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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
闇の中

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205/246

#204 かつての世界

 水滴が落ちる音がしてその音で意識が覚醒し身体を起こす。誰かが住んでいるのが分かる生活感のある部屋、自分の記憶のどこにもない見慣れない光景の場所だった。そもそも自分は確か魔王軍と戦っていたはずなのにどうしてこんなところに?寝ていた場所の横に丁寧に手入れされた装備を見つけたのでそれらを着て外に出る。


「なんだこれ?」


 そんな言葉が出てしまうが無理もない。陽が昇っているので昼だと分かったがそれ以上に青空ではなく赤みがかった気味が悪い色に変わっていたからだ。それと同時に自分がいるのはどこかの山奥で、遠くに見覚えのある街が見えた。

 自分が寝ている間にいったい何があったのかそれを知る為に少し山林を抜けていくと川へと辿り着いた。まずそこで確認したのは集落のような物があって魔族達がいたことだ。以前まであれほど整っている拠点のようなものはなかった。

 気づいたこととして魔族達が自分達の生活を模倣して暮らしているようにも見えたのだ。家畜代わりに魔獣などを飼っていたり作物を育てているような場所があるのも分かった。村で暮らしていた頃の自分を見ているように思えた。

 だが見れば見るほど自分らとは根本的に違う所が見えてきた。奴らが笑っているのは下等種族から奪った物を使って遊んでいたり生活をしてあざけ笑っている姿。魔獣などを育てている姿には愛情はなく、ただただ作業的に道具と同じように扱っている。

 奴らは自身が楽しく生きる為に群れをなし生を謳歌している。隙を伺いながらしばらく観察を続ける。するとどこからか縄で縛られた老若男女種族も問わない人々が連れられてきた。

 集落の長のような魔族が現れ術式を施し始めた。捕虜と術式が合わさっていいことなどあるはずない。そう思った瞬間身体が動き、警戒が薄そうな魔族へと襲い掛かり片っ端から倒していって竜剣術の感覚を忘れていないことを確認する。


「た、助けて下さりありがとうございます」

「いえ当然のことをしたまでです。皆さんはどこから?」

「我々は住む場所を魔族に追われたものの集まりです。戦えるものもいたのですが奴らに殺されてしまい...」

「それで捕らえられてここまで連れてこられたと」

「抵抗した者はその場で処刑され従うしかなかったのです」


 他の人達とも話をしてどこに向かっていたのかと話を聞いてここがメルクディン大陸だということが分かった。この人達は魔王軍と戦い続けていると噂されている場所へ向かっていたらしく。

 その場所は王都メルドリア、遠くに見えた街のようなところはそこだったのだろう。短期間とはいえ宿を取っていたので見覚えがないわけがないのだが、何故すぐに気づけなかったのかと言うとメルドリア城と思える廃墟になっていたからだ。

 そういえばエクスキューションのジャッジマスターことガッシュ・バグラスと三魔将軍夢幻のドリューションがあの場所で戦ったんだったな。城の建材には特殊な術式が刻まれ壊されても直る性質があるはずなのだが、それが追いつかない程激しい戦いがあそこで繰り広げられていたのだろう。

 両者痛み分けとなり共に姿を消したので戦闘に復帰可能かどうかも分からない状態。ただ記憶が確かならば『魔王との戦いまでには必ず間に合わせてみせる。』と言っていたので無事ではあるのだろう。

 魔王軍からしても魔王の右腕とも言われているドリューション。それがたった1人のどことも分からない馬の骨にやられたのだ。多少なりとも焦りはあったのだろう、だからこの前の戦いが起きたのかもしれない。

 夜も遅くなったので目が覚めた場所へと帰っていると小屋の前で焚火をしている老人がいた。自分のことを助けてくれた人だろうか?


「どうだった変わっていただろう、この世界は」


 辺りも暗く遠目だったのでよく見えなかった老人。顔には生々しい傷痕のようなもの、そして左肘から先がなかった。

 あんな近くに魔族とか魔獣とかがいる場所にも関わらず身に着けているのは木刀だけ。いやあれは木刀に見せかけた真剣?それとも自分の魔力を通すと変わる剣なのか?とりあえず質問に答えるか。


「はい、以前は魔族が集落を作っていることなんてありませんでした」

「まぁそうだろうな、三魔将軍サピダムによってノレージ・ウィンガルが討たれ、3日が経っているならそれぐらいの混乱はあるだろうな」


 驚きを隠せないことを今言われた気がする。勇者一行として旅をしていたあのノレージ様が倒されただって!?他の人達は無事なのか?どうにかしてあそこまで辿り着かなければ...


「今日はもう遅いこれでも食べて寝るといい」


 すぐにでも行こうと準備してしまっていたがそうだ焦ることはない。逆に魔王が復活してこうなってしまったのなら時間はいくらでもあるといっても過言ではないのだろう。それにしてもこの人自分が考えてることが分かってい、


「どうして考えてることが・・・て思っているな?」

「っ!?・・・はいその通りです」


 老人の隣に座りもらった魚を食べながら空を眺める。


「かつてなこの世界には勇者がいてな、俺はそいつと知り合いだったんだ。そいつに憧れて旅に出てその末にこんなことになったんだけどな」


 傷痕と左肘に触れながら微笑む老人。もし今自分が{勇者のオーラ}を使えたのならこの微笑みをもっと笑顔にさせられたのかもしれない。でもその力は使えない、使えるのは竜剣術と魔族が使う魔の力だけ。いや待て、この人にはもう1つ聞かないといけない。


「なんで自分を助けてくれたんですか?」


 さっき助けた人々も自分のことを見て魔族に向けていたのと同じ視線を感じたのだがこの人からは全くそれを感じない。見た目からしても明らかにヒュードに似た紛い物でしかないのに傷の手当までしてくれたんだか...




「なんとなくだ。誰かを助けるのに理由はいらないだろう?」

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