#55 反乱の訳
荷をまとめ終えて部屋から出ると、先程より城内が慌ただしくなっていた。あちこちで金属音や怒声が聞こえるようになっていた。
「いたぞ!あいつだ!捕らえろ!」
通路の向こうから黒鎧姿の人が迫ってくる。とっさに剣と盾を構えて身構える。折れて刀身が半分になった剣だと忘れていた。剣をしまい魔力を手に込め身構えた。
「はぁぁ!!」
「「「「ぐわぁぁぁ!」」」」
いつも剣を振るう要領で手刀を浴びせていく。前よりも多く魔力を込められるようになったのは分かってはいたが、まさか魔力で短刀サイズの手刀を生成出来るとは。魔力の性質もあいまってなんだか禍々しい感じになるな。
「ソール!!」
「ウェルン。だいじょうぶだったか!?」
「こっちは大丈夫だったけど、なんかソールの部屋の方から騒がしい感じがしたから」
「そうなんだ、エクスキューションが襲ってきたんだよ。だいぶ中の方まで入り込んでるみたいだから早く裏口に向かおう」
道中エクスキューションに襲われながらも城の裏口に辿り着く。そこではエクスキューションとアルドリア軍が戦っていた。どう見てもアルドリア軍の方が押されている。それもそのはずだこの前の戦争で兵のほとんどを消耗してしまっているためだ。
「こりゃひでぇな一方的じゃねぇか」
「どうしてこんなことに・・・」
「ベルゴフさん、ネモリアさん!」
キュミーを背負ったベルゴフさんとネモリアさんと合流して戦場を見まわす。脱出の手筈を整えているフィオルン様とゴルドレスさんを探す。
「あそこに見えるの、フィオルン様とゴルドレスさん達では?」
「あそこか!てめぇらどけぇどけぇ!!」
ベルゴフさんが先陣を切ってエクスキューションとアルドリア軍どちらも含めて蹴散らしていく。
「ほんとに元気だねベルゴフさん。前の戦いでの疲れが見えないね」
「そうですね、何か特別な技でも使っているんでしょうか?」
「そういう話はあとにして自分達も行こう!」
ベルゴフさんが蹴散らしたあとを自分達も追っていく。フィオルン様達の元へとたどり着くとそこには術式が組まれていた。
「おっ、ソール坊来たか。早くそこ立ちなあまり長く持ちそうにないからよ」
「この中ですか!?せ、狭くないですか、ちょ、ソールさん変なとこ触らないでください!」
「ご、ごめん」
「ソ、ソール、そこ私の胸なんだけど・・・」
「!?」
このスペースがない状態であちこちと手を動かすと、女性陣の体のあちこちに手が当たってしまう。だがまだこの状態でベルゴフさんが入ってきていないのである。
「先程まで予知を受けていたからこれぐらいの規模の移動術式しか作れないのよ。そのまま待っててね準備が出来たら合図するわよベル!」
「あいよ姉御!それまで暴れてるぞ!」
毎度姉御呼びに注意していた女王様も今回は流石に余裕がないみたいだ。城壁が吹き飛ばされて誰かが侵入してきた。サルドリアで対立したエクスキューション三闘士であるギルガバースと似た鎧を纏った人がいた。
「何を手間取ってんだぁ?おお?強そうなやついるじゃねぇか!」
「ドーガ、なんでアルドリアを襲うんだ!!」
「ん?あぁ理由は簡単だよ。そこにいる魔勇者ソールを抹殺するためだよ」
「抹殺!?彼が何をしたというのですか!?」
「魔の力を持つ勇者の出現は世界を揺るがす危険性を秘めているからな。早めに摘んで起きたんだよ」
「それは一体誰の命令ですか!?」
「もちろん我らがジャッジマスターガッシュ・バグラスとメルドリア王家からの抹殺命令だ」
自分を勇者として送り出してくれたあの騎士団長さん、王様達、国規模の力を持つ世界最強の人が自分の抹殺を命じただって!?おかしい何かの間違いのはずだ。わざわざ自分達を支援するようなことをなんでしたんだ。
「メルドリアまでどうして...もしや三魔将軍の仕業?」
「三魔将軍?じゃ一連の今回の騒動はもしかしてサピダムのせいなのか?」
「ノレージと同程度の術者であれば新たな術を作ることが出来るのですきっと洗脳術でもあるのでしょう」
それじゃ今まで自分を捕えようとしてきた人ってみんなその術にかかっているのか。術者が倒されない限りは解除されないのか、それとも他に条件があるのだろうか?
「なぁもしかしなくてだけどよ、あいつ死んでないか?」
「えっ?それはどういうことベル?」
「いやぁあいつ、俺が港で見かけた時とまるで別の気を持ち合わせてるぜ?それこそ坊ちゃんとか魔族のような魔の力だと思うが?」
「それはつまり死体を何かで操って制御しているってことですか?」
「そういうことになるな。だがそんな術聞いたことないな」
「いったい誰がそんな術をやったんだ。それよりかはエクスキューション三闘士を倒せるほどの実力者はサピダム以外にいったい誰が・・・」
話をするたびに謎は深まっていくばかりだ。エクスキューションはもうほとんどが魔王軍なのかもしれない。あれほどの数を相手に自分は旅を続けられるのだろうか。




