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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
秘密の翼王

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#67 歪んだ先に立つ者達

 俺は生まれて父親からお前には才能があると言われた。だが努力を怠らず常に鍛錬を続けてきて、邪魔をしようとする輩はすべて排除た。遂にエルドリアにおいて最高の術の使いとされる王宮魔術師まで上り詰めることが出来た。

 先代エルドリア王であるマジックアルケミストのノレージ・ウィンガルしか扱えなかった火、水、風、土、聖の混術(フュージョンスペル)である{エンド}も会得した。今現存しているウィンガル族最高の術使いでしかない俺は全ての種族の頂点に立ちたい。強さを追い求めるために俺は全てを捨てる覚悟もしている。


「第一司教どうした考え事か?」

「いえ、遂に実るのだなと思いまして我々ザイール教の悲願が」

「そうですとも。我々は今夜他種族に負けるとも劣らない最強の力を手に入れることが出来るのです!!」


 正直馬鹿らしいとは思っている。この世界樹に込められた魔力を吸収して、世界を恐怖に陥れた最強のキマイラを復活させ使役し世界を支配しようとしている。

 だがこの教祖はどうも見通しが甘い、復活させ衰えたとはいえ実力者達である勇者一行をどうやって倒すというのだろう。何かまともな策があるようにも思えない。

 裏に何者かがいることも掴めている。そいつにこのザイール教が利用されているのも分かっている。俺はそもそもどうしてそんなに強さを求めているのだろうか。何のために全ての種族の頂点に立ちたかったのだろうか。


「最後の仕上げといこう準備に入るぞ第一司教、いや王宮魔術師ナザ・ゴースよ」



********************************************************



 満月の夜自分達はこの国の中枢ともいえる世界樹の麓で潜んでいた。とある組織のトップがこの場所を通るとのことだ。その人物は表向きは平和的に他国との関係を築こうとしているこの国の大臣でエルドリア王も信頼している。

 だが実際は他種族を忌み嫌い、大臣の屋敷の近くには顔が潰され身体に多数の痣がある死体が何故かよく転がっている。その首には奴隷の証である首輪とウィンガル族には見られない身体的特徴、つまり他種族の虐殺死体が転がっているのだ。

 今までハウゼント達が慎重に調べようやく一斉摘発でザイール教を潰そうとしていた。そんな日にエクスキューションエルドリア支部内、作戦メンバーのほとんどがとある冒険者によって倒されてしまった。ということがあったことになり今現在に至る。


「ほんとあれほどの実力者が。紫じゃないのが不思議ですね」

「そうですね、言われてみれば私と同じランクで実力的には私の父と同等かそれ以上ですもんね」


 先日のエクスキューション襲撃の時に前からの疑問が一つ解消された。元々ベルゴフさんの実力が高いのは知っていた。でもそれは、よくよく考えてみればそれは小さな差だった。それが何かしらの形でさらに力を得て、その力をどうしてか抑え気味で自分達と共に旅をしてくれている。


「まぁいいじゃねぇか!こいつらはあそこで俺に負けて伸びたやつらと違って実力もあるし骨もあるぞ!」

「なんでそんな買いかぶられているんだか、良く分かっていませんけどね」

「それもそうですね、あなた程の実力者が言うならば待つことにしましょう」


 ハウゼントから今回ばかりは本気なのが伝わってくる。少し派手な装飾で禍々しい感じがする大きな盾を装備している。なんだろう少し嫌な感じがするな、この感じは知っている。対魔の力を持っている魔族相手なら最高の盾なのだろう。


「あっ誰か来たよ!」


 ウェルンの言葉に自分達は隠れる。煌びやかなローブを着た大臣、そしてもう1人見覚えのある人物が庭へと向かっていくのだった。


「あれは兄上?」

「実は王宮魔術師であるナザ・ゴースが秘密裏に関与。ザイール教の第一司教として教祖を支えている疑いがあったのですが、まさか本当だったとは少し手が鈍るかもしれ、」

「いえ、これも国を守ると誓ったはずの兄上が裏切った。私が彼に出来るのはもうこれ以上道を外さぬようにすることだけです」


 その言葉を聞いて安心した様子を見せたハウゼント。教祖とナザさんを追っていくと石碑の前で立ち止まる。そこで何かを唱えると石碑が地面へと沈んでいき、地下への階段が現れる。2人はその階段を下っていったのでそのあとを追っていく。地下基地へと侵入して一本道を進んでいくとそこには各国の紋章が逆さまに飾られていた。その奥でこちらを見据える教祖とナザさんそして見覚えのある憎き相手がいた。


「お前は三魔将軍叡智のサピダム!!」

「待っておったよ、勇者一行、そしてエクスキューション三闘士慈愛のゼク・ハウゼントよ」

「今回は何が目的だ!」

「なーに、こやつらが世界を我が物にしたいというのでな。手を貸しておったのだよ、まぁ少々時間がかかってしまっておったようじゃがな」

「サ、サピダム様!それは全てノレージ・ウィンガルによって他の拠点を...」


 と喚きたてる教祖をサピダムは部屋の真ん中に展開されている術式へと突き飛ばされた。教祖が乗った瞬間術式は起動し始めた。


「な、ど、どうして!!」

「望んでいたのだろう?世界を手に入れるために必要な力を欲しかったのだろう?そのために新たな身体を提供してやったのだ。言っていなかったか、そのための対価は貴様の命だ」


 このことをナザさんは知っていたのだろう。目を閉じて溜息をついていて特に驚く様子が見えない。目の前に現れたキマイラを見てその姿に息を吞む身体は小さいが溢れ出る何かを感じきる。これはとてつもない程に濃い魔の力を有していることが良く分かった。

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