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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
目覚めの時

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204/246

#203 地異天平

 などと昔を振り返るのはこの戦いが終わってからにしようではないか。まぁ最もその時に儂が生きておるかは別ではあるがの。知識比べも終わる気配がなければ奴が隙を見せることもなく術書に保管された術式だけが消耗されていく。まだ持ちはするが同じ作戦がサピダムに通用するのかという疑問もある。


「ふむ、面白くないな」


 サピダムは突如魔の力を放出して距離を取ってきた。こちらの狙いには気づいたのか?いや違うこの感じは儂は知っておる。奴の背後に巨大な術式が現れそこからかなり広範囲の土混じりの津波、つまり濁流が発生した。やはりなこれは...


「あの一瞬でこんな水、いや混術(フュージョンスペル)を!?」

「どうやら奴は儂との対決がお望みらしいのう」


 術書の保管されたものではなくこちらも術式を形成し激しい風と共に雪を降らせる吹雪を巻き起こし完全に相殺する。これまでも知識比べではあったがあれは基礎的な術式同士の対応。そしてこれからはこの世に存在する術理論と性質をどこまで知っているかの戦いのようだ。


「ほぉ流石は儂に次ぐ最強の術士と呼ばれるだけのことはあるのぉウィンガルよ」

「貴様ほどではないにせよ、儂も術に関しては詳しくてのご期待に添えるかどうかは分からぬがな」

「なら次の問題じゃよ」


 術式が複数出現しそれぞれから基本の性質が同じものでも本質が違う攻撃術が放たれた。それぞれに対して有効な術式を組み上げ展開して霧散させる。するとすぐさま別の術式が出現し基本造形ランク5、6のバレットとシューティングの応用術で武器を模したモノが現れた。こちらに飛来する武器に合わせて同じように造形をし霧散させる。

 儂はそれだけでなく奴の足元に術式を巡らせ造形ランク7であるエラプションを五術分発動させる。それも時間差で性質の違う爆発を引き起こす。煙の中から現れた奴の周りには黒ずんだ色とりどりの術壁が貼られていた。術式からエラプションが発動するまで間隔は僅か0.1秒もないのにも関わらずすべて防がれてしまっている。


「楽しいのぉ・・・これほどまでに楽しいのはいつ振りかのぉ!」

「知らぬわ、魔の力で本当によくも再現出来るものじゃな」

「今ようやく最初の濁流の仕組みが分かりました、流石おじさま」


 ミュリルも水術が混ざったものなら理論が分かると言っても他の術が混ざるとなると複雑化してしまうので理解して術式を組むまでは到底いくはずもない。ここで儂はある結論に至りサピダムに対して質問をする。


「なぜかつての戦いで術理論で勝負をしなかったのだ?そこまでしなくとも勝てるという慢心でもしておったか?」






「そこまでしなくとも勝てると慢心してはいたが貴様らの言葉で言うなら儂は魔王様が勝つと信じていたのでな」


 そう言って奴は宙へ浮きとてつもない巨大な術式を作り出しそこから巨大な落石、いや隕石を降らせた。この場だけでなくこの島全体を巻き込む殲滅攻撃術と言ったところじゃろうな。これほどの規模の術は{魔力源}、無限の魔力を持つ奴だからこそ出来ることだろう。

 この混術(フュージョンスペル)、術理論に辿り着いた者はこの世でも儂とエルドリアで対峙し儂が倒したネモリアの兄であるナザ・ゴースのみだ。

 同じ理論でも行使する術そのものにサピダムは質量特化、儂の場合は練度特化となりまるで形が違う術に変化した。儂が今から放とうとしている術が{ネビュラ}と名付けているならば奴の場合は{メテオ}と言ったところじゃろうな。

 互いの術がぶつかりあい凄まじい音と共に眩い光が辺りを包んだ。そんな最中ですらサピダムは術を放ってきており再び知識比べが始まろうとしていた。そしてこの撃ち合いが始まった瞬間だった、意図せず奴にその隙が訪れた。その一瞬を見逃さないでいてくれるからこそ儂はかつて魔王を倒してくれると信じていた。






 そして今回も必ず成功させると思っていた。






 戦場が眩い光で包まれたと思ったら身体が宙へと上がってどこかに飛ばされているのがよく分かった。飛ばされながら意識が遠のいていく中で空の色が暗くなっていたのが分かった。






 そうか儂らは失敗したのじゃな。また訪れてしまったのじゃなあの時代が。もう完全に儂は力を使い切った、つまり儂の魔能である{魔寿命}が機能しなくなった。抗えぬ死がもうそこまで迫っているのを感じ目を閉じてこれまでを振り返った。特に勇者一行として旅をしていた時のことを深く思い出しこの戦場から飛ばした者達にゴレリアス一行の影を重ねた。


「剣神ウヌベクスの息子、そして魔王の孫である勇者ヒュード・ソールよ。儂が愛したこの世界を救ってくれ魔王から救ってくれ頼んだぞ」






 その日空の色が変わった。人々は何事かと思った瞬間英雄によって封じられていた記憶が蘇ってきたのだ。勇者ゴレリアスによって救われる前の世界のことを。

 ご機嫌に鳴く鳥ではなく魔族などが飛びかい村を襲い続けられるあの日々を。一筋の光すらも見えない永遠とも思えるあの暗黒の時代を。

 その日にまたかつての勇者一行であったとある人物の訃報が伝えられた。初代エルドリア国王にして、冒険者ギルドを創設し世界への多大な貢献をし、術の真髄まで辿り着きマジックアルケミストとも呼ばれたその者の名は、ノレージ・エルドリア・ウィンガル。

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