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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
目覚めの時

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201/246

#200 超えた先

 魔力が全て解放されている今の自分なら出来るのではないか?と思い剣に魔力を込めイメージを具現化していく。その隙を見逃すはずもないウアブクスが攻撃を仕掛けてこようとするが他の仲間達がそれを許さない。先程のウアブクスがやったように剣を掲げ未だ込めたことのない量の魔力を込める。そこに込めている魔力は参と肆のように荒々しいはずなのに静かに剣に纏われている。

 ありがとうみんな、自分が新しい武器術を試そうとしたのを察してすぐにフォローに回ってくれた。おかげでこれまでで最も強力な竜剣が誕生しそうだ。魔力を込めた量が今までの剣術と比べてもかなりの差があり、まさに秘技の領域と呼べるだろう。


「みんな離れて!」


 その剣に宿した魔力が具現化し竜種を超越した存在が伝説とも言われている龍種を具現化させる。本当にいるのかすら分からない幻の存在とも言われている。だがその話は今この瞬間において幻ではなく現実となり存在していたのかもしれない。その状態の自分はまるで龍種がブレスを吐くように剣に纏い魔力を放出した。


「漆の剣、獄咆斬(ギガ)!!」


 この攻撃にウアブクスも竜剣を振るっていくがどれも通用しないようだ。それもそのはずだ、この竜剣は打ち消すのではなくこれと同等の質量を持った一撃で相殺しなければならないからだ。かつての勇者一行、三魔将軍級の魔族なら相殺される可能性があっても十分な一撃であることには変わりはない。

 戦力としてはウアブクスは確かに三魔将軍並みではあるがこれほどの質量の魔力を一気に放出することは出来ない。放出した竜剣が終わる頃全身がボロボロに傷ついたウアブクスが自分の前まで詰めて魔力を込め竜が具現化した剣を振るっていた。


『俺が使えるのは伍の剣までだな』


 陸以降は使えないと彼は言っていた。だが今振るわれている最後の竜剣はこれまで見たことがない明らかな竜剣術(モノ)。伍で終わったと本人は言っていたはずだがやはり秘技の領域まで持っていたか。太刀筋を見ていたからこそ尚更秘技は出来ないと認識していた。だがこの戦いで疑うということを考えてなければこの攻撃を喰らっていただろう。

 来る、そう読んでいたからこの剣をちゃんと鞘に納めもう1つの秘技を構えていた。今使った魔力すらも回復しつつ攻撃をいなしそのまま反竜鱗(リバース)を放つ。確かな手応えと共に育ててくれたウアブクスにまたさらに成長させてもらったことに感謝した。

 あれだけの竜剣を放っていたのにまだまだ魔力があるな。それどころかもう回復している所を考えると本当にデビアとして、魔王の孫として魔力量が覚醒したのかもしれない。自分は勇者の力を持っていて魔王の孫でもあるのか。相反する力を持っているなんて奇妙なこともあるものなんだな。


「やったんだよな?」

「はい、{リバース}と違ってあれは魔人形だから手応えがあったので...」

「ほうあれを倒すか、強くなったな魔勇者よ」


 いつの間にか背後に回って自分の顔の横から声が聞こえてきて振り返るが声の主はどこにもいなかった。倒したウアブクスから目を離してしまいもう一度そちらの方を振り向いたがもう既に亡骸は無くなっていた。宙を浮くサピダムが魔の力が漏れ出たウアブクスを持っている姿を見て自分の中に何かがあった。


「しかし貴様らは大変じゃな、他の何かを守る為に命を懸けるなどと愚かな行為をするのだろう?」

「そんな挑発には乗らないぞサピダム」

「挑発ではない事実じゃろう?だからこのようなゴミに対しても感情を向けられるのだろう?」


 サピダムが手を握るとウアブクスの身体があちこちに飛び散った。例え先程まで敵だったとしてもその身体は間違いなく自分を育ててくれた親に代わりがない。今ここで感情のままに動いてもいいことはない、それが分かっていても身体が反応してしまっていた。

 再び剣を手に掲げ漆の剣である獄咆斬(ギガ)を放っていた。サピダムは避ける素振りすら見せずに攻撃が直撃していた。攻撃が終わった後姿がなかったが黒い何かが集まり元の位置に元通りのサピダムが現れた。


「挑発に乗らないのではなかったのか魔勇者よ?」

「くっ...」

「あれでもダメなの!?」

「坊ちゃんの今の竜剣は確かに致命傷になりえるかもしれねぇ。だけどあいつは{自己再生}、{魔力源}の2つを持ってるからなそれをどうにかしねぇとな」


 奴の魔力が少しでも残っていたらそこから再生するといったところなのか。もし自分が今{勇者のオーラ}を使えていたらあのままサピダムはやられていたのかもしれない。ないものねだりをしても仕方がない、自分の新たな竜剣が三魔将軍にも通じることが分かっただけ良かった。


「ここで儂が貴様らとことを構えるのも良いかもしれぬが任せるとしようではないか」


 そう言って術式を展開しその中からとても大きな体躯の何かが出てきた。そいつがこちらに飛び込んできたのに対してベルゴフさんが即座に{纏神}で身体強化して攻撃を受け止めた。自分が受け止めていたなら確実に吹き飛ばされていた衝撃が身体越しに伝わってきた。


「お?この攻撃を受け止める程強かったのかベルゴフよ」

「そんないきなり出てきてこんな重たいもん坊ちゃん達にぶつけられてたまるかよ、狂猛のフュペーガ!」

「へっ、いいだろ別によ!防げねぇ方が悪りぃしこんなもんで壊れるなら俺どころか魔王にも届くわけねぇからな!」


 もう一発闘気に満ち溢れた拳がベルゴフさんに向けて放たれる。互いの拳が合わさろうとしてフュペーガの拳の前に盾が出現して先にぶつかり砕け散りベルゴフさんの拳によって吹き飛んだ。だが攻撃を喰らっていたはずなのに空中で身を翻している所を見るとそこまでダメージもないみたいだ。ハウゼントの盾によってフュペーガの拳の闘気が薄れ、一瞬闘気の質が上回っていたが身体に纏っていた闘気までは薄れてなかったので衝撃だけ伝わったのだろう。

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