#23 現時点での唯一
「ふぁふぁふぁっふぁふぁふぁ!!」
「何がおかしい!!」
「いやおかしくなるとも、もう身体の違和感がないことにのぉ!」
と言って奴は杖を振るうと術弾が形成されこちらに飛ばしてきたのだ。さっき自分は魔能を封印する{ディスキル}をかけたはずだ。これでやつの{魔力源}は止まって・・・まさかもう効果が切れたのか?いやそんなはずは無い!今は勇者のオーラを引き出せているはずなんだ。動き出そうとした途端、膝が崩れ落ちて身体の中から気色悪い何かが這い上がってきて嘔吐してしまった。
「くっ、かはっ!な、なんだ急に力が・・・」
「ソール!」
「どうした?!サピダム何しやがった!」
「いいや儂は何もしとらんよ、高難度の術を行使して許容魔力量を遥かに上回ったんじゃろう」
た、確かに身体がだるいというかなんというか倦怠感をとても感じる。術を使う前まではすごぶる調子が良かったはずだ・・・まさか、{ディスキル}という術を1度放っただけで勇者の力を全て使い切ってしまったというのか。これじゃあ自分達は足でまと、
「ゴルファァ!」
自分達の横を巨大な何かが吹っ飛んでいきそれをサピダムは躱した。飛んだ場所を見ると拳を突き出した黄金の大魔人、いや拳神マイオア・フィーザー様がいた。
「やっぱりもうギブアップかフュペーガ?」
「あ、ああ、あいつやるには今だと、ゲホッゲホッ、力が足りん」
「ならそろそろ撤退と行こうじゃないか」
「待て、絶対にここから逃がさんぞ」
「さて問題じゃ、さっさと逃げれば良かったのにここで時間を稼いでるのか?」
「何が言いたい!!」
「答えは簡単、この火山そのものを魔物にするためじゃよ!」
な、なんだって!?火山そのものをここに来るまで何回か戦ったあの人工ゴーレムとかと一緒の物にするのか?流石に巨大すぎる。そんなの相手に出来るはずがない、道中戦ったような岩とは比べ物にならない天然の山だぞ。
「このままここで儂らを倒すのに時間を使っているとこの大陸から生き物がいなくなってしまうぞ?儂も優しいものじゃなこの大陸を救うために儂らは退散するのじゃよ」
「まっそういう事だまたいつかやろうや、フィーザー」
そう言って奴らは姿を消していった。地面が激しく揺れる、いやこれはこの山がゴーレムへと変化している揺れだ。
「くっ!お前さん達捕まってな!だいぶ揺れるぞ!!」
拳神様の身体に自分達は掴まると洞窟の壁をぶち壊した。その先の竪穴とゆうか噴火口へと繋がった。どうするんだ、って!?溶岩に向かって飛び出したと思ったら空を飛んでる。拳神様と自分達は噴火口を真っ直ぐに昇っていき火山から飛び出してようやく理解した。拳神様が空を蹴り進んでいた事に気づいた。帝国の上空まで脱出し火山の方を向き直す。
「ウ、ウゴゴゴゴゴゴォォォォ!!」
火山がだんだんとゴーレムへと形作られていく様子を目にした。流石に巨大すぎるきっとこればっかりは人が挑もうとするものでは無い。さっきサピダムも言ってたがこの大陸はこのゴーレムによって蹂躙されるだろう。自分達はようやくサルドリア城へと降り立つと近づいてくる黒鎧姿の人がいた。あれ、この黒鎧どこかで見覚えがあるような・・・
「我が主ジャッジマスターより命を受け参りました。私はエクスキューション三闘士、ザガ・ギルガバースでございます」
「ああ、エクスキューション三闘士{巧技のギルガバース}か。お前さんがここにいるってことは」
「はい、私がこの国に到着した際異変を感じこの国の住民を避難させておりました。そしてここで待っていれば勇者様御一行とサルドリア王にお会い出来ると予想しておりました」
なんて仕事のできる人なんだ。被害が悪化すると予想して既に先手を打っていたのか。この人未来でも見えているんじゃないか。もし避難誘導していることが本当ならば、ここで巨大ゴーレムと戦うとしても被害は抑えられるはずだ。
「ギルガバースお前さんあいつ倒せると思うか?」
「いくら我々が力を合わせようとも無理かと」
「やってみなくちゃ分からないだろ!?」
「ううん、ソール分からないの?よく見てゴーレムの周りを」
形作られているゴーレムを目を凝らして見つめる。薄紫色の幾つも重なる巨大な術式が見え強力な防御術式が大量に展開されていることに気づいた。
「あれだけの術式破るとなると俺らだけじゃ絶対に足らんな」
「ベルゴフさんまでそんなこと言うんですか!?」
「まぁ確かにあれだけ術式が重なってたらまずダメージすら与えられないな」
「なんだかその言い方だとまるで自分なら出来るみたいな・・・」
自分の問いかけに対して拳神様は答えなかった、つまりそれが答えだ。ここまで話を聞いて思うのだが確かに拳神様の先程戦っていた時の様な力は自分達から見たらとても強大だ。だがそれ以上にあの巨大なゴーレムがとんでもない力を保有しているかを理解してしまった。
仮に拳神様があのゴーレムを倒せたとしても、それで拳神様がいなくなってしまったらどうやって三魔将軍達に立ち向かうんだ。今の自分達ではあいつらを倒すことは到底叶わないし、魔王が復活してしまったらそれこそ一貫の終わりだ。
「そうですか、では一応聞きますがどういった方法であのゴーレムを沈めるつもりですか?」
「・・・俺の魔力と生命力を全て闘気へと変換させて、渾身の一撃を叩き込んであのデカブツを木っ端微塵だ」
三魔将軍に対抗出来る拳神マイオア・フィーザー様しか、あの山を止められないのはもちろん分かる。だがその代償はフィーザー様の生命と引き換え、それによってこの大陸を救えるのだ。止めようとは思わなかった。理由は自分達ではどう足掻いてもあのゴーレムを止める手立てがないからだ。もっと力があれば、目の前の巨大なゴーレムを倒せたかもしれない。勇者の力をコントロール、いや本物の勇者だったのならあそこでサピダムを倒せたのかもしれな、
「勇者ヒュード・ソール!!」
「!?は、はい!!」
「お前さん何か勘違いしてないか。相棒、ゴレリアスだって俺と最初会った時は勇者としてじゃなくて世界を救うことを夢見る冒険者だぞ。最初から強かったわけじゃない!言っておくが魔王は俺なんか比にならないくらい強いぞ。もし今戦うってなったらどうするんだ、逃げるか!それとも戦うか!」
そんなの決まってる自分は・・・、自分は・・・、自分は!
「自分は・・・戦います!!」
「どうしてだ?勇者だからか?」
「いいえ違います、自分は守りたいものを守るために戦います!」
「・・・・・・フッ、さっきまでと違っていい面構えじゃないか。もしこの後どこか行くあてもないならアルドリアに向かって相棒の武器の在処を教えてもらいな」




