#191 経験値の差
矢を弾くことに成功してはいるがこのままでは埒が明かない。だからと言って{リバース}で蘇った父上達を闇雲に相手をしていては確実にこちらがやられてしまう。向こうでキュミーとフォルが兄上と相手しているが状況は同じだ。改めて戦ってみてやはりこの2人はウィンガルの中でも特に実力が秀でていたことがよく分かる。
だがそんなことを気にしてここで止まっているわけにはいかない、そこで私は父上に出来ないことをすることにした。魔力を具現化させ鳥へと変化させ武器術ではなく鳥弓術の練度で勝負をすることにした。先程までは矢同士が衝突し地面へと落ちて相殺出来ていた攻撃、それがなんと私の矢が父上の放つ矢を打ち落としながらそのまま飛んでいくのだった。
これなら私の魔力が続く限りは優勢に事を運べる、だがこの作戦はあまり長く続けられないということを私自身が分かっていた。ようやく私は鳥弓術、魔力を鳥へと具現化出来るようにはなったがまだまだ消費が激しいからだ。そもそも常時具現化など魔力量が桁違いに多くなくてはならない。私はそこを勘違いしていたから少し前まで上手く鳥弓術を扱えなかったのだ。
私の攻撃を受けて父上の表情が少し険しいものとなった。先程まではただの無表情、鋭い眼差しへと変化していて本気になったのがよく分かる。参の弓である{育鳥}を主として戦っていたが、おそらくではあるが他の鳥弓術も使ってくるようになるはずだ。
父上が使う鳥弓術は私も使え、壱と弐がどんな技か分かるので対処はまだ出来る。だがはたして私は適うのだろうか?ただ単純に矢を放っていた先程までと違い、術を使い軌道を変えたりなど、より高度な攻撃をしてくる。何故そんなことが分かるって?私が握る、この武器の使い方を教えてくれたのは父上だからだ。
「ようやく本気で相手をしてくれるのですね」
「・・・」
「ええ、分かってます。仮に立場が逆だったとしても情には流されませんよね」
私は知っている人物に似ている他人と本気で殺し合いをしている、その認識でなければならない。少しでも情が湧いてしまえば、大体の部分で勝っていたとしてもたったそれだけで私は負ける。そうなってしまえば私だけでなくキュミーとフォルもやられるだろう。そんなことは誰も望んでいるわけがない。私は勝たなければならないのだ。
矢を回収し、辺りの状況を把握しつつ父上が放つ攻撃の軌道を集中して考えると共に、私も父上に対して有効的な攻撃を考える。向こうは魔力が無限でもこちらは限りがありそれを迎えてしまえば...いや最悪のことは考えてもどうにもならない。最善を尽くす為に集中しろ!
自信の周りにも風を展開して多少なりとも抵抗を試みようとするが的確に急所を狙う攻撃だ。私はまだ相手の状況まで計算して的確な攻撃は出来ないし、私はその領域まで辿り着くことは出来ない。武器術の才はギリギリ継承できる器ではあったが、術の才に関しては全て兄上が持っていってしまった。
兄上の方もどうなっているか確認したくはあるがその余裕を見せられる相手ではない。降り注ぐ矢の雨かと思えば突然正面から飛んでくる。矢を放ち切ったのを確認しこちらも攻撃をするがすでにもう父上の手には数本の矢が握られていた。先程まで使っていた矢と違ってあれはどうみても魔の力で作られた矢だ。
魔力による矢の生成までしてくるなんて...流石に予想できなかった。そして父上が放つ矢が鳥の様に見え始めて更に驚いた。戦いの中で進化しているとでも言うの?魔力を込めてこちらも壱の弓、{連鳥}を放とうとして私の手の甲に矢が突き刺さり中断させられてしまう。急いで込めていたから{連鳥}をこちらも放てたかは分からないがどうにか防がなくては!
「っ、{アースウォール}!」
厚めのウォールを展開して矢の貫通を防ごうとするが何本が貫通して肩や翼を負傷する。この貫通力は鳥弓術特有で私のようなただ分厚いウォールを展開しても練度が高くなければこのように貫通してきてしまう。鋭い痛みが身体のあちこちを突き抜け私の強みでもあった機動力が削がれてしまった。まぁそれも父上の前では意味のないものではあったのかもしれない。
術の練度はこれ以上上げることが出来ないのは私自身が分かっていた。父上の攻撃をウォールで防げないと信じていたのでこの隙を突いてこちらの一撃を入れ!?上空から矢の雨が落ちてきてこちらの攻撃を許そうとしてくれない。
「カッ、は...」
まさか先に放っていた攻撃の中に{雨鳥}が、混じっていたなんて思いもしなかった。これが父上が魔力量があったなら出来たかもしれないことなのか。あれだけの攻撃を受けながらも生きているのはどうしてだ?あまり考えない方がいいのかもしれない。
私が思うに父上が放つ鳥弓術が本来の威力なら私は倒されているはずだ。何かがおかしい、そこに気づければ光明は見えるのだ、が。先程のウォールを使った時に流石に魔力を使い過ぎたみたいで魔力切れしかけている。ポーチから魔力剤を取り出し身体に差し込んで息を整え、魔力を矢に込めておく。守ってばかりではダメだ、こちらから動けば少しは変わるかもしれない。




