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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
狂猛

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244/246

#243 理由(わけ)

「なんだ笑ってよ?命のやり取りをしてるってのに余裕あるな」

「それはお互い様だろ、お前も笑ってんじゃねーかフュペーガ」


 正直今の闘いを他の人に見られたら拳術士同士ではなくただの喧嘩だと思われる。そんな気するぐらいに技術もクソもない感情に任せて脚と拳を振るってる。でも不思議と闘気は纏えてるし元々の闘い方よりもこいつとやりあえてるんだよな。

 やっぱり師匠はなんでもお見通しなんだな。なんでもかんでも感覚派にしては人のことが分かり過ぎる。闘気を上手く練れないと思ってたら『それ、あれじゃねえか?』的なノリ、その軽く言ったことを実践してみたら練れるようになったからな。

 奴の蹴りが一瞬頬を掠め思考を闘いに戻す。本当に危ねぇなこいつは。というか俺も俺だな余計なことを考えすぎだ。だがおかしなことに奴の身体の至る所に傷が出来ているのに対して、こちらは全く喰らっていないのだ。無意識でここまで動けるなら意識したらもしや・・・?

 奴を視界にしっかりと捉えてみる。右拳がこちらに迫ってきていたのでそれに対して反応、しかけるが左拳でアッパーを仕掛けてきていたので肘でそれを潰してすぐさまハイキックを左後頭部に放つ。


「っ、んだとぉ!?」


 ガードすることなくモロに命中し確かな手応え、足応えを感じる。いやなんだ足応えって、まぁいい。これで今の俺なら倒せることがはっきりしたな。こちらから今度は攻撃を仕掛けてみる。動いた反動そのままに腕、いや身体そのものを振るう。

 さっきもそうだが理屈めいて弱点を狙うとかをせずに流れに身を任せ、本当に一瞬だけ闘気を肌に馴染ませて攻撃を繰り出す。すると奴はまたも防ぐことなく直撃して勢いよく地面を跳ねていく。


「なるほどなぁそういうことか...」

「なんか言ったかフュペーガ?これから楽しいとこなんだからよまだくたばってくれるなよ!」


 再び同じように攻撃を繰り出しに行くと防ぐのではなく避けていた。これまで一度として避けることをしてなかったフュペーガが遂に動きを変えてきた。先程よりも俊敏で鋭くそして重たい拳術ということがスレスレで躱した後の風圧で理解した。

 だが躱したはずなのに何故か腹部に殴られた痛みを覚え、少し態勢を崩すと闘気の衝撃波で吹き飛ばされる。どうやらさらにフュペーガの力を引き出せたみたいだな。流石は狂猛と名付けられた魔王軍を代表する魔族だ。

 負傷した箇所を闘気を馴染ませて回復させ再び飛び出していく。正直ここで理屈っぽくなってもしょうがない。俺自身の本能に任せて戦うべき、そう思ったからこそ何も策もなく拳術を振るいにいく。






 思い出すなこいつと闘ってると昔の俺、ただのダイクロプスだった頃をな。こうやって思い出すのもフィーザーと闘ったあの時以来だ。

 闘気なんて何も知らずにただただ力任せに暴れていた頃も楽しかったな。ただただ壊すことだけが生き甲斐だったあの時に俺は初めて魔王と出遭った。そして本当の力を思い知らされ、気まぐれで俺は生かされた。

 最初は負けという事に納得いかずに何度も挑み返り討ちに遭った。それも当然のこと、魔族においては実力が全てで純粋な強さでしか偉くなれねぇ。それまで負けることを知らなかった俺は何度も挑んだ。正直今でもラ・ザイールの首は狙っている。

 奴の強さは本物、勝てないことも分かってはいる。だが負けることが何よりも心が拒否をしている。世の中に魔王軍として認知される頃には奴から狂猛のフュペーガと呼ばれるようになった。だがそんなことはどうでもいい俺はラ・ザイールに代わってこの世で最も強き者にならなきゃならねぇんだ。

 その道が険しく果てしない、いや辿り着くことがないことも俺自身が理解している。何故かもクソもねぇ。魔族は生まれながらにして強さが決めつけられていて成長することは有り得ないからだ。そんな不条理に従う程、俺は出来た野郎じゃねぇんだよ。

 だからこそ勝てるはずもない戦いに挑み続ける六種族共が羨ましくて仕方がない。いつかは勝てる、そんなことを思って戦いを挑んでは敗れる。そしてまた違う野郎が俺に挑みに来る。またある時には一度倒した野郎が強くなってまた負けに来ることもある。

 『お前と私は生まれた立場が逆であるべきだったな』とサピダムの野郎に言われたことがある。確かにこれだけ戦いを続けたり六種族共の真似事をして闘気なんてものも使えるようになった。そんな俺はある意味で魔族でなければ本当にラ・ザイールよりも強くなれてたのかもしれねぇ。

 俺が闘ってるのはサピダムみてぇにこの世に魔を蔓延らせたいなんて考えは一切ない。俺が俺である為、いつか俺自身が魔王となって世界の誰よりも強くなる為だ。だから好敵手との闘いは好物で万が一でも俺は強くなれるんじゃねぇかと思ってる。

 まぁそんなことを考えていたらフィーザーの野郎に一度ぶっ倒されたんだがな。サピダムの野郎には感謝しよう、再びこの世に帰ってくることが出来たんだからな。あの野郎も強くはあるんだがラ・ザイールは愚かドリューションには適わねぇ。

 かつての闘いでは一度も姿を見せることがなかったドリューションにこいつらはどんな闘いをするのかは楽しみだ。だがまぁその前にこいつを倒さねぇとな、仮にも魔王軍の三魔将軍だからなもう負けられねぇんだよ。

 さっき知ったがどうやらサピダムは倒されたみたいだからな。やっぱりこいつらを舐めてちゃいけねぇ。もしかしたらこいつらは俺らを倒せる程の実力をもう既に持っているのかもな。そんな奴らと俺は戦えるなんて幸せ者だな。

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