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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
夢幻

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246/246

#245 覚悟

 何だかよく分からないが胸騒ぎがして後ろを振り返ってしまった。だが視線に入るのはたった今通った廊下と先程倒した魔族の死体。予感の正体はおそらく淡い期待と多少の悔しさのせいだろう。

 叡智のサピダムと戦っている先代勇者一行の母さん達、そして1人で狂猛のフュペーガと戦うと決めたベルゴフさん、それが一番いい選択だと理屈的に分かっていてもだ。

 魔王軍の攻撃が始まって1年が経って各地からメルドリアへと逃げ延びた人々、他大陸の主要国家の人々から聞く話ではこれ以上続けば生活が苦しいらしい。実際戦える人、というか続く戦いの日々に疲弊しきってしまい、戦うことを辞めていく人も多いそうだ。

 かつての暗黒時代の時も同じようことが起きていたようだ。ただその時よりも圧倒的に衰退の一歩を辿り、世界が魔王軍に支配される最悪の未来が来るのも時間の問題らしい。

 だからこそ自分達はここで魔王軍との戦いを終わらせようとしている。だが仮に自分達がやられてしまえば世界の人々はいつ来るか分からない絶望の日々を過ごすかもしれない。

 そんな博打を打っているなら自信があるかと聞かれると怪しい。この一行の中で自分は一番強いと言いたいがそんなわけがない。勇者の力も扱えない自分は先代の勇者一行を除いた7人の中で3番か4番手というのが現実だ。

 段々と仲間が減ると魔王に勝つ確率が下がるのは当然ではある。だが三魔将軍に戦力を割き過ぎると想定外が起きた時に困る。そしてそれ以上に自分達には時間が残されていないのも事実だ。

 だからこそ互いのことを完全に信じ切ることにした。先に行く自分達は残ったみんなが後から合流することを、残った皆は自分が勇者の力に目覚め魔王を倒してくれると信じて全力で戦うと。


「ねぇもしかしてあの扉・・・」

「どうやらそうみたいですね。魔能がなくても分かるぐらいには禍々しい何かがいますね」


 そんな思考を回していたらどうやら最後の関門へと辿り着いたようだ。大きな扉によって先に何があるかも分からない。そのはずなのに見ているだけで身の毛がよだつ程に濃い魔の力が漏れ出している。

 本当はベルゴフさんを含めた7人で戦うと決めていたが、キュミー、フォルちゃん、ウェルン、ネモリア、ハウゼント、そして自分。この6人でどうにかして三魔将軍、夢幻のドリューションを倒さなければ前には進めない。

 その実力は謎に包まれているが世界最強の武人と呼ばれた、ジャッジマスターガッシュ・バグラスが勝てなかった。その事実だけで恐ろしいがあの魔王ですら右腕と認める程の実力を持っ...


「こらっ」


 頭の後ろを小突かれ思考が停止する。どうやらウェルンが自分の頭にチョップしたようだ。別に痛さがあったわけではないが冷静にはなれた。


「どうせ変なこと考えてたんでしょ?」

「よく分かったね」

「何年の付き合いだと思ってる?ソールのことはこの世界で誰よりも分かってるんだから」

「ちょっとこんな時にイチャつかないでよウェン」


 膨れ顔をしていたウェルンの後ろからまたもう一つ膨れ顔が現れ、互いの頬を引っ張り始めた。そんな微笑ましいことをしているネモとウェルン、だがいつもと違いある程度の警戒をしながらなので動きが少し固かった。

 自分もだいぶ固まっていたが他の皆もいつもと若干様子が違う感じがした。無邪気な感じがする年少組の2人も武器を強く握りしめていて、いつもと違って辺りを警戒していた。ハウゼントに至っては常に両腕に盾を展開しながらもどこから攻撃が来てもいいように気を張っている。

 不安や緊張によってそれぞれが普段していない行動をしているのを見て正直心の底から安心した。そのおかげか大分思考が簡略しながらもまとまってきた。


「みんな聞いてほしい、おそらくここが魔王との戦い以外で一番の正念場だと思うんだ」


 それぞれが肯定の行動を取ってくれた。


「この戦いを任せてくれたアンクル様達や、ベルゴフさんの為にも絶対にここを突破しよう」

「お母さん達が来る前に倒してしまいましょう」

「おじさんもね!」

「みんなで絶対に倒しましょう!」

「今回だけは譲れないよね!」


 各々が声を上げる中1人だけ、ハウゼントはうつむいたままだった。何か声をかけるべきかと悩んだが言葉が浮かんでこなかった。一行の中では一番のしっかり者なエクスキューション三闘士、慈愛のハウゼント。

 流石に相手が夢幻のドリューションで、この中で唯一ガッシュ・バグラスの強さを知っていたからこそ思う所があるのだろう。今の自分達の中で一番強いのは正直ハウゼントなのだが大丈夫だろうか?


「ああ、絶対に倒そう。ここを越えて世界を救おう」


 これまで以上に真剣な表情で力強く言葉を発した。扉の方に向き直ると手を天にあげるとエクスキューションの見慣れた鎧、そして彼だけの特別な装飾が施された兜を装着する。さらに鎧からエクスキューションの紋様が刻まれたマントが現れた。

 エクスキューションと言えば鎧の姿が印象的、でもハウゼントは基本的には鎧を着ることなくずっと素顔を晒してくれていた。顔を見せるのは信頼の証と聞いたことがある。その素顔を見せてくれたという事は自分達のことをかなり信じてくれているようだ。

 一般等級の鎧と違い三闘士以上の鎧は能力も向上させるので、今回の戦いにどれだけ本気で向かおうとしているかがよく分かる。あまり見ない姿を見てこちらも気が引き締まる。その状態のままゆっくりと自分達は扉に近づいていった。

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