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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
目覚めの時

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#197 何が為の世界

 改めて溢れ出る魔力を形、竜として具現化させ魔剣に纏わせると鏡と同じように綺麗に自身の顔が映る程の艶のある刃へと変化した。試しに近くの岩へと触れてみるとまるで空気の様に刃が通ってしまい驚きを隠せなかった。これほどまでの切れ味ならば巨竜種や闘気で強化した拳術を使う魔族が相手も出来るかもしれない。

 まぁベルゴフさん級までいくと話は別かもしれないが。それほどの相手は早々いるはずもないのでこれは必ずこの戦いに活きるはずだ。後ろにはウェルン、キュミー、フォルちゃん、そして前にはベルゴフさん、ハウゼントの5人で自分達は今動いている。


「さっき伝えられたことから他の冒険者の方々を守りながら戦うでいいんですよね?」

「そうだな、ヒルドリアの奴らもやられるってことはかなり厄介だからな」


 ジューグラさんらが命を懸けて守った人達から情報が各戦場へと先程伝達された。その情報とは過去に確認され倒されたとされる魔族達が大量発生したとのことだ。そんなことがあり得るのかと思ってしまうがそもそも死者を蘇らせることが出来てしまう魔王軍、いや叡智のサピダムのことだやるに決まっている。それほどこの世界をもう一度魔が満ちる世界にしたいという邪悪な思念が伝わる。

 それぞれが望む世界の為に、片方は壊す為、もう片方は守る為。と誰かが言っていたような気がする。だがその話が本当かどうかは分からない。魔族には仲間意識がなく犠牲という言葉は存在しない。ただただ力を誇示し弱者が生きられない世界にしようとしているがどうしてか。時折そんなことを思うことがあるが考えても無駄でしかない。

 世界にいる生物に例外なく同じ生物はいない。故に同じ考えの者はいないが似た考えを持つ者同士がいるが完全に同じではない。全てが同じならば争いなど生まれないし個性というものはない。その世の理すらも魔王軍には関係がない。同じ人形を生み出し考えを1つにしようとしている。違いがあるから世界は面白いはずなのだがと自分が思っても意味はない。分かり合えないからこそ喧嘩、争いと言った言葉が存在している。

 こんな考え方をするのも父親から影響を受けたから。だが正直同年代から比べたら思考が歳をとっているのかもしれないな。ウェルンと比べてもかなり現実を見がちで夢がないからこそ自分以外の人を助けたいんだ!とか考えながら敵を倒していく。


「お兄ちゃんなんかすごくなったね!」

「私達も負けてられないねキュミー!」

「ソールが頑張るなら私ももっと気合入れるよー」


 つい先程まではここまで楽には倒せていなかった。思考しながらでこの強さが出せるなら今の自分ならもしかするかもしれない。度々思うことではあるけど改めてかつての勇者一行がどれだけ厳しい旅の果てに魔王を封印に至ったかと思い知らされる。

 何度も強くなってこれなら勝てるはず、そう思って戦いに挑み負けてその度に強くなることを繰り返してきた。この戦いが始まる前にノレージ様達に前世界大戦時から強かったのかと聞いた。旅の中で成長した者がほとんどでその中でもゴレリアスだけは常に前にいたという。彼はただ純粋に強くその力を世に知らしめ、暗黒の時代にもしかしたらという光をもたらしていた。

 そして暗黒の時代たる象徴でもあった魔王の話も遂に聞いた。魔王との最後の戦いは魔錬術師(マジックアルケミスト)ノレージ・ウィンガルを除いた勇者ヒュード・ゴレリアス、拳神マイオア・フィーザー、癒女帝(ヒールエンブレス)ミュリル・フィンシー、血飢姫(ブラッドプリンセス)フィオルン・ビース、魔王の娘ラ・デビア・アンクルの計5人で戦った。

 まず部屋に入った瞬間から魔を感じたというよりは魔そのものだったという。抑えきれない魔力は毒と同じで、ある程度、いやかなり高度な術壁を張れなければ死に至る恐れがあったという。それほどまでに濃い魔力と魔力量の持ち主、それが魔王ラ・ザイール。

 その状態を保ったままだった為、かなり戦闘がしづらかったという。勇者ゴレリアス、同じデビアで魔の力を持つアンクルを除いた他の3人は本来の実力すら出せずにあっという間に倒された。残っていたアンクル様もそもそも実力差があり即座に倒されまともに戦えたのは勇者のみだったという。自分達も同じようなことになる可能性があり倒せずとも封印出来たことが奇跡だったという。

 自分達から見てもかつての勇者一行は格が違うのに勇者と魔王はまた更に次元が違うという。その話を聞いて自分はまだまだなのだなと痛感させられたと共に今回の戦いがどれだけ重要かがよく分かった。あの時と違い{勇者のオーラ}を持った真に勇者と呼ばれる者はこの世にどこにもいない。自分がその個能を持っている、そのはずなのに何故か自由に扱えたことがない気がする。


「ソール、考え事しながら倒せるぐらいにはその力使えるようになったんだな」


 ハウゼントに言われ振り返ると砕けた魔石や魔族が転がっていた。自分だけでないにしてもかなりの数を倒せてるようだ。無意識で上手くいくならようやくこの魔の力も自分のモノになってくれたのかもしれないな。そんな自分達の前に術式が現れその中から黒いコートの人物が現れた。新たな魔族か?その手にしている剣は刀身が長すぎる。でも何故かは分からない、どこかで見たことがあるそんな気がする。


「・・術、壱・・...」


 そんなはずはない。あるはずがない。かすかに聞こえたその声は知らないはずがないし死んでいるはずがない。いやないなんてことだけはない。このあとに来る攻撃に対して自分も()()()()()壱の剣である{撃竜牙(スティング)}の強化版スティンガーを放ち飛んでくる斬撃をかき消す。衝撃でコートが弾けて素顔が晒されそこにいる人物が育ての親であるウアブクスがいた。

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