#62 エルドリア
その後野盗の拠点を調べたが何も怪しいものはでてはこなかった。賊達は縄で木に括りつけてハウゼントにエクスキューションを呼んでもらってエルドリアへの進路に戻った。
「すいません、この地域で野党が目撃された情報など近年少なかったので油断していました。まさか待たれているなんて...」
「しょうがないですよ。野盗というかあれは」
「ソールを狙った魔王軍の仕業ってこと?」
「嬢ちゃんその可能性は高いな。明らかに計画的犯行だったからな罠を仕掛けたのも前日かそこらだろうな」
「そうですね先程の罠も仕掛けられたのは最近でしたね。しかも即効性の麻痺薬が塗られていたので確実にどこかへ運ぼうとしてたのでしょうね」
先ほどの奴らを反エルドリア軍とするなら、あいつらはもう魔王軍の息がかかっている盗賊やごろつきと一緒だろう。妨害を警戒しながら先ほど疑問に思ったことを考えているとウェルンも何か考えているように見えた。
「ねーソールさっきの襲撃何かおかしくなかった?」
「ウェルンもやっぱりそう思うか?」
「うんソールを狙うならあの罠だけじゃ確実性がないもん。私ならもっと大がかりに仕掛けるよ」
野盗たちが自分達の情報がどこまで持っていたのかは分からない。少なくともハウゼントを除いた4人の冒険者がいたのは分かっているはずなんだ。自分だけ麻痺させてもこの前の魔王軍との戦いで上から二つ目のランクである青に昇格したベルゴフさんとネモリアさん。その2人からウェルンと自分は実力だけなら赤だといわれた。冒険者から見れば自分達の実力は上位パーティに入る。捕らえるなら同等の実力の傭兵を用意する、もしくはさっきウェルンが言った通りに大規模な術式を施したほうがいい。
「もしかして最初から狙いが私達二人だったってことですか?」
「まぁそういうことになるだろうな。俺達を適当に足止めしてその混乱に乗じて誘拐しようって安い考えだろうよ」
そこまでは分かった。キュミーが野盗に狙われるのは元奴隷だったからまだ分かる。だがそれでも一点だけ疑問が抜けきらない。どうしてネモリアさんも捕らえようとしたのか今までキュミーを狙ったやつらが襲ってくるのは度々あった。今回初めてキュミー以外の人が明確に狙われたのだ。また襲われないように注意を払いながら道を進んでいく。
「ねぇみておにいちゃん、おっきいきー」
「いや大きいのは分かっていたがここまで巨大なのは初めて見たな」
「ようこそ皆さん私の母国で世界樹と共にある魔術大国エルドリア共和国にようこそ!!」
「これで全部ですか?」
「はいお願いします!」
ここに来るまでの間に倒した魔獣の素材や野盗が持っていた金品、それらを術式が施された図りにまとめる。するとに吸い込まれ代わりに袋が現れ中には銀貨数枚と金貨5枚が入っていた。
「試験運用にご付き合い頂きましてありがとうございました。多少支払いに手違いがございますのでこちら謝礼金の金貨15枚になります」
ギルドの係員さんからお金を受け取る。冒険者ギルドエルドリア本部ではこういった魔道具の試験運用をしているらしい。買取窓口が混んでいて並んで待っていたところ声をかけられた。ただこれは思った以上に収入が入ったものだ。それを自分とベルゴフさんの分を少し減らして女性陣の分け前を多くして4つに小分けにした。それぞれが自分のギルドカードに収納する。
「ネモ、スイーツ食べに行きましょ!」
「ええ!待ってて私の行きつけの羽団子!」
女性陣は駆け足でギルドから飛び出していった。ほんと女の子ってどうしてスイーツに目がないのだろうか。ベルゴフさんは宿に残したキュミーのために真っすぐ宿に行くそうだ。自分は少し町を見てみたかったので大通りに出る。
あちこちでウィンガル族の人が飛び回っていて高い場所を見ると魔術船が飛んでいる。魔力を使った目新しいものばかりを見ていると、大通りから外れた道からこちらを伺う誰かに気付いた。ただこちらを見ているだけなので気にはせず宿に向かっていた。
「やぁそこのお兄さんや1つ買っていかないかい?」
「これは・・・魔道具ですか?」
「おおそれに目をつけるなんていいね。それは掘り出し物じゃよこの前海岸に行ったときに拾ってな効果はわしには使えぬが相当高価な物じゃよ。贈り物として異性に送ってもよしどうじゃ買って見んかい?」
ふと手に取ったのは自分が着けている勇者の紋章に似ている。とてつもないほどに澄んだ水色の宝石が埋め込まれているとても美しいネックレスだ。よーく見るとどこかの国の紋章が彫ってあるようにも見えた、金貨8枚か...自分の残金は金貨10枚と多少の銀貨と銅貨だからな。
「買います。これでいいですか?」
「へっへっへっ、ありがとね。いい拾いもんをしたもんじゃ、いい儲けじゃな」
これは完全に勘で買うべきなような気がした。キュミーにお守りとして持たせたい。いつも自分達の帰りを文句や泣き言を言わずに待っているご褒美だ。それとこのペンダントはキュミーにすごい似合う気がしたからだ。
宿についてさっそくプレゼントすると喜んでくれた。なんだろうか、親心なのだろうか。こちらもすごく嬉しいなぁ。エルドリアのあとはヒルドリアに行って必ずこの子の親を見つけてあげようと心に決めたのだった。




