#48 堕ちた極星
ウォールの猛攻が続くが互いに効きもしない攻撃を繰り返すばかりで一向に状況が変化しない。俺達は慣れてきたのか、息を整えて攻撃を容易に交わすようになってきた。・・・ん？待てよ、今魔の力がないってことは奴の個能は機能してないんじゃねぇか。物は試しだ一発かますか！右腕に闘気を込めて奴の魔術を躱しながら空を飛ぶ奴の場所へ飛びかかりそのまま顔を掴んだ。
「何をする！？」
「このまま下に叩きつけるんだよぉ！{堕墜}！！」
岩場に叩きつけた瞬間奴の体内に流した闘気を爆発させる。{堕墜}は掴み技で飛行している敵を地上に強制的に降ろすことが可能なのである。
他の拳術と違う点を挙げるとするなら闘気を相手に流し込みそれを榴弾のように爆発させることだ。これにより相手がもし重装備だったとしても関係はない防御力を無視して相手にダメージを与えられるのだ。この技の欠点として他の拳術に比べて威力が低いためあまり有効打にならない。だがきっかけを掴むのにはいい拳術である。で本来ならこいつには近接技は効かないはずだが今回は手応えがある。
「な、なぜだ。なぜ個能が発動していない・・・」
「今なら行けるぞゴルド！」
「分かったぜベル！」
ゴルドが剣を構えこちらに近づいてくる。そして剣に魔力を込めているのを確認して離脱する。見るからに近くにいたら巻き込まれそうな魔力を込めてやがる。坊ちゃんの竜剣術を使う時に竜が具現化してるようにゴルドは熊のような魔獣が具現化しているぞ。
「{ダークバレット}！！」
ウォールの前に多数の魔術が形成され突っ込んでいるゴルドに飛んでいく。弾は全て弾き飛ばされ霧散していく。
「な、なんだと！！」
「うおぉぉぉぉ！獣剣、参の剣{獣暴}！！」
なんて重たい一撃の連続なのだろうか。あんなのくらったらひとたまりもないぞ・・・しかもあの体制に入った瞬間から術に対しての抵抗も持つのか。あれでは手数が多い攻撃術でも止めることが出来ないな。
「オラァ最後の一発だぁぁ！」
「グ、グワァァァァァ！！」
ウォールが砂の上を跳ねていく。にしても坊ちゃんの剣術と比べるとなんていうか力に極振りしてるな。これが竜の子供達の武器術、跳ね飛ばされたウォールが立ち上がるがよろけている。奴の個能が機能しないうちにこのまま押し切るしかない！だがこの時勝負を急いで感知外からの攻撃に気づけなかった。
「悪いがやらせはせんぞ、武に生きる者よ」
「！？くっ！！」
「ベル！！今の一撃はまさか・・・」
背後からの短剣による攻撃を受けてしまう。消耗していたため腕以外を強化していなかったのでもろに受けてしまった。傷を受けて冷静になってから気づいてしまった。後衛にいた2人が既にやられてしまっていることに、これに関しては俺のせいだ。裏を気にせずにずっとウォールにだけ気を割いていたせいだ。とゆうよりかは裏から一切敵が来ないと思っていたのもある。
「あまり戦争を舐めるなよ若造らが、いついかなる時も警戒を怠るなそう教えなかったか？ゴルドレス？」
「ローガ様、やはりあんたが裏切り者だったのかにしてもその姿は...」
先程までのローガ様と明らかに違う姿だった。まず見た目がいや肉体そのものが若返っており、黒翼を生やして肌もビースの肌色からは少し黒ずんでいる。最も目立った変化としては左足が生えているがその見た目は完全に魔族のそれと一緒だった。
「御察しの通り儂、いや私は転化したのだよ。素晴らしき肉体を持った魔族へとね」
「遅かったじゃないか同志よ、身体に魔の力はなかなか馴染まなかったか？」
「いいや力はすぐに馴染んださ。この脚が出来るまでに相当に時間がかかってしまってな。代わりといってはなんだが肩慣らしに黒鎧の集団を蹴散らしてやったさ」
そうだ裏にはジャッジがいたはずだ。瞬く間にあの集団すら倒してきたのか。敵に回るとここまで強大な敵になってしまうのかローガ様。
「ちょうどいい奴らも倒してくれ。そうすればサピダム様に紹介してやろう」
「そうか、それはいいな。だが」
ローガ様が回し蹴りの要領で踵から生えている鋭い鉤爪でウォールの身体を突き刺した。
「き、貴様な、なぜだ、こちら側ではないのか？」
「気に食わないんだよ。貴様の方が弱いだろう？今こうやって魔の力がなければそこらの雑兵と変わらないだろう？」
鉤爪が抜かれウォールが倒れる、まだかろうじて生きているようだが虫の息だろう。だが俺達も流石に疲弊しきっていてローガに攻撃を仕掛けることが出来ない。
「大丈夫ですか！騎士団長！」
「お前達やめろこいつはお前らが叶う相手じゃない！」
「分かっています、今後ろの方にいた女性2人を治療しています。自分達で奴の情報を得る時間と騎士団長達の回復する時間を稼ぎます」
「ほぉ、いいじゃないか今の騎士団がどれほどか見てやろうではないか」
「お、おい離せ！やめろ、命を無駄にするな！！」
「ゴルド悪いが俺は休ませてもらうぞ。あいつに勝つためには力を蓄えるしかねぇ」
「違う、稼げもしないんだ！あの人の強さを知らないんだ！」
その言葉に耳を疑った。そこまで言うほどなのかゴルドと共に少し後退したところで先程任せたところを見た。既に悲鳴も聞こえることもなく、大量に兵士が横たわって戦闘が終わっていた。
この感じ知っているぞ。これは師匠達と同じ強さを持った人達と同等、もしくはそれ以上なのかもしれない。これは俺も覚悟を決めるしかないな。ローガには魔術が効かないとなると俺らのような近接組がやるしかない。
だが坊ちゃんが戻ってきても勝てるビジョンが見えない。ならまだ使いたくはなかったがあの力を使うしかない。でももし坊ちゃんが力に覚醒していたなら任せよう。背中の傷を塞いで立ち上がり身体の奥底のリミッターを一つ解除した。
