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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
明かされる真実

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85/246

#85 巡る時間

 隠れ家を後にした自分達は順調に航路通り進むことが出来た。明日の朝には西メルクディン港に辿り着くとのことだ。ただ1つ大きな問題が起きているのだが気づいているのは自分しかいない。


「ソール!明日にはメルクディン大陸に到着するってー」

「・・・()()()

「ん?どうしたの?」

「いや何でもないよ今日は何するの?」

「ウェルンは何するんだ?」

「何すると思う?」


 他人の考えていることなど本来ならほとんどの人が分からないはず。だが自分の頭の中には確信めいた答えがあった。


「船員のみんなに感謝するために宴の準備をするんだろ?」

「えっどうして分かったの!?」

「それで自分に魚を獲ってきてほしいんだろ?」

「すごーいなんでそんなに私の考えてること分かるのー?」

「まぁなんとなくかなそれじゃ行ってくるわ」


 ウェルンが食事の準備をするために駆けていく。最初は何かの夢なのかと思ったが同じことを繰り返し話し続ける自分以外の人に違和感を抱いた。軽く腕に刃を入れると痛みもあり傷痕も残っていて段々と塞がっている。次の日、傷はきれいさっぱり無くなっていた。いや()()()()()()()()()()ことにされていた。


「これ絶対に何かあるよな?」

「おにいちゃん?」


 ここで予想外なことが起きた。ここでキュミーに話しかけられることは今までなかったはずだ。


「どうした?」

「うん、みんなあそんでくれるんだけど。おんなじあそびでつまんない!」

「そうかそうか、そうなのか...」


 どうやらこの違和感に気づいているのは自分だけではなかったようだ。自分達2人以外にもいるかもしれない探してみるか。


「じゃあ今日はちょっと探し物するか」

「うん!あそぼあそぼ!」


 ウェルンには悪いが先に進むためにこの異変を止めなければならない。だが自分に気づけるのだろうか?正直人よりはそういった感性は鈍い方なのでパッと見で分からないだろう。


「ねぇねぇおにいちゃん?」

「んどうしたキュミー?」

「みたことないとびらあったからそこいってもいい?」


 見たことない扉?それは確かに怪しいな。まずはその場所を目指してみるか。キュミーを先導させてみるとそこは元々船長室があるはずの場所に船の作りとは明らかに違う扉があった。


「ここだよー」

「確かにこんな扉はなかったな。でもどこにも取っ手がないような...」


 目の前に存在するのはどう見ても扉。試しに押したり引いてみたりしたががビクともしなかった。そんなことをやっているとベルゴフさんがやってきた。自分達には軽く挨拶したが扉には全く気付いていなかった。

 いつもなら『なんだこれ?おらぁ!!』みたいなノリでぶち壊すだろう。実力の高さは関係なくこの異変は起きている。今更ながらに思うことなのだがどうして自分とキュミーだけが無事なのだろうか?少し考えていたのだが思い当たる節はなかった。


「これ本当にどうするんだ...」

「あっほねさんたちだ!」


 キュミーが指さす方向に視線を向ける、そこにはシーウェーブ海賊団の一員であるスケルトン達がいた。だが何やら様子がおかしい。いや同じ格好をしただけのスケルトンではないか!?と思った矢先武器を構えてこちらに一斉に放ってきた。


「危ない!!」


 咄嗟に剣で弾くが1発だけ左腕をかすめてしまった。この狭い通路でキュミー庇いながらだといつもみたいに大きめに動けない。


「なんでほねさんたちこうげきしてくるの!?」

「あれは多分見た目一緒だけど違う人なんだと思うよ。キュミー危ないから少し隠れててな」

「ううん、いつもおにいちゃんたちたいへんそうだもん。わたしもたたかう!」


壁にかけられた大きめの槍を取りキュミーは構え始めた。武器の重さによろけることなく様になっているな、ベルゴフさんたまーにキュミーとどっか行くことがあったけど槍を教えていたのか。自分の横にいたはずの姿がいつの間にか消えスケルトンの頭蓋を砕き割っている姿だった。


「いいぞ!よし自分も行くぞ!」


 キュミーに一瞬気を取られたスケルトン達の懐に入り込み竜剣を放つ。


「{竜旋(ドラグーン)}」


 残ったスケルトンを一斉に倒しきると黒い靄となって消滅した。壁も多少斬りつけてしまったのだが全く跡が残っていない。どうやら誰かが自分達の船丸ごと術にかけ全く同じものを生成していることが分かった。人以外すべてがおそらく術で作られているのだろう。これほどの芸当が出来るとなると相手は相当な手練れだろう。


「ねぇおにいちゃんどうだった?」

「ああ驚いてるよ、こんなに動けるなんて思ってなかったよ!」

「えへへ、ほめてもらえた・・・」


 槍を後ろに持ってモジモジしだした。自分も同じぐらいの時はここまで動けただろうか。それにしても見事な動きだったな。意識してないと認識が出来ないほど静かな動き、それでいて力強い一撃で相手にダメージを与えられている。元々槍を使っていたと思える程完璧な武器の扱い方だった。


「ねぇおにいちゃん」

「うんどうした?どこか痛めたのか!?」

「ううん、これしたからうえじゃない?」


 扉を指さしてそんなことを言う。下から上?扉の下部の方を見ると確かに隙間が少々空いていた。手を下にかけ上に持ち上げると扉が収納されて階段が現れた。まさか下から上げて扉を収納するとは。その発想はなかったな、こういうやわらかい頭を持っているのも羨ましいものだ。いや待て、自分言うて歳で言うと20歳なのだから若いじゃないか。少し気を落としたが先に進もうキュミーの手を取って階段を登っていく。

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