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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
秘密の翼王

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60/246

#60 防御は最大の攻撃

 自分は宿に着いて腹ごしらえをしたあと庭に出ていた。先程、港の人から譲ってもらった木材を木刀へと加工していた。この作業も慣れたものだ。

 最初父親に教えてもらった時と比べても出来が良いものだ。ただ形を整えても剣として良いものになるとは限らない。剣の仕組みを理解することでバランスの良い木刀が生まれて鍛錬しやすくなる。それと自身が向いている剣筋に合わせた剣術が生み出しやすくなるのだ。


「なかなか綺麗ですね。売り物って言われても遜色はない」

「ハウゼントさん。自分はまだまだですよ作るのにこんなに時間がかかっていてはその日の修練そのものの時間が取れませんからね」

「いやー私は不器用なんでね。そんな器用さを必要とするものは難しいですね。というか歳が近いんですから敬語じゃなくてもいいんですよ。言葉を崩したほうが良くない?」


 兜を脱いだハウゼントさんの顔を眺める。確かに歳は自分と同じぐらいだが、ハウゼントさんは大陸一つを任されるほどの実力を持ち合わせている。今までいったいどんなことをしてきたのも気になるがそれよりも気になるのは。


「んじゃ聞きたいんだけどあの盾を出現させたのって個能?」

「ああこの力?」


 何もない空間に盾を出現させる。さっきと違って装飾もそんなについていないシンプルな丸盾、バックラーが現れた。触れるとそこには魔力で作られているはずの盾が存在した。触り心地は普通に自分が使っているような鋼製の盾と変わりがない。


「すごいまるで本物だ」

「流石は剣術士、盾の良し悪しは武器触ってる人じゃないと分からないよな。それが個能{守護}の能力の一つ、魔力を形にして盾を新たに生成する」


 ハウゼントが指を鳴らすと自分が持っていた盾はなくなった。合わせてどんな個人魔能なのか説明してもらった。まずハウゼントさんの一族が守りに特化した盾術という特別な武器術を使うらしく。その中でも先代の人から過去最高の使い手と言われたのがハウゼントらしい。

 それもすべて個能である{守護}のおかげらしい。魔力で盾や壁そのものを出現させることが出来る。盾術との相性が良く、守ることにしか使えなかった盾術に攻める力が加えられたという。


「その力で冒険者をやってたら、誰にも破られなかった守りの力を破る人が現れたんだよ」

「破った人?」

「今思えばあの時私の中の壁が完全に壊れたんだろうな。しかもたった一撃でその時の最強の防壁を貫通して戦闘不能にさせられたんだよ」

「そんな強いやつもいるんだな」

「その人のことはみんな知ってるさ。エクスキューションに入ってなくても世界的に有名な人だよ」

「ジャッジマスター、ガッシュ・バグラス?」

「その通り、マスターは何者なんだろうな。攻めと守りと術どれにおいてもあの人以上なんてゴレリアス一行ぐらいなんじゃないかな」


 自分より強いであろうハウゼントが言うぐらいなのだから、やはりガッシュ・バグラスが国一個相当の実力というのは本物だろう。しかしガッシュ・バグラスという名前は前世界大戦で聞かなかった名前らしい。ここ何年かで突然出てきた名前。過去に名を馳せた誰かなのではという説もあるらしい。だがそもそも実力者が全員戦場に出ていたわけではない。ガッシュ・バグラスという名前が偽名とも限らないのだ。


「どうせなら摸擬戦やらないか?勇者の使う剣術も知っておきたいしソールも実は戦いたくてうずうずしてるんじゃないか?」

「バレてたかでもそれは、ハウゼントもそうだろう?」


 ハウゼントはその言葉に反応するかのように何もない空間から両腕に細長い木製の盾を装着する。自分は仕上げた木剣を構える。しかし盾を主にした武器術があるのかどうやって攻撃するのだろうか。


「単純な今まで学んできた武器術だけでいいな?武器に魔力を込めたりとかはなしで」


 それならありがたい。互いの素の実力が完全に分かるわけだ。ハウゼントの構えを見て思ったことは隙がないように見える。前に盾を構えることによって後ろに隙があると思いきや逆にそこを警戒すればいいのでいつでもカウンターを喰らいそうだ。


「仕掛けてこないのか?ならこっちから行くぞ!」

「んな!?」


 いきなりの体当たりに虚を突かれてしまって反応が遅れた。守りながら攻撃をしてきたハウゼントは構えを変えて攻めの体制に入っていた。地面に手をつけ態勢を整えるとすぐに右の盾が迫ってきていた。それを剣で弾いて次の一撃を与えようとすると既に盾が構えられていて防がれてしまった。

 そこまでは想定の範疇だ!防いだ盾を踏み台にしてそのまま身をひるがえして背後を取って剣を振るうが身をよじって躱されてしまう。盾を2個も構えているのになんて身軽なんだ。


「なかなかいい剣筋だな。今までで相手した剣術士の中ではゴル爺の次には強いんじゃないか?」


 ゴル爺って、ゴルドレスさんのことか?まぁ確かに自分らから見たら遥かに年上なのかもしれんが爺と呼ばれるほど歳を取っていたっけか。

 その後も攻防を繰り広げるが徐々に押されていき、結果的にはハウゼントが全勝してしまった。こうやって手合わせしていると、村にいた頃コルロと訓練していたのを思い出す。あれからだいぶ強くなってはいるはずだ。

 これからも強くなって自分を守ってくれたコルロに恥じない力を、いや勇者になって世界に平和を戻す。コルロを失った時、心に決めたことを再確認しハウゼントに肩を貸してもらって宿へ帰っていくのだった。

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