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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
闇の中

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210/246

#209 力

 一夜明け、アルドリアへと辿り着いた自分達だったがまさかの事態が起きていた。なんと戦いが終わっていた。なので自分達は戦後処理として国のあちこちに散らばり作業を始めていた。

 ベルゴフさんによると自分達が来る2日前にはここら一帯の魔王軍を一掃していたようだ。それは自分達がこの島の港に着いた頃だったことだ。

 それはともかくとして3度も魔王軍との戦いに巻き込まれたアルドリア。北マクイル港のように寂れてしまっているのではと思っていたが違った。

 アルドリアは街というよりかは正直キャンプ場に近いような感じで露店などが多く広がっている。天候などにより外出が出来ないようなことも多く決まった土地はあってもちゃんとした建物は少ない。大まかに住居と商業の場所が分かれている。

 王城に近づいていけば行くほど石造りの建物が多くなりいわゆる富裕層が住む場所になっていく。その辺りは他の国とも変わらないのだが一番戦いの被害を受けた場所でもある。その理由として富裕層と言ったがその実はアルドリア騎士団の実力者などが住んでいた為だ。

 その中でも特に大きな屋敷を一時的に借りて今後のことについて話し合ったりしている。そして今は長話ばかりで疲れたからとキュミーとフォルちゃんがハウゼントと摸擬戦をしている様をウェルンとネモリアさんと共に見ていた。こういった時によくベルゴフさんも混ざることが多いのだが、話があるとのことでミュリル様達勇者一行とまだ話している。


「それにしてもおじさんが戦う事よりも話したいなんて珍しいこともあるもんだね」

「ぞういうところがあの人のいいところだと思うんだよね」

「いつもお茶らけているのは私達を不安にさせない為で戦闘になったら、後衛の私とウェルンはもちろんみんなが怪我しないように戦ってますもんね」

「そんなこたぁねぇよ俺は戦いたいように戦ってるだけだっての!」


 後ろを振り返ると話を終えたベルゴフさん達が来ていた。今の話聞かれていたかな?と少し思ったがまぁどうでもいいか。拳を闘気で固め打ち鳴らしながら空いたスペースへと歩いていき自分達に手招きをしてきた。自分が行こうとしたがその前にウェルンとネモリアさんが飛び出していったので今日は大人しく眺めていることにした。


「さっき何の話をしてたか気になるソール?」

「えっ」

「これからの動き、いつ私達が魔王へと戦いを挑むかについてよ」






 昼とは打って変わってかなり冷たい風が吹く夜、魔王城があるとされる方角に身体を向け拳を振るう。師匠から継承された力も身体に完全に馴染みきった。今の俺の闘気の練度は三魔将軍狂猛フュペーガと同等かそれ以下だ。{纏神}も今では発動状態と通常時の切り替えが容易で突然襲われても即座に硬化が可能。

 まぁ俺とか姐さん達はいいんだが正直ソール達が心配だ。昼間言ってたように俺はみんなが負傷しないように守っていた。だが次に赴く魔王城は違う、俺も確実に余裕がないしそれはかつての勇者一行だった姐さん達同じだ。国どころか世界をも壊せる力を持つ相手なのが三魔将軍、そしてその上には世界を終わらせる力を持っているとされる魔王ラ・ザイールもいる。

 昼間今の俺らの実力で魔王に挑んで勝てるのかと聞いたら正直難しいと言われた。ただそれ以上に信じるべきは{勇者のオーラ}を持つソールのことだとも。ゴレリアスがどれだけすごかったかは師匠からよく聞かされていたが特に魔王との戦いの時が最も強かったらしい。


「{勇者のオーラ}に加えて魔王と同等の魔力量を持つ竜剣の使い手か」


 そんな言葉を漏らしたが大人になったばかりの坊ちゃんが背負うにしては多いもんだな。俺も拳神マイオア・フィーザー唯一の弟子とかいう知る人ぞ知る肩書きはあるが坊ちゃんに比べたら小さいもんだ。新勇者一行とも呼ばれる自分達、ようやく三魔将軍と渡り合えそうな力を全員が持つことが出来た。

 このあとどう転ぶかは誰もが分かるはずがない。かつての勇者一行が魔王と戦い始めた時勝てるビジョンが全く浮かんでこないまさに絶望だったらしい。術も通じなければ武器術はおろか戦闘の技術そのものを全否定されていたらしい。それほどまでに強大な相手に対して1人1人と倒れていったがゴレリアスだけは何度も立ち上がった。

 竜剣に込める魔力、魔能である{勇者のオーラ}すらも使えなくなっても立ち向かっていた。師匠達も共に戦おうとしたが魔王が放つ濃い魔の力によって一度消耗した力が回復しなかったらしい。同じ魔の力を持っていたアンクル姐も関係ない、魔能や個能ではないただ単純な濃すぎる魔力。それだけでゴレリアス以外はまともに戦えなかった。

 なんとか立ち上がった師匠が魔王の攻撃に割り込みゴレリアスを守ったところで意識が飛んでしまった。そして目覚めた時にはゴレリアスが左腕を犠牲にして撃退し魔王城ごと封印したという事を聞かされた。その次の日にはゴレリアスが消えてしまいそれぞれが出来ることをする為に国に帰っていった。

 姐さん達が言うには魔王が放つ濃い魔の力を相殺できる程ゴレリアスからも突然力が溢れ出しなんとか撃退をしたという。その時見た彼の姿は地上の誰よりも強かったがそれまでに負った傷が響いてしまい自身の攻撃に耐えきれずに片腕を失ったという。

 その話から師匠は魔の力に蝕まれてもせめて勇者の盾になれるように、魔族が使っていた身体強化術を参考にして闘気を纏い練度を上げる{纏神}を編み出したという。この拳術が有効かどうかは分からないがそもそも師匠はこれを使わずともフュペーガをぶっ倒していたんだな。...まだまだ上の世界があるもんだな本当に。

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