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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
先触

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24/246

#24 光

 相棒の武器?もしかして勇者ゴレリアスが使った世界最強の聖剣テークオーバーのことか。アルドリアはここサルドリアから、南の海を越えた先のマクイル大陸唯一の主要国家の事だ。そしてアルドリアの王様といえば、ノレージ様やフィーザー様と同じ勇者ゴレリアスと共に旅をした全ての獣の王者。通称グランドビーストこと、フィオルン・ビース様だ。な、なんだ揺れが強くなってきたぞ!大陸そのものが揺れ始めてるぞ。


「あんま詳しく喋ってられそうにないな、お前さん方はここにいな」


 と言うと拳神様は空へと飛んでいった。まだ聞きたいことはあったが仕方の無いことでしか無かった。今の自分達ではあの巨大な山をどうすることも出来ない。だがどうしても頭の片隅からコルロが死んだ時と同じような感情を思い出してしまう。それは後悔そして自分に対する憎悪、だがこれを糧に前に進まなければならない。





 ここまで長く生きてきたが遂に来たか命が尽きる日が。しかしあれが新しい勇者か・・・相棒には全然似てなかったが()()()には似てたな。まさかな、そんなこともあるのだろうか?いや、有り得るのかもしれないな。あいつらがどんな旅をするかは知らないが俺らの旅も驚きの連続だったしな。

 ミュリルのおかげで魔王が倒されたことになっているが、そんな仮初の平和も終わりが近づいている。実際魔王が居なくなってからは世の中は全体的に良くはなった。だがここ近年の間で良くない噂を耳にする機会が多くなってきた。魔物が集団で移動して村が襲われた、古代種が目覚めて暴れ始めた、魔族の出現、津波や噴火などの自然災害などの報告も頻繁に聞くようになった。今日儂が死ぬことに対しては全くもって驚くことも悔しむことも無い。これは前もって予知されていた死の未来だからだ。

 誰に予知されていたかって?気性の荒い姉貴分であると同時に俺の妻でもあったフィオルンによって予知された未来だ。新しい技を思いつくなり俺に対してかましてきたあのビース族の女王様は、魔能{予知}っていう珍しい魔能を持っている。実際起こりうる未来を先に見ることが出来る魔能、で尚且つフィオの見る予知は制度がとても高く回避することが出来ない。フィオが見るのはなんと確定された未来なのである。

 ゴレリアスが魔王討伐に失敗するという予知を視てしまっていたが自分達の誰にも話せずにいた。とそこにいた自分を含めた5人に打ち明けた。直後相棒であるゴレリアスは自分達の誰にも行き先を伝えず姿を消し、その後はみんな自分の国へと帰っていき、思い思いの時間を過ごした。

 ノレージは次世代の勇者を探すためにギルドを創り、フィオはバラバラになっていたビース族を1つにまとめて国を創り、ミュリルは世界全てを包む幻術を使い仮初の平和を創った。そして俺は国に帰るなり英雄だと持ち上げられそのままの流れで先代王家によって国王にされてしまった。最初のうちは勝手が分からなかったがそれでも民衆は着いてきてくれた。

 だがそんな俺にもやらねばならぬ事があった。魔王が復活してしまうであろう時には俺はこの世には存在しない可能性がある。それまでにこの力を誰かに継承し魔王軍に対抗しうる者を探さなければならなかった。公務で空いた時間を全て継承者探しへと費やしそんなこんなで十数年が経過し、仲間の活躍を聞く度焦りが生まれた。

 いつの間にかエクキューションと呼ばれる自警団も出来上がっていた。そういえばあそこのトップであるガッシュ・バグラスとは直接拳を交えたことは無いな。少なくとも全盛期の相棒に匹敵する魔力量は感じられたな。

 自身の修練も兼ねて辺境の村へと旅をしていた時1人の青年と出会った。それが拳神流唯一の後継者となったベルゴフだ。あやつが魔獣を倒そうと武器を振り下ろす際に闘気を感じたのだ。本来闘気とは拳術を学ぶ際に型と共に習得していくものだ。あまりにも自然に闘気を使いこなすその青年の姿に俺は可能性を感じた。儂以上の拳術の使い手になり魔王軍相手に勇敢に立ち向かう姿が見えた。

 それから数年の間ベルゴフに自分のこれまで学んだ拳術を教え、そして同時に自分自身にとある魔術を刻んでいた。まぁそれはこのあとベルゴフ自身の身に変化が訪れるはずだ。あいつは今後の運命も全て自分で決めなければならないだろう。

 だがそれでいい。例え、俺が思い描く未来に辿り着かなくてもいい。この先の未来がどうなるかは知らないが、誰一人として何かに怯えることの無い世界になって欲しい。まぁもし今一つ夢が叶うならばまたあの時の7人で旅をしてみたいものだ。覚悟は決めた、我が命、次世代へと捧げよう・・・


「拳神流、絶技!{鳳玉神烈翔}!!」






 揺れは以前より激しくなり自分達は全く動けないでいた。その揺れを起こしてる巨大なゴーレムの前で光り輝く何かがあった。ただただその光景を眺めることしか出来ない自分に悔しさを覚えた。だが同時にそれほどの光景を作れる程のとても濃く澄んだ魔力には尊敬を覚えた。

 自分はあの魔力を超え勇者の力を扱えるようにならなければならないのか。本当に自分にそんなことが出来・・・いや自分は守りたいものを守るために絶対に勇者になるんだ。今見ている光景は生涯胸に刻まれるだろう。光はゴーレムの障壁がまるでないかのように奴の身体を包み込んでいく。視界は眩い光に包まれ偉大な命の灯火に対して自分たちは自然と涙を流していた。








 その光は全世界の至る所へと届いた。ある者はその光景を奇跡と称え。ある者は何かの始まりを予感する。ある者は仲間の不幸を悲しみ。ある者はその光を見て拳を固め。ある者は笑みが零れていた。その光は後々{ワールドフォース}と呼ばれ歴史に名を刻んだ。

 この物語の全ての歯車が動き出す先触となった。あの時あの場に居合わせた自分達は知る由も無かった。あの時拳神様の指示に従い凶猛のフュペーガの復活を阻止できていたならば、少なくとも後悔することは減っていたのだろう。だがそれでも自分達は先に進まなければならない。あの時の拳神様の最後の勇姿を思い出しながら自分達は魔王城へとようやく辿り着く。

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