#3 紋章をめぐる者達
「これが勇者の紋章・・・」
「何十年もここにあったはずなのに輝いてるな」
そこにあるのは金色に光り輝く紋章つまり勇者の紋章だ。コルロの言う通りこの場所には誰かが立ち入った痕跡はない。だが何故か紋章は汚れや錆など見られずまるで新品のように輝きを放っている。
「とりあえず持っていくか・・・ほんと重たいなこれ・・・」
「大丈夫か?俺も持つか?」
「いいや大丈夫だ、てか待てウェルンがいな...」
「そうだな目の前の宝に釣られて他のことには頭が回るのが遅かったなぁ!!」
後ろから聞こえた声に反応して二人とも振り向くとそこには魔物というか四本腕の悪魔のようなやつがいた。とてつもなく大きな剣、斧、槌を持っており残った左上の腕の先には気を失ったウェルンが握られていた。
「いやぁ俺はよぉ、地面下から強襲してやろうとしたらよぉ、なんとこんな所に紋章があってよぉ、破壊してやろうとしたらよぉ、このヒュードの雌が来たからよぉ軽く相手してやったわけよ」
「人質のつもりか?!」
「まぁそういう事だ、てことで一つ取引しねぇかぁ?」
「取引だと?」
「そうそう、お前らにこの小娘を返して逃がす代わりに後ろのそいつを壊させてくれや」
本当に悪魔って最悪の二択出してくるんだな。ウェルンを助けたら勇者様の紋章が破壊されてしまうが紋章を守ると自分達を見逃してくれる...そんなのどちらも出来る訳が無い。
「そんなんどっちもお断りだぁぁ!!」
突然剣を構えたコルロが飛び出しそして四本腕の悪魔に襲いかかった。
「コルロ!!」
「そんなに死にたいようだなぁ!!」
悪魔が右側の武器を振りかぶったその時コルロは悪魔の顔に何かを投げつけた。自分達にとっては見慣れた村の特産品で甘さがありとてもくちどけがいい。その果汁は目に入るととても染みるナリの実、つい先日隣のおじさんが痛がっていたのを思い出した。
「うぐぁぁぁ、なんだぁ目がぁぁぁ!!」
「やっぱりな!!悪魔だろうがこんなんでも効くんだな!!」
コルロはドヤ顔を決めつつウェルンを連れてこっちに来ていた。そんな表情に安心して自分も一刻も早くここから逃げようと背を向けた時だった。
「危ねぇ!!」
後ろから強く押されそして背中に飛んできた謎の液体。あまり嗅いだことのないにおいだがその色だけで飛んできた液体の正体が分かってしまった。後ろを向くと左胸辺りに剣が刺さっているコルロとそこから噴き出した血で服が赤く染まったウェルンがいた。
「お前ぇぇぇ!!」
「やめ、ろソール...」
その光景に飛び出さずにはいられなかった、未だ武器術を体得出来ていない自分が戦っても叶うはずがないと分かっていた。それでも飛び出していた唯一無二の大親友によくもと、やられるぐらいならせめてウェルンを逃がす時間さえ出来れば。
「遅いんだよぉ!!」
「ソール!!」
奴の蹴りが自分の身体を吹き飛ばし洞窟の壁にめり込んだ。蹴られた左腕が痛い、ははは・・・強すぎる。だめだ勝てないそりゃそうだコルロだって倒せるならあそこで目眩しなんかしないよな。相手との力量差を判断したから作戦を練ったんだよな。
「ヒュードの浅知恵にしては良くやったもんよなぁ、だがよ!!」
「なっ...だから、き、効かなかったのか」
「効かなかったと言うよりかは全ての目を潰してないからな見えるに決まってるよなぁ!!」
潰れた目の他にもう二カ所目があったのだ。おそらくナリの実が効いたフリをして隙を誘いそのままウェルンに斬りかかりそれに気づいたコルロがウェルンの身代わりとなったのだろう。そして自分は近くにいたため吹き飛ばされたという感じだろう。
「ちくしょ、お...」
「お前から先にあの世に行きな!!」
「{瞬走}!!」
斧と剣がぶつかり合う音が聞こえた。目を開けるとそこには血だらけのコルロが悪魔とつばぜりあいをしており互いに距離をとった。だがコルロはどう見ても戦える状態じゃない。
「行け、るか?ソール」
「ああ、今ならお前よりは動けるぞ」
「ふっ、冗談抜かしとけ」
「お前らぁぁ俺様をコケにしやがってぇぇ!!」
そう言って奴は岩を投げてきたが自分らの手前で落ちて砕けた。なんでこの距離で外すんだ、まさかあいつ...?もしそうなら勝機はあるかもしれない。