#38 先を視る力
「ここに来た理由は分かってます。ゴレリアスの剣の在処を教えて欲しいのですね?」
「ど、どうしてそのことを!?」
「私には特別な魔能があるのよ、それはね・・・」
「女王様!ここにおられましたか!!」
自分達が入ってきた扉が開けられそこから大きな声が聞こえてきた。そこには身なりの良いお年を召した方がいた。
「今日は何も予定はないはずよ大臣」
「急遽部族会議が開かれることに、なぜこのような神聖な場に他種族が!?」
「この人達は私の客人です、あなたに文句を言われる筋合いはありません」
「ぐっ...なら私がやっておきます、それでは失礼させていただきます!」
明らかに不機嫌な顔をして大臣は出て行った。ゴルドレスさんとフィオルン様が溜息をつくもしかしてあの人?
「さっきのが獣神派なのか?」
「そうだな、獣神派のトップでもあるが同時にアルドリアの大臣なんだ。いや本当に外れんなフィオルン様の{予知}は」
予知、その名の通り未来を先読みする魔能。でもその予知は占い程度使われるあの低魔能の?
「先程言いかけてた事の続きを言うわ。私は{予知}系の魔能でしかも外れたことのない絶対的な魔能{未来予知}を持ってるのよ」
「み、{未来予知}ですか!?あ、あの世界中探してもただ1人しか持っていないというあの伝説の個能をですか!?」
「て言っても別にコントロールも出来なくて突然頭の中に映像が流れるだけなのよね。いつかも分からない未来が流れるから少し不便なのよね」
どんなに頑張ろうとも唯一先の見えないものである未来・それが断片的とは言え見えるのはとんでもない魔能いや個能だ...
「私はあなたがフィーザーを殺してないことも知っています。それは事前に私が彼の死期を観ていたから。だが観てなければ今ここであなたに刃を向けていたでしょう」
「死期を観ていた?それって個能でですか?」
「はい、あの旅をした仲間の中で唯一観えてしまったのよ...私が観てさえいなければもう少し生きていたかもしれないのに」
少し空気が重くなる。予知で見なくともあの日が拳神様の死期だったのかもしれない。フィオルン様の個能で観てしまったがために確定してしまったともいえる。
「姉御、そんな風に思うのは違うぜ」
「ベル・・・」
「師匠よく言ってたんだよ冒険者になるならいい仲間を持てってな。そんなこと言う人があんたのことを少しでも恨んでたと思うか?だからよ後ろめたさなんて感じなくていいと思うぜ」
「そうね、大体あの筋肉馬鹿がそんなこと考えるわけないわね。・・・そろそろ本題に移りましょう」
自分達がこの国に来た目的はゴレリアス様の剣つまりはテークオーバーのある場所を教えてもらいに来たのだ。ただ自分はフィオルン様に1つだけ聞きたいことがある。
「剣の場所を教えてもらう前に聞きたいことがあるんですが」
「なに?他にも聞きたいことがあるの?」
「はい、勇者様御一行だった人達にしか答えてもらうことが出来ないです...自分の本当の父親は勇者ゴレリアスなんですか?」
正直剣のことよりも最も聞きたかったことだ。どうして自分が勇者の力が使えて、どうして自分を育てた父から勇者と全く同じ武器術である竜剣術を教えてもらえたのか。そのことを確かめる方法はかつて勇者様と旅をした人達に聞くしかない。
「その質問には私達は答えられないわ」
「どうしてですか!教えてください!」
「仮に分かったとして勇者ソールあなたはどうするの?旅をやめるの?元の場所に帰るの?」
フィオルン様の言葉に考えてしまう。確かに今の自分には帰る場所はないし、そもそも旅に出たのは世界を救うとかは関係なかったはずだ。あの時自分を守るために死んだコルロのようなこと。目の前で大切な人を誰も失いたくない。失わない為に世界を回って強くなる。自分にとって大切な人達を守るためにだ。
「まぁ言っちゃうなら勇者一行にいた私達はね。そもそもゴレリアスが誰かと結ばれて子供を作っていたことさえ知らないのよ」
「えっ?どうしてですか?」
「魔王城から帰還して宿で休んだ一晩の間にゴレリアスは姿を消してしまったのよ」
この場にいる自分以外の人は驚いていた。自分も初めて聞いたはずなのなぜかそれほど驚かなかった。どうしてだろうそのことは前から知っていたような自分もどこかで見たような...
「だからソールあなたがゴレリアスの子供なのかどうかは分からないのよ」
「そうなんかフィオルン様、勇者様の子供だから竜剣術が使えるというわけじゃあねぇのか」
今の言葉に疑問が生まれた。あれ、父親から教わったのは竜剣術で父自身も竜剣術を使っていたはずだ...ならどうして父は勇者ゴレリアスと同じ武器術を扱えたんだ。そして勇者様から直々に教わったゴルドレスさんは竜剣術が獣剣術に変化した。何かの規則性があるのか?
「おにいちゃんたちなにはなしてるの?」
「キュミーにもそのうち分かるよ、すいません私達少し外の空気を吸ってきますね」
「あっ私も行く!」
ネモリアさんはキュミーを退屈させないように気を遣ってくれたのだろう。何故か女性陣についていくように護衛の騎士団員さん方も部屋を出て行った。
「あのフィンシーの子どこかで・・・」
「フィオルン様何か言いましたか?」
「いやなんでもないわ、それじゃ剣の在処を教えましょうこちらへ」




