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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
目覚めの時

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202/246

#201 決戦

 それにしてもベルゴフさん、フュペーガの攻撃の威力はともかくその攻撃を防ぐことが出来るハウゼントの魔能もとんでもないな。出現させる盾などの強度は根性と言っていたが意図せず魔力を闘気に変換しているのかもな。

 この世界の強い人達は皆常に魔力などで身体強化していたりするがその中でも特に闘気を使う人達は精神的にも身体能力的にも優れているのだ。仮に自分も魔力ではなく闘気による身体強化が出来ていたならこの戦いに加われたかもしれない。そんなようなことをベルゴフさんに坊ちゃんは出来なくていいんだよと言われた。

 闘気による身体強化の最大の弱点として相手の闘気の質が負けてしまえば力や技術で勝っていようが一切関係がなく傷を与えることが出来ない。そして武器術のように魔力を纏って強化するのではなく身体そのものを闘気によって強化をするので肉体そのもので直接攻撃を受け止める為、基本的に攻撃が貫通してきてしまうので同格の闘気で対抗するしかない。そこでさらに使用者の拳術の性質の違いで戦い方がそもそも変わってきたりする。


「良く割り込んだなぁお前も・・・あーなんだえーと、寛大なハウゼントだったか?」

「慈愛のハウゼントだ、どんな間違え方だこの脳筋め」

「いいじゃねかよ、脳筋てことは余すところまで筋肉なんだろ?」

「言われてみれば確かに悪くねぇな」

「なんじゃその知性のない話は?そんな無駄話をしておらんでさっさと倒さないかフュペーガよ」


 その言葉を発したサピダム、突風が吹いたと思ったら奴の顔の前にはフュペーガの拳が置かれていた。


「分かってる黙ってろサピダム。お前こそ呑気にしてないでさっさと魔王様を起こしてこい」


 声色的にも表情的にも先程までとはまるで別人のようにフュペーガの辺りの空気が変わった。今の一瞬から伝わってきた寒気がする程のとんでもない程の圧力。そして奴の身体が光沢のある赤と黒混じったドス黒い色へと変化していた。


「坊ちゃん達下がってろ。いや今すぐこの場から離脱しろ」

「えっで、でも、」

「早くしろ!」


 これまで共に旅をしてきて自分達に対してここまで本気で怒鳴ることはなかった。それ程までに不味いということがすぐに伝わりウェルンの手を取り全力で離れることにした。キュミーとフォルちゃんはと思いそちらに目を向けるとハウゼントさんが抱えてくれた。




「逃がさん」


 距離を離していたはずのフュペーガの声が目の前で聞こえた。対処しようとするが既にベルゴフさんがその身体で視界の端へと連れて行ってくれていた。


「お前の相手は俺だぁぁぁぁ!!」


 白金色の身体に変化していたベルゴフさんを置いて翼を広げウェルンを抱えて宙へと飛び立つ。後ろから武器を使っている訳でもないのに甲高く重たい音が鳴り響き風圧が伝わってくる。三魔将軍狂猛のフュペーガ、拳神流最後の後継者マイオア・サルドリア・ベルゴフ、両者の本気の戦いが始まったことを告げていた。

 その戦いに本来なら加勢し協力して倒すべきなのは分かっているし今の自分達なら相手に出来るような気もする。それはベルゴフさんも分かっている、いや自分よりも理解をしているはずにも関わらず逃げろと言った。理由など思考せずとも浮かんできた、それはもう簡単な理由でしかない。

 フュペーガによって、いやたった一体の魔族を倒す為に勇者一行がここで全滅させられる可能性があった。ただそれだけのこと。だがこのことが世界にとってどれだけ重要なことか、誰もが分かるだろう。






 儂らと共に戦ったマイオア・フィーザーに似た懐かしき気配と共に同じ方向からとてつもない程禍々しい力を感じた。遂に始まったのじゃな三魔将軍との戦いが、つまりこの場所にもうまもなく奴が来るのじゃな。今ここにいるのはミュリル、フィオルン、ラ・アンクル、ノレージのかつて勇者ゴレリアスと共に旅をした4人である。

 そしてこの場所は島の中枢である魔石に魔王城を封印している術式が展開されている最終防衛ライン。ここさえ守り続けることが出来ればこの世に魔王が復活することはなく、再び魔王軍が世にはびこり暗黒の時代が訪れることもない。だがそれもとある魔族を倒さなければ期間が無限ではないのだ。


「来おったか」

「ええそのようね」

「この気配は間違いないですね」

「改めて聞くけどノレージ、本当にあなた勝算はあるの?」

「ないともあるとも言えはせぬがそれでもやらねばならぬじゃろ?」


 この場所を隠すようにかけていたミュリルの幻が壊され、ヒビ割れた箇所から三魔将軍叡智のサピダムの姿が現れた。やはり聞いていた通り、通常時と戦闘時の魔力の質と量が桁違いだ。儂は魔王城には行けてはおらず最後に戦ったのは今この場にいる他の3人。倒したかに思えたがどうやら生き残っていたらしく別の身体へと移り転生していたようだ。

 本来なら儂が戦えていればサピダムのことを完全に消滅させることが出来た。儂がやらなければならない、頭でそのことが分かっていてもあの時仲間を信じた。儂はヴァル大陸を守りエルドリア共和国を建国した。結果として儂は生き残り英雄となれはしたが使命を全うしていたとは言えない者となった。

 じゃが今回は違う、儂の考え...術理論が間違ってなければ奴のことを倒せるはずだ。だがこの理論にも欠点がありそこを突かれた場合、最悪のことが起きてしまう。つまるところこの戦いは儂とサピダムの術理論勝負となる。

 この策が通じる自信は大いにあるが儂がこのことに気づいているのであれば奴もそれをケアしてこないわけがない。まずはその前提条件まで奴を追い詰めなければならないがこの4人なら大丈夫だ。ゴレリアスよ儂らに力を貸してくれ、今ここでこやつを止め50年前唯一の心残りをなくそうではないか。

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