#40 遂に始まる戦い
日を改めて女王様と話してわかったことは、あの夢のようなものは自分が持っている紋章から発せられるもの。正確に言えば元の持ち主の残留思念が残っていてそれが自分に夢を見せるという。元の持ち主というともちろん勇者ゴレリアス様だ。
今思えば以前にも似たようなことはあったような気はする。その時のことは全く覚えていないが今回見たことははっきり覚えている。ゴレリアス様がどこかの祠に剣を刺していたのだ。
「とここまでがその時点で分かったところだな、でそこから調べてみたが...」
「とりあえず言えるのはこの大陸には該当する場所はないわね」
あの場にいた自分以外の人は皆ただ気を失っているだけだったらしい。自分だけがあの過去を見てそのことを伝えるとすぐにフィオルン様は動いてくれた。
「でこのことは確かエクスキューションには伝えないほうがいいのよね?」
「はい、理由は分かりませんが私達は何故か追われてるんです」
「巧技と剛力の三闘士が追っているのはこちらで調べがついてるのよね」
巧技...確かサルドリアで会ったエクスキューション三闘士のうちの1人、ザガ・ギルドバースのはずだ。
「多分分かってないかもしれないから説明するぞ。エクスキューション三闘士、ドーガ・ベレイス、あいつは言ってしまえば戦闘狂だな。悪と決めたものに対しては容赦がなくなる。その余波で作戦地域近隣の住民への二次災害も跡を経たなくてな、良い意味でも悪い意味でもエクスキューションの地位を確立してるんだよな。つけられた二つ名は剛力のドーガ、他の二人と比べると戦闘に特化しているって感じだな。」
そんな人がいるのか...その人もきっと強いのだろう。そんな人達に追われていると考えたらますます何故追われているかが気になってしまう。
「話は戻るんですけど、テークオーバーはどこにあるんですか?」
「おそらくはヴァル大陸かそれかまた別の場所でしょうね。ただ山岳地帯などの場所にあると思うのよね」
「過去の旅で行ったことがないんですか?」
「少なくとも私が共に行動をした時期から行ったことある似たような場所はないわね」
なら今度はヴァル大陸に行った方がいいのか。ここから今度は北マクイル港まで戻ってネモリアさんの船で、とか考えていると扉が急に開かれた。あまりに突然で驚いてしまったが、入ってきた人の顔は危機迫っていた。
「し、失礼します!!」
「なんだ騒々しいな何かあったか?」
「ほ、報告します、アルドリアより南東の方角に強大な魔力反応が発生おそらく魔王軍と思われます!!」
「規模は?」
「確認されたのは大隊規模が100近くです!!」
「・・・不味いな、流石に今の戦力じゃ半分以上捌き切れないな。今からだと他国に救援要請が出来ないからな冒険者ギルドに緊急要請をかけな...」
「その心配は無用でございます!!失礼しますぞ女王陛下」
そう言って入ってきたのは獣神派の大臣だ。後ろに黒布を被せた何やら大きい装置を持ってきている。どうしてかは分からないが同時に何か悪寒を覚える物でもあった。
「先日ですな、砂漠で怪しい廃墟を見つけましてなそこでこんなものを見つけたのですよ」
「大臣まさかそいつは!?」
「対魔族兵器{破魔偶像}でございます。まさかまだ残っていようとは思いませんでした。これさえあれば魔族なぞ我らには恐るるに足りませんぞ!!」
「大臣その兵器の使用は許可しません」
「どうしてでございますか!?冒険者のような野蛮者達に任せるのではなく伝統ある我らの...」
「口を慎みなさい大臣、あなたがこの国の役に立ちたいのは分かりますが他種族を蔑ろにするような言動等は許しませんよ。例え貴方が世界大戦でどれだけ輝かしい戦果を上げた者でも1人では何も出来ないでしょう?」
「そ、それは・・・で、では私はこれで失礼します、後日お会いしましょう!」
大臣は部下を引き連れ{破魔偶像}と共に何処かへと去っていった。名前は聞いたことがあるな破魔偶像って世界大戦で使われた何かだろうな。
「あ、あのーちょっといいですか?破魔偶像ってなんですか?」
「あーそうよね、あの時の戦争にいない限りは分からないものね」
「嬢ちゃん破魔偶像っていうのはな...魔族に対して弱体術をかけることが出来る術具でよ。だがこれを使うためにはよ大量の術士が必要で、さらに大半の魔力持ってかれちまうから数日間魔術が使えなくなるんだよな」
だから悪寒を覚えたのか。魔族の構成要素に含まれる魔の部分、つまり魔の術適性を持つものに対して弱体術が発動するのだろう。あとは相手の戦力を下げるために自分達の戦力も減らさなければならないのか、うーん単純にコストがかかりすぎだな。
「あとは前回使用した際にキマイラには効かないことが分かったのよね」
「どうしてキマイラの話が出るんですか?昔にほとんど滅んだはずじゃ?」
「私は魔獣の王でもあるので普段とは違う、この大陸にいない魔獣もどきがどれだけいるかも感知出来るのよ」
てことは今回敵軍の主戦力はキマイラになるのか。自分達が遭遇したようなタイプがたくさんいる可能性が高いなこれは。
「まぁ逆にその方が容赦がいらなくてやりやすいよな!!」
「そうだなベルゴフ俺らで蹴散らしてやろうぜ!!」
「相手がキマイラなら私達だけで全然抑え切れますね。冒険者ギルドにも救援するとして敵の指揮官を倒すのが手っ取り早いでしょうね」
ゴルドレスさんが使う獣剣術は獣を狩ることに特化している剣術だ。そして同等以上の力を持つベルゴフさんもいるし、さらに今回の戦いはフィオルン様も戦いに参加してくれるとなればここまで心強いことはない。前回は拳神様に頼りっきりでしかも命を落とさせてしまう結果になってしまった。あれから少しでも力はつけられたし今回は大丈夫だと信じたい。
「今回は明らかな指揮官らしき反応はないんですか?」
「うーんそれに関してのことでちょっと聞いてほしいんだけど」
「何か他にもあるんですか?」
「そうだな例えば国内で暗躍してるやつがいる可能性が高いんだよな」
「えっそれって!?」
「この国というか世界に対しての魔王軍側の協力者、つまり裏切り者がいるかもしれないってことだな」
まさかそんな人がいるわけ...いやいてもおかしくはないのか。転化して魔族になった人もいるぐらいだからな。そんなことを頭の片隅に入れながら戦場へ向かうのだった。




