#5 夢現の始まり
突然身体中から力が抜けた感覚がしたと思ったらものすごい激痛が襲いかかってきた。その痛みに歯を食いしばりながら自分は親友のもとへと進んだ。ウェルンが必至に回復をするもコルロから応答はなく目を瞑り最期の時を迎えていた。
「嫌、本当に嫌、私の、私の前からみんな消えないでよぉ!」
「ウェルンもういいんだ、コルロを休ませてあげよう」
「ソール...ソール、うわぁぁぁぁぁん!!」
泣き始めたウェルンに胸を貸しながら悲鳴を上げる身体にムチを打ちながら地上へと向かった。出来ればコルロの亡骸も一緒に連れて行きたかった。今の自分にはウェルンに肩を貸しながら同時に運べるほどの力が残っていなかった。別の魔族に追いつかれてしまうかもしれないそれ以上にコルロや村の人達のためにも生き残ってやるという気持ちがとても強かった。
若干舗装された道を進んでしばらくすると森へと抜けられた。そこでやっと脱出出来たと実感したがその痛みと疲れに染まった足で出来る限り王都へと向かった。なるべく出口から離れようとしばらく動いていると意識が途切れた。
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・・・ここは...どこだ?あれは・・・誰だ?・・・ぼやけて見えない...何か言っているような気がするが聞き取れない・・・誰かが何かを伝えようとしているのか?目が慣れてきたのかだんだんと周りの風景が見えてきた。なんだここは・・・森の中か?目の前にいる人物がはっきりとしてきた。
「こんなもんか!お前の力は!!魔王倒すんだろ!!」
この声何だか懐かしい気がする・・・誰の声に似ているんだ?ああ父の声だ!なんでだ?なんで父が自分に怒ってるんだ?
「だけどよ、やれるわけがないだろ!!魔王まであと1歩って所でなんでお前と戦わなくちゃいけないんだよ!!」
今自分が喋ったのか?声がまるで違うぞ・・・誰なんだいったい・・・ようやく気づいたが声とか父に似ているが違う。顔にあんな生々しい傷はない筈で何が何だか分からないまま戦い続けたどれくらい戦ったのかも全く分からなかった。それ程までに見事な剣術の応酬だった驚くことに自分が使っている流派である{竜剣}をどちらも使っていた。
{竜剣}、父から教えて貰った話だと長い歴史を持つ剣術だという。そしてこの剣術は他の武器術と比べると特殊らしい。それは決まった型をいくつか持つものの剣術士によって剣の性質がとても変わってくる。実際今見てる剣術は自分が使えるようになった壱の剣とは全くの別物だったが別にそこはいいんだ。本当にこれはいったい何を見させられているんだ。もしこれが幻術なら誰が自分に対してこのようなものを見せているのか全くもって分からなかった。そして決着が着き父親に似ている剣術士が負けて自分という名の誰かは涙を流している。何故こうなったんだ?こんなに悲しむなら戦わなければ良かったので...
「やっと俺、に勝てたか、これで、ゴホッゴホッ・・・」
「おい、おい!!やっぱりおかしいだろ!!なんでだよなんでだよ!」
「えっ?なんでって竜剣術を・・・・・為だよ」
今なんて言ったんだ?重要なところが聞こえなかったので分かるわけがない。だがこのとても驚く気持ちは自分にも伝わってきた。なんで驚いているんだ?理由が分からぬまま自分の意識は戻っていった。
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「起・・いなら今日も・・くよー」
何だか声が聞こえるような・・・まぁいいかなんかすごい眠たいしもうひと眠りつこ、はっ!?なにかの脅威が迫っていることを察知したが気づくには遅すぎた。右の頬から高く音が鳴り鈍い衝撃が伝わってくる。
「いたぁぁぁぁ!!」
「あっやっと起きた!!やっと起きたよこの人ーおかあさーん」
おそらく自分史上最強の張り手を喰らい辺りを見渡し鏡があったので叩かれたと思われる場所を見てみる。
「いや左の頬あっかいなぁ!?」
思った以上に腫れてるしなんかその場所に真新しい真っ赤な手跡がついてる。鏡とにらめっこしているといかにも優しそうな人が出てきた。そしてその後ろから飛び出してきたウェルンがこちらへ飛び込んできた。
「やっと、やっと目覚めたぁぁぁ、ソールゥゥゥ!!」
そんな涙を流す彼女に対して自分は戸惑いながらも抱き返すことしか出来なかった。さて現状を理解しよう何が一体どうなったのかを。