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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
狂猛

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239/246

#238 舞闘会

 全ての動きに集中しているが何もしかけてくる気配がない。試しに右に足を延ばすと鏡合わせの様にフュペーガも動いた。いつもの俺やこいつなら何も考え無しに力を振るうのだろう、だが互いに睨み合いの状況が続いている。つまり両者生半可に攻撃してはならならいというのを理解しているのだろう。

 でも言ってたな師匠が、こんな時は...先に動・・・次の瞬間には位置が入れ替わり甲高い音が鳴っていた。考えていたことが同じだったみたいだな。それかこっちの動きに超反応を示したのか。まぁどっちだっていい、こんなヒリつくのはいつぶりだろうな。


「やはりお前も同類だな」

「あ、なんのことだ?」

「互いに命を懸けたやり取りしているはずなのにこの状況を楽しんでるんだろう?」


 ああ、なるほどそういうことか。フュペーガがこちらに笑みを浮かべているが俺も自然と笑みが零れていたようだ。強さを楽しむ余裕が出てきたら猛者の証、と師匠も言ってたが久しく己を試せる程の実力者には正直当たったことはなかったな。

 摸擬戦だと死なないようにどうしても加減をしちまう、まぁそれは坊ちゃん達にも言えることだ。本当はもっと強いはずと俺は信じている。相手を敵と認識すればどんな野郎でもぶっ倒せるはずだからな。個能も目覚めてないだけで坊ちゃんは俺にはない強さを持ってるからな。

 そんなことを考えていたら奴が動いた。まぁ昔から思っているんだが拳術士と言ってはいるが脚技も使うから正しくは格闘士じゃねぇか?鋭い蹴りが放たれそれを受け止め反撃しようとするが拳が飛んできた。脚を掴まれてるのにとんでもない馬鹿力だな!


「んのやろ!」


 こちらも力任せに拳を振るうと奴もまた拳を合わせてきた。ただそれをすぐに引っ込め本命のボディーブローをぶち込む。がそれは片方の肘で防がれ若干こちらの方がダメージを負った形となった。


「感情に任せてもいいことはねぇぞ!」

「そうだな!でも俺にはそんなこと考えられねんだよぉ!」


 続けて膝に闘気を集中させ顎をかち上げ、両手を合わせて振り下ろす。かち上げまでは読まれていたがそのあとの攻撃をまともに喰らっていたように見えた。砂埃が舞う中で足を掴まれ放り投げられる。空中で身を翻して激突を免れる。

 先程の攻撃で負ったダメージ、剥がれた闘気を纏い直す。同じようにフュペーガも纏い直していたように見えた。ちゃんと効いてることに安堵しながらも改めて奴の強さを思い知る。


「お前フィーザー以上に力あるな」

「師匠にも言われたけどよそんなか?」

「闘気の質がお前は力に寄ってるんだろ。しかも俺らやフィーザーよりもこういう時の戦いが得意なんだろうな」


 少し拳を交えただけなのにそんなことまで分かんのか。師匠もそうだが考えてないように見えて意外と考えてんだよな。いや俺も考えないわけじゃねぇがって、うん?待てよ...ハウゼントに過去言われたことあるな。

『力を売りにしてる人程戦い方が賢くて、術使いな人程とんでもない力押しなこと多いんですよね』

 ・・・なんだろうな、後であいつには拳骨をくれてやらない時が済まなくなったな。その為にはこいつ倒して尚且つ魔王もやらないとか。やることは多いがまぁどうにかなるよな。


「様子見はここら辺にするぞ。埒あかないからな」


 奴の周りに漂う闘気が形を形成しもう一回り大きい人のような、いや巨人のような姿が具現化された。こちらも同じように形成しようとするがその隙を許してくれなさそうだ。

 巨大化したことで動きが鈍くなったわけではなく、単純に攻撃範囲が先程までの数十倍になっている。これに対抗するなら同じことしちゃ駄目だなこりゃ。あいつが足りない力を巨大化で補ったなら俺は...

 脚に多めに闘気を込めて地面を蹴るとこれまで体感したことのない速度が出て壁にぶつかりかけてしまう。今ので大体感覚が分かったな、これなら行ける!あいつが力で来るなら俺は更に速度を上げて手数を増やすしかないだろうな。

 ただこれはあくまでも上位魔族達がよくやる遊びの内の1つ、全力の内のどれくらいの力で相手出来るかを試されてる気がする。本当にやばくなったら軽口も叩かずに真に感情を持つことなく倒しに来るだろうからな。

 まずそこまでの段階に持ってかないといけないからな、気張らないとな!全身により多くの闘気を纏わせて闘技場の壁や地面を使い飛び回る。何度も捕らえられかけはしてはいるので奴も俺のことは目で追ってているようだ。

 こんな動き過去にやったことはないが師匠がやって見せてたような気がする。なんならあいつがやってる巨人化も別に出来ないわけじゃない。極めるところまでいったら、もうあとは個人の発想力次第で己の力を何倍にも出来るんだろうな。

 威力、そして速度でも若干翻弄出来てるかもしれないが動きがついただけ、さっきと状況は全くと言っていい程変わっていない。むしろ互いの一挙手一投足に対して更なる注意が必要になって、精神的な疲れも加わったな。

 だがどうだろうか不思議と心が躍る。ここまでの強さを持った野郎には今後生きてくうえで会えるかと聞かれたら怪しいよな。生前の師匠がもしこいつと戦ってたら同じこと思ってたんだろうな。楽しくてしょうがねぇな。

 勝ち負けなんかどうでもいいと思うぐらいにそれ以上に全ての力をこいつにぶつけてやりたい。そんな気持ちがある。まぁ負けたら俺以外に迷惑がかかるわ、先に待ってるであろう師匠にはボコボコのギタギタにされるだろうな。それだけはごめんだな。

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