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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
目覚めの時

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197/246

#196 繋いでいく為に

 現れる敵と思われる何者か達を片っ端から屠っていく。もう誰も失わない為に。自分が全て倒せばいいんだ。そうすれば誰も傷つくこともない、自分だけが傷つけばいいんだ。


「待・て・・ル!」


 ウェルンの声が聞こえたような気がした。大丈夫、絶対に守るから。安心して。並の魔族なんて敵じゃないんだ、簡単に倒せる今の自分なら。でもどうしてだろうか?こんなにも力に満ち溢れているのは。よく分からないけど調子がいい。ネモリアさんの死を受け入れて悲しみに満ちているはずなのにどうしてだ。まぁいいか、敵を倒せるならなんでもいいか。


「・兄・・ん!」


 キュミーの声も微かに聞こえたのか?もう分からない。今はただ目の前に来る何者かをただひたすらに倒し続けている。いや考える必要もないか、自分に対して向かってくるのは敵だけのはずだ。魔族か魔獣、そのどちらかだけ。


「おい坊ちゃん!落ち着け!」


 上からベルゴフさんの声がしたと思ったら地面に押さえつけられてしまった。{纏神}によって白金色の身体へと変化した圧倒的な力でだ。これだけ調子がいいのにどうして止めるんだ!敵を倒しているなら問題ないはずだ!放す気配がないので力ずくで抜け出そうとするがやはり抜け出せない。


「どうして止めるんですか!今の自分ならみんなを守れるのに!もうネモリアさんと同じような人は見たくないんです!放してください!」

「馬鹿野郎!今来た道を見て見ろ!本当にお前がやりたいことか!」


 いったい何を言っているんだ?押さえつけられた状態だと見づらくはあるが後ろ、来た道を見る。そこには魔族や魔獣が倒れている姿が見えた。魔の力が残っていて自身が屠ったことが分かる。だがそこに冒険者達、共に戦ってくれる人達も混ざっていたのだ。


「じ、自分がやったんですか?」


 その言葉に対してベルゴフさんは頷き自身が行ってしまった事の重大さに気づいた。それと共に自身がどういう状態になっていたのかにもようやく気づいた。本来魔力は目に視えないものでそれが濃くなり実態を持つと攻撃術や武器術となる。

 そして今の自分はその魔力が目に見える程濃く実体化していて常に竜剣術を振るってるのと同じ状態だ。力に満ち溢れていたのもよく分かりはしたが、意識せずにこれほどの力を出していたのにも関わらず全く魔力切れが起こりそうにもない。


「幸い理性が残っていたのか分からねぇけどよ気絶で済んでるからよ」

「そうなんですね...」

「何があったかは嬢ちゃん達に聞いたから分かったけどよ、一旦落ち着いてくれよ坊ちゃん」

「ソール!」


 自分の周りにウェルン、そして各地に散っていたかつての勇者一行も集まってきた。


「よいかの、勇者ソールよ。儂もネモリアが亡くなったことを聞いて揺らがなかったわけではない。じゃがそれが戦いなのじゃよ」

「あなたはきっと誰も欠けることなくこの戦いが終わると思っていたそうでしょう?」


 まさにその通りだ。ここで戦いを終わらせてみんなでまた旅を出来たらとか考えていた。誰かしらが死んでしまうことなど一切考えてなどいなかった。過去にもこういった戦いをした際に犠牲がなかったわけではないがそれがまさか自分に深く関係する人になるとは。

 よくよく考えてみたら魔王軍との戦いで失わなかったことの方が少なかった。初めての戦いでは親友を失い、自分達を守る為に光となったなど、全てが何かを守る為にその身を捧げている。今回のネモリアさんもそうだ。そのネモリアさんの父親にも助けられた。今ここにいる自分達は誰かの犠牲なくては生きてはいない。その人達が守ろうとしたものをつい先程までの自分は壊しかけていたのかもしれない。


「落ち着いたみたいね?とりあえず状況を確認しましょう。まずは戦力の確認からしないといけないけど誰かなにかある?」

「負傷していた冒険者や兵士達には治療などを施しましたが人によっては身体以外の損傷が激しい者もいました」

「それって今の私達みたいに大事な人を失っててことですか?」

「それもあるかも知れぬが単純に魔王軍と戦い恐怖を植え付けられた者もいるじゃろうな」


 引き続きノレージ様達からの報告を聞き状況を把握する。その中での冒険者を含む実力者達の生死の確認。風の噂程度に聞いたことが冒険者一行がやられたことなどを聞いてる中でも自分達が知る人物達の名前も上がった。ヒルドリア騎士団団長ジューグラ・フィンシー、副団長サーチャー。この両者共に戦死が確認されたそうだ。

 他にも{リバース}で蘇った魔王軍などの情報と共に倒し方も共有された。まずサピダムとの魔力の繋がりを消すことが出来れば倒せるようになること。そして他には生前の記憶を取り戻させるなどの{リバース}の定義そのものを崩し倒す方法の2つが現時点での有効策のようだ。


「敵も減りつつあるがこちらも消耗しているのは確かなことじゃ」

「そこで私達はとある作戦を決行しようと思うのだけど大丈夫みんな?」


 フィオルン様のその発言に対して周りのみんなが頷いた。正直このままだと魔王復活も時間の問題だ、ここまで来たらもうやるしかない。もう何を失いたくない、そうは思っていても失わずに前に進むことなんて出来はしないはずだ。例えこの戦いで自分だけが生き残ったり、自分だけが死んでしまうことになっても必ず倒す、そう決めた。

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