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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
獣王邂逅

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37/246

#37 正直なところ

「これがアルドリア城・・・」

「なんかサルドリアやメルドリア城とは違うね、なんか丸っこいというか」

「大陸によってだいぶ特色が変わりますよね」


 メルクディン大陸の建物と比べると全体的に白を基調として構成されており、一軒一軒風通しがとても良さそうだ。そもそも城下も背の高い建物がお城以外にはなく、高くてもたまに二階建ての建物があるぐらいだ。そして目の前のアルドリア城は今まで見てきたどの城よりも気品に溢れていた。


「おーいソール坊達こっちだこっち」


 アルドリア城を見回していると聞き覚えのある声に呼ばれた。それはもちろんゴルドレスさんだ。本来なら女王と謁見するためには正式な手続きを踏まなければならない。だがその過程を全てゴルドレスさんが解決してくれた。この前一緒に砂漠で旅をした騎士団の人達もいた。自分達はゴルドレスさんの後をついていく。


「絶対に俺らの近くにいろよ。大臣方はあまり賛成しなかったから何してくるか分からねぇからよ」

「えっどうしてですか?一応ソールさんは勇者なんですよね?」

「昔から根強くある種族差別だよ。ビース族は全種族の中で最も優れている思考を持ってる獣神派てのもいるぐらいだからな」

「それで私達のような他種族が気に入らないってことですか?」

「剛強無双の思想だっけ。強い人の意見に従うみたいな?」

「うーんまぁその思考がゆえに出てきたのが獣神派だからな」

「前世界大戦での活躍の3分の1ぐらいはビース族で、今この国のお偉いさん方はそこで成果を上げた。いや上げてしまった老兵さん方て言うべきか?」

「まぁそういうこったな。若い奴らを駒として使って自身は生き残り、後の生活のために動いた連中もいるぐらいだからな」


 もちろんその人達も実力はあるのだろう。どう生きていても老いは来てしまう。それを見越して次世代に繋げなければと考えるのがヒュード族。ビース族、フィンシー族、ウィンガル族の様な長命種に比べると寿命が短いマイオア族もその考え方が身についている。

 長命種であるその他三種族にはその概念が薄く、過去の栄光、名誉、伝統を深く重んじすぎる傾向がある。実際そのおかげで過去には大量の犠牲を払ってしまった例もある。それも言ってしまえば種族そのものの伝統と言えてしまう。


「まぁその点今俺が教えてたりする今の若い奴らの世代はもうそんな考え持ってなくて外の世界に学びを求めたりする奴も多いからな」

「だよね!みんながみんなそうじゃないよね!」

「思い返してみれば今まで自分の大陸で見たビース族の人って若めの人しか見てないですね」


 そんな話をしながら廊下を歩いていると無駄に大きな扉の前に辿り着いた。どこの城も玉座への扉の大きさはどこも一緒なんだな。そして扉が開か、ん?あっそこ開くの!?模様だと思ってたところが空いた。この扉ってもしかして見た目だけか。

 扉をくぐるとそこには所狭しと金色に装飾され壁や柱の豪華さが前面に出ていた。奥には誰かが座っている。遠目からでも見惚れてしまう綺麗な人がこちらを見ている。部屋の中の豪華な装飾より目を惹くほどの可愛さを放つ存在が玉座にいるのだ。


「女王様お連れいたしました。こちらの方々が新勇者御一行です」

「ゴルドレスご苦労様もう堅苦しいのはなしでいいわよ」


 えっ?なんかこんな感じメルドリア城で謁見した時もあったような...


「そうですかフィオルン様!いやー俺もむず痒かったんですよ」

「ふふふふ、ほんとにここ最近は公務です公務です公務です...って本当にうるさかったから今日ぐらいは肩の力を抜かないとやってられないわよ」

「な、なんか随分と軽い感じだね」

「ねぇでも噂に聞いていた以上に本当にかわいいねフィオルン様」

「姉御お久しぶりです」

「ん?あらベルもいたの!そう♪」


 満面の笑みのフィオルン様はベルゴフさんに向けて何か投げつけた。壁には投げナイフが刺さっている。


「姉御って呼ぶのいつになったら直るの、あんたさぁ!次は冗談抜きで当てるわよ」

「おーうやっぱりこえーや。流石はグランドビーストのフィオルン・ビース様だ」

「ベルゴフうちの女王と知り合いだったんか。あっそうか確か師匠が拳神様だったな」


 とこんな談笑しているこの人は、勇者ゴレリアス一行の世界一の狩猟者(ハンター)であるフィオルン・ビース様だ。

マクイル大陸では敵なしとされ狩猟で扱う道具において彼女に敵うものはいないとされる。実際今の投げナイフは計5本投げられ、それぞれが首、両手足首の付け根から少しずれた位置と該当する部分に刺さっている。


「今凄く速かったね流石だね」

「うんそうだね。ちゃんと目で捉えられたのは1本しかなかったよ」

「もしかしてあなたが新しい勇者ソール?」

「は、はい!」


 フィオルン様が近づいてきて、何故か自分の身体をあちこち触りながらまじまじと見られている。流石に思っていたことが心の中で爆発した。ヒュード以外の種族の女性は肌の露出が高いんだ!正直ネモリアさんの格好にも物申したい。なんで足と肩がそんなに露出してるんだ。フィオルン様の今の格好も気品溢れてる格好なのは分かる。どうして上と下の服の布面積が水着みたいなんですか。今だって必死に顔を背けてはいるがなんだかいい匂いが...


「!!フィ、フィオルン様もう離れてください!ソールが困ってますから」

「あぁごめんね気になる事があったからついついちゃんと調べちゃった♪」


 ・・・ありがとうウェルン。そしてごめん、やっぱり自分は未熟者だ。ウェルンのことが好きなのに、男としての本能には逆らえなかったみたいだ。

 ただ言えるのはネモリアさんもフィオルン様もウェルンもみんな絶世の美女か美少女には変わりないんだからさ。なぜかゴルドレスさんとベルゴフさんの手が肩に置かれた。


「・・・分かるぞ何を考えていたかは分かる」

「男に生まれたらしょうがねぇんだ。特に別大陸の女性陣は正直勘弁してほしいよな」


 目のやり場に困ってんのは自分だけじゃなかったんだな。そんな男だけの悩みをゴルドレスさんとベルゴフさんに慰められたのだった。自分の横で服の裾を持って目をキラキラさせているキュミーを見る。


「ここすごくきらきら!じょおーさまもきらきら!」


 こんなことを言っているキュミーもいずれはああなるんだよな。その成長をどこまで見ていけるかは分からない、でもこの子が大人になるまでには世界を平和にしたいな。

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