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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
獣王邂逅

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58/246

#58 同じ空の下

 夜風を浴びながら魔力を木刀に込めて振るう。やはり魔の力を使えるようになってから纏わせやすくなって剣術のキレも上がって、攻撃術しかも基本造形ランク7あるうちの造形ランク4のスパイラルも使えるようになった。


「でもどうするかな、今でこそ攻撃術だけでウェルン達もいるから戦えてるけどな」


 船の訓練場から借りた木刀を置いて前の戦いで折れた剣を眺める。この剣もなかなか手に馴染んで使いやすかったんだったんだけどな。でも力を開放した時の自分の魔力量に耐え切れず刃が折れてしまった。

 魔物素材の中で高価な竜の素材を使った剣だった。やはり鉱石素材の剣のほうがいいのかもしれない。だがあまり重いと自分の剣術には合わないからな。鉱石製の剣は基本的に重たいが耐久性は抜群だ。軽い鉱石系の素材となると質がとても高いものになり魔剣や聖剣と呼ばれる伝説級の武器もしくは英具になってしまう。


「てなるとやっぱり{聖剣テークオーバー}を探し出すのがいいんだな」

「ソールさんこんな時間まで鍛錬ですか?」

「そうですね、まだまだ強くならないといけないですからね」

「それは一体何の為に強くなろうとしてるんですか?」

「えっ?理由ですか?」


 自分の横にネモリアさんが座る。月明かりに照らされる彼女の姿はどこか悲しげだった。


「変なこと聞きましたね、それはもちろん勇者だからですよね」

「まぁ、それもありますけど一番はやっぱり守るためですね。誰であろうと救いを求めてきた人に対して手を差し伸ばせられるようになりたいですね」

「ふふふ、やっぱりソールさんはいい人ですね。今まで出会った誰よりも勇者にふさわしい方だと思いますよ」

「そうですか?いやそれは光栄だな」


 今言った言葉は実は自分を育ててくれた父の言葉の受け売りだ。ただそれと同時に世界で一番尊敬している人でもある。自己犠牲の精神がとても強く、村にいたとき腰を痛めたとなりのおばさんの為にわざわざ大陸を渡ってまで特効薬を取ってきた時もあったな。


「エルドリアに着いたら父が剣を余らせていたはずなのでソールさんに譲れないか話してみますね」

「いいんですか?お言葉に甘えさせていただきます」


 とりあえずはエルドリアに行くことが現在の目的だ。それまでにもっと魔の力を使えるようになろう。ウォールと戦った時のあの力を自由に引き出せるようにならないとな。

 でもあの力は本当に使っていいのだろうか。見た目まで魔族のような見た目に変わってしまって魔勇者と呼ばれるかもしれない。それで誰かを守れるなら英雄(ヒーロー)ではなく悪者(ヒール)と呼ばれても構わない。


「キュミーのこともちゃんと送り届けてくださいね。あの子目を離すと何をするか分からないですからね」


 そういってネモリアさんは立ち去って行った。何か隠しているかのような奇妙な違和感に襲われたがわざわざ聞くほどでもないだろう。その後少し剣を振るってから部屋へと戻ったのだった。




********************************************************




「な、貴様は!?ぐわぁぁぁ!!」

「ふぅこれでこの場所の賊は最後だな?」


 ここ最近になって賊の動きが活発になってきたな。後処理を部下達に任せて団員手帳を取り出して先輩達から連絡事がないか確認する。手帳はエクスキューションに所属した者全てに配られるもの。これは上位にあたる性能の高い通信機器となっている。

 通常の手帳と違って三闘士間同士で個人連絡が出来る。それとジャッジマスター、ガッシュ・バグラスから指令が届くというものだ。後者の方は未だ自分には連絡が来たことがないしなんなら三闘士の先輩達からは連絡をもらったことはない。


「まぁ何か連絡が来ているわけが...ん?なんだこれ?」


 えーと差出人は・・・マスター!?内容を急いで確認するとそこには一文だけ書いてあった。『自分が正しいと思うものを信じろ』?


「マスターからの初めての指令がこれってどういうことだ?・・・」

「ゼク・ハウゼント様準備完了しました」

「分かった今出よう」


 少し気になることはあるけど目の前の仕事を片付けるか。盗賊団がアジトとして使っていた廃墟に手をかざして上空に巨大な盾を出現させて叩き潰して完全に更地にする。いつもはここまでやることはない。だが今回は魔の力を持った魔獣が何故か飼いならされていたため建物自体が呪われてしまっていた。そこで自分の持つ聖の魔力で土地そのものを浄化したのだ。


「しかしやつら、誰から魔物を仕入れたんだ?こんなこと出来るのは魔の適性を持っている人か魔族ぐらいだぞ?」

「ハウゼント様!たった今こんな連絡が!」


 なんだか鬼気迫った連絡兵が駆けてきた。なんだ?緊急伝言術でも届いたのか。どれどれ見てみるか『そっちの大陸にエルドリアの旗を携えた船が到着するのだが、船ごと中にいる人も含めて全て消し飛ばしてもらいたい。中には国王殺しの罪で指名手配をしていた魔勇者ソールとその一行がいるはずだ。 三闘士ドーガ・べレイス、三闘士ザガ・ギルガバース』


「なんだ今日はやけに連絡が届くもんだな。・・・『自分が正しいと思うものを信じろ』か」


 まぁ、先輩2人からの命令のためエルドリア右港に向かうとするか。それと魔勇者ソールがどんな人か見てみるか、仕留めるのはそのあとでも許してくれるだろう。エクスキューション三闘士、ゼク・ハウゼントとしてではなくただのゼク・ハウゼントとして接触してみたいな。鎧姿を解除して肩の荷をおろしてエルドリア右港に向かうことにした。

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