#7 マジックアルケミスト
自分達は今商人さんの馬車に揺られていた目を閉じ深く呼吸をしていた。ぺちぺち、もう少しでメルドリア王国城下町に辿り着く。ぺちぺち、ウェルンは商人さんが馬車を操作する横で外の景色を楽しんでいる。ぺちぺち、セリルちゃんはと言うとさっきからずっと顔をはたいている...暇だからってやめてくれないかな?ぺちぺち、何もないからって人の顔で遊ばないで...
「あっ起きたーおとーさん起きたよー」
「ありがとセリルちゃん、ソールをいつも起こしてくれて」
「おおここがメルドリアですか!!」
瞑想をやめて城下町に入る支度をしておく決して寝起きではない。自分は王国に来たのは生まれて初めてだ。村とは比べものにならないほど栄えているのが分かる。人通りも激しく並ぶ露店に大きな建造物、そして正面にそびえ立つメルドリア城、村にはなかった物ばっかりであちこちに目移りしていると目的地に辿り着いた。
「商人さん、王都まで馬車を引いてくれてありがとうございました!!」
「いいよいいよ、少しの間とても楽しかったよまたいつか会おうねソールくん、ウェルンちゃんも元気でね」
「こちらこそありがとうございました!!」
馬車は自分達から遠くなっていくセリルちゃんが笑顔でこちらに手を振っているので振り返した。降ろしてもらったこの場所は冒険者ギルドのメルドリア支部。ここに来たのは自分の魔能を確かめギルドに登録して冒険者になるためである。ドアをくぐるとあちこちから視線を感じたが歓迎されているのか果たして・・・
「あーウェルン!大丈夫だったの!?」
「ケリル!そっちこそ元気だった?」
「その調子だと大丈夫そうね」
「どういうこと?もしかして私達の村の話!?」
気になることを話しているがそこらへんの情報の収集はウェルンに任せよう。受付の人に問いかけると2階へと案内されたので階段を登り部屋のドアをノックした。
「空いてるから入りなさい」
「失礼します!自分ここか...」
「祠のあった村から来た子じゃろう?勇者の紋章を身に付けし者よ」
こちらのことを全て分かっていると言わんばかりに鋭い眼差しのギルド長がいた。彼はかつてラ・ザイールの城へとゴレリアス一行として城へと突入したうちの一人。歳は200を超えており世界で一番長く生きていて、術においては右に出る者はいないとされるためマジックアルケミストと呼ばれているノレージ・ウィンガル様だ。
ウィンガル族は自分達ヒュード族と違いとても長命な種族で鳥のような立派な翼を生やしており魔力を使わずに飛翔することが出来る。その中でも魔術に秀でている者は少なく弓や槍を持ち斥候のような役目などが多い。だがノレージ様は生まれ持っての魔術の才を持っていたしかも類稀なる火・水・風・土・聖の五術の適性を持っている方だ。他にも魔という術もあるがその適性を持っているのはゴブリンメイジなどの知恵のある魔物や魔族が大半である。
「それを付けているということはこの世界に危機が迫っているのか...」
「危機?なんのことですか?自分は魔能などを調べに来たのですが」
「まぁ年寄りの妄言じゃから、気にするでないこちらに来てこれに触れるとよい」
さっきから気になっていた左側にあった謎の置物は測定器だったのか。言われるがまま自分の手をそれに触れてみ、熱!いや冷たいのか?えっ痛...何だこれ霜焼けする...という訴えた目をついノレージ様に向けてしまった。だが特に気にする素振りを見せず本の整理を始めていた。その後ろ姿からはとてつもなく威圧感を感じるいや魔力があふれ出しているのか?痛みはいつの間にかなくなっていてとても温かく感じた・・・いや待て冷たいを通り越して感覚が麻痺しただけか?
「もう手を離して大丈夫じゃよ、すまないのちょっと冷たかったじゃろう」
「い、いえ大丈夫です、今ので終わりですか?」
「そうじゃな少し待っててくれるか少し時間が...む?これは!?」
慌てた様子で真っ白な羊皮紙だった物に印字された文字を凝視している。とても不安になってきた何かマズイことがあったのか?少し唸った声を上げたあととても神妙な面持ちでこちらを見てきた。
「・・・冒険者になる前に決まった質問をしているのじゃが、よいかね?君は冒険で何を望む?なんのために冒険者になりたいと思ったのかね?」