「き、貴様ぁぁぁ」

「悪いな、俺は船長だからよ絶対に仲間を見捨てねぇぇんだよぉ。来いお前ら{デススピリット}!」


 自分達の周りに見覚えのあるスケルトン達が召喚される。先程別れた副船長さん達がこの場に召喚され人数的にはこちらが有利になった。

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