#84 平穏、不穏
そこにあったのは黒めの木材と白めの木材で構成されたまた違う船がそこにはあった。ブレインマザー号を直したのではないのか?でもどことなくファザー号にも似ているような。
「船長手筈通りいけやした!」
「おーう、ご苦労さんソールには言ってなかったが向こうの船長と話してな。なんとなマザーとファザーを混ぜ合わせてより良い船に生まれ変わらせたんだよ。名付けて{ブレインペアレンツ号}!動かしゃ世界最速、そのまま海戦に持ち込んだら相手の球を受けることなく船を沈められるって寸法よ!」
2つの船を混ぜ合わせたのか。大きくなったように見えたのは錯覚ではなかったな。それぞれの船の良いところを混ぜ合わせて真に最強の船がここに完成させたのか。
「で俺らは、メルクディン大陸まで送ったあとこの船をもらって引き続き旅をするってこった」
「え!?いいんですかネモリアさん?」
ブレインマザー号はサルドリアから送られ今や国宝としてエルドリア王家の物となっているのだ。ブレインファザー号も元々はサルドリア王家の物で混ぜ合わせて全く別物になったとはいえそれを譲渡するのか。
「はい、この船を譲る代わりに私達エルドリアの私掠船として働いてもらうことになりました」
「ええ!?」
「こいつら、そもそもサルドリアの私掠船だったからよ。次期サルドリア帝の権限でエルドリアに権利を委託したんだよ」
「それじゃ海を漂うよく分からん骸骨じゃなくてエルドリアの海賊になれたんだね!」
「ウェルン、その言い方はやめた方がいいと思うぞ」
「ハハハハハしょうがねぇさ。ゴレリアスの時代から生きてる貴族でもいれば私掠船と俺らは呼ばれる。だがな今の時代の奴らから見たら幽霊船を操る魔王軍の残党にしか見えんからな」
「ほねさんたちこわくないよ!だってあそんでくれるもん!」
キュミーがスケルトン達に飛び込んでいきスケルトン達が動きを合わせた。なんだあの無駄に迷いのないキュミーが喜びそうな動きはいつの間に出来るようなってるんだ。それにしても見事な動きだ、本来違うことに使っていそうな連携技にも見えてきた。
「まぁ何はともあれよ。ここからは俺らシーウェーブ海賊団も新勇者一行を守らさせてもらうぜ!」
「「「旅は道連れ世は情けぇ!俺らが守ったるぜー♪」」」
これでようやくメルクディン大陸を目指せるのもそうだ。この前までと違って退屈することはないだろう。だが自分達はこのあと起こる人為的な災害によってまさかあんなことが・・・
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メルクディン大陸の海岸に黒翼を生やし杖を持った魔族がいた。その足元には西メルクディン港で働いていた、行方不明とされたフィンシー族がいた。一部の者は殺され生き残った者もただただ怯えて死を待つのみだった。
「この海域のどこかにヒルドリアがあるのですね?」
「は、はいぃぃぃ。ですが場所まで案内することは無理です」
「ほぉそれはどうしてですか?」
「い、いやどうしてか思い出せないのです。王族以外の者は秘密主義の為に特殊な術をかけられているため。思い出せはするのですがその場所には何も存在しないのです」
「厄介ですなあのフィンシーの術ここまで強力とはやはり早急になんとかせねばならないが」
苛立ちが湧きたつのを目の前にいるフィンシー共を殺すことによって抑える。あの勇者一行にいたフィンシーは魔王様が死んでいないことを知っている。これだけの長い時間をかけているのだ。我々に対して策を用意していないわけがない。だがしかし世界中でどれだけ情報を探しても海底王国ヒルドリアのことは分からないのであった。
「...はぁしょうがないか、あの手で行くとするか」
その手に手鏡を作り鏡の向こうにいる存在と交信を図る。この鏡は魔王様から三魔将軍にのみ渡された誰にも妨害することが出来ない唯一の連絡手段だ。長年使っていなかったのには理由があり、そもそもこの魔道具を使える相手が存在しなかったのだ。
自分以外の三魔将軍とはまずは我らが魔王軍の破壊の象徴ともいわれる狂猛のフュペーガ。勇者一行の唯一の拳術士であった拳神マイオア・フィーザーに正面から戦うことが出来た。だが魔王城での勇者一行との戦いで身体と魂を分断させられ、儂が魂だけを回収したためしばらく行動を共にしていた。この間ようやく身体を取り戻し完全復活を果たしたが調子が戻りきらず現在調整が行われている。
そして魔王軍の参謀担当であった、この儂叡智のサピダム。持ち前の魔力で前線での作戦指揮や度重なる実験で魔王軍を勝利するため尽力してきた。だが儂も魔王城での最終決戦で本体を失い今は人工肉体に魂を映し、長い年月をかけてようやく馴染むきることに成功した。全盛期以上の力を出すことに成功した。
もう1人魔王ラ・ザイール様に次ぐ実力者であり、魔王の右腕とも呼ばれる三魔将軍{夢幻のドリューション}がいる。奴に関しては何もかもが分からない。実は儂も素顔を見たことがないというよりかは素顔がないのだ。
ロイヤルスリイと言う希少魔族で一度振れた相手の容姿と記憶をコピーしたり自身の身体の一部を寄生することが出来る。成功するとそこで新たな意思をもつドリューションの分身体となる。そのため魔王軍と連合討伐隊の間を行き来し情報を持ち帰ったり、裏切り行為を誘発させて我が軍を有利にしていた。
奴は最終決戦時に姿を見かけなかった、いや誰がドリューションなのかが分からなかった。おそらく生きているのだろうが儂も今の今まで一切情報がつかめなかった。
「じゃがこの鏡を使うと奴が見ている景色が分かる。今は一体どこにいるのだドリューションよ」
鏡の先の光景が歪み始める。段々と映し出される光景を眺めるとそこには面白い光景が写っていたので高笑いをしてしまった。そうか、なるほどそこにいたのかそれならば儂も全力を持ってヒルドリアを探そうではないか。
「いたぞあいつだ!」
「ほぉ?エクスキューション共か...上層部が既に染まり切ってるとは知らずに立ち向かってくるとは愚かなり」
囲まれるが辺りの死体ごと魔術で暗黒の底にエクスキューション兵諸共引きずり込んだ。ここで起きてた惨劇を全てなかったことにしてその場を後にした。




