#33 再会
キマイラの襲撃後は特に何も大きな出来事はなかった。お風呂に入るタイミングが悪くてネモリアさんとウェルンに殴られてまたも気絶させられ、身体を冷やして多少風邪を引いたことを除けばただ船で揺られて平和な日々だったと思う。
あとは武器への魔力の込め方をネモリアさんに教えたぐらいだ。自己流ではあるが武器に魔力を込めた経験があるおかげか上達が早くてとても教えがいを感じる。父親もこんな感じだったのかなと思いつつ自身の修行も進めていた。
「ねぇ!おにいちゃんなにかみえてきたよ!」
おっようやく着いたかさてさてどんなとこ...!?なんかあちこちから煙が上がってるように見えるな。何かの襲撃でも受けているのか?そんな状況に居ても立っても居られなくなり船から陸地に向けて跳んだ。
「ちょ、ソール!?」
「ごめん先行ってるわ!」
「ソールさん、私も行きます!」
「ちょ、ちょっと待ってよネモー」
「おにいちゃんおねえちゃんいってらっしゃーい」
ウェルンとキュミーを置いて港に降り立つ。だが何かが大量に襲撃している気配はなく強い気配が1つ暴れている感じがした。魔力の感じからして1人に対して大勢が戦いを挑んでいるようだ。
「ネモリアさん気をつけてこれはキマイラ以上かもしれない!」
「!それは不味いですね、急ぎましょう!!」
いや待てこの感じは前にもどこかで・・・戦っている場所に向かいながら疑問が生じる。そしてその戦っている場所が見えるところまで来た。遠くで戦っているのは見覚えのあるマイオアと多数のエクスキューション一般兵だ。
「今すぐ止めないと!!」
両者が戦っている姿を見るなりネモリアさんが飛び出してしまった。そしてそれを止めるために自分は空を飛ぶネモリアさんを追いかけるが弓を出してしまっている。なんで止めるのかって?だってあの人は...ネモリアさんがマイオアの背中に幾つもの矢を放つ。マイオアの背まであと少しというところでマイオアがこちらに向いたそして矢を全て掴んでしまった。
「なかなか速い矢だな、だが俺には刺さらんぞ」
これは全弾ではなかった1本だけ上空に飛んでいたのだ。魔力を込めた矢が風に乗って先程正面を向いていた方からマイオアの背中目掛けて飛んできている。でももしあの人ならこの攻撃も効かないはずだ。背後に刺さろうとしていた矢を後ろ回し蹴りで上に弾き手でキャッチした。
「歳の割には味な真似をするもんだがそういうことはもうちょい分かりづらくしないとな」
「!?な、なんて身のこなしなの...」
魔力が込められた矢を容易く処理した確かにすごい身のこなし方だ。そう最初から気づけなかったのも無理はない。何故なら身に纏う魔力の質が別れる前と変わっているのだ。今の動きで確信を持てたきっとあの人のはずだ。
「ベルゴフさん、お久しぶりです」
「うん?おお!ソールの坊ちゃんじゃないか!いや戦いに夢中で気づかんかったわ」
そう、この人は数日前サルドリアで別れたベルゴフさんだ。自分達より強いのは知ってたけど前よりも別次元で強くなってないか。この短期間で何があったんだろうか。まぁそれはいい、とりあえず無事で良かった。なんだかんだ頭の片隅には考えてはいたからな。ベルゴフさんあれからどうなったかはずっと気になっていた。
「はぁはぁやっと追いついた...ってベルゴフさん!?」
「おっウェルンの嬢ちゃんも無事だったか」
「良かった無事だったんだねー、こっち先に着いてたんだね!」
やっぱりサルドリアで先に発っていたのか。とりあえずベルゴフさんの紹介をネモリアさんにしてこの港からアルドリアに向かう準備をし始めた。この騒ぎは自分達が入港しやすくするためにしてくれたらしい。
他のところで問題が起きてたらそっちの対応に遅れると考えんたんだろう。だがまぁそこはベルゴフさんらしいな。自身が暴れて騒ぎを大きくするとはそして自分達はその混乱に乗じて入港することが出来た。
「ほーらほーらたかーいたかーい!」
「ちょ、ベルさんキュミーを上に高く投げないで!」
「えっいいだろ、別によーほれ喜んどるべ」
「すっごーいたかーくてたのしいよー!!」
「まぁまぁソールさんこっちは準備しましょう、正直キュミーの相手をしてくれるのは助かってますから」
まぁそれもそうだな。まだキュミーは生まれてまだそんなに年数が経っていないはずだ。流石に自分達ヒュードで言うところの4、5歳だろう。ただこれは見た目と今までの言動に対してである。実際いくつなのかは誰にも分からないがこの子はいったいどんな経緯であの街で海賊に拾われてしまったのだろうか。
「ソール?また考え事?」
「うん?大丈夫だよこっちはもう準備出来てるよ」
「えーうそーもう出来てるの!?早くなーい?」
もうね考え事しながら何かやるのに慣れたよ。最近は考えてしまうことが多いからな...
「おにいちゃんともあそぶー」
「あぁいいよ遊ぼう遊ぼう」
「ハハハハ、おじさんはもう飽きたか!ならネモさん少しいいか?ちょっと確認したいことがあってだな」
「いいですよ私もあなたに聞きたいことがあるので」
2人でどっかに行ってしまった。さっきの戦いについてのダメ出しかなんかか?このあと結局ウェルンが荷物をまとめるのに時間がかかってしまい、その日は休んで次の日からアルドリアに向かうことにしたのだった。
少し気になることがあったためネモさんに聞くことにしたのだ。そのついでにあの2人が何してたかも気になったので世間話がてら聞いていた。そしてここからが一番聞きたいことだ。
「なぁあの子どこで拾ったんだ?」
「えっ?ああキュミーのことですか、あの子と会ったのはほんとウェルンさん達と会う少し前ですね」
そうか数日前なのか。ならあの若者が言っていた話は本当なのかもしれない。少し前に海竜の古代種によってフィンシー族が襲われたらしいその時に海に紛れたんだろう。
「それにしてもよくキマイラと遭遇して無事だったもんだな、やっぱお嬢ちゃんが特別な技でも使ったんか?」
「いえ私達は全然歯が立ちませんでした、もうダメだって時に助けが来たんですよ」
「?そんな海上で誰が来たんだ?」
「それが驚くことに魔族の方が助けてくれたんですよ。私達が苦戦していた敵を一瞬で倒して」
「はぁーそんなこともあるんだなーいやこんないっぱい答えてもらって申し訳ないな」
魔族か、それはあの御方に違いない。
「いえ私も少し気になってましたから、あの2人が一体何者なのか答えてもらって助かりました」
そろそろ戻るか、出発できるかもしれんな大勢で旅するのも久しぶりだ。しばらく退屈しないなこりゃあ。師匠もこんな感じで旅をしていたんだろうかと思いながらソール達のとこに戻っていった。




