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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
暗黒への序章

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188/246

#187 面影

 こちらに向けてヒルドリア王の{水竜弾}が放たれるがベルゴフが闘気を込めた一撃で打ち消した。ただ今の消え方は単純な闘気だけでなくベル自身の魔力も込めているのだろう。かつてフィーザーも同じようにして敵が放つ高威力の術に対抗していた。それにしても彼から聞いたとしても闘気と魔力を同時に操るなんてよく出来たものね。


「ベル、あなたさてはこれまでかなり手を抜いていたわね?」

「うん?まぁな。あまり俺がやり過ぎても坊ちゃん達の成長には繋がらないだろう?」


 私達は1人1人が既に磨かれていたけどこの時代の勇者一行の大体は旅の中でかなりの成長をしていた。その中でベルだけが強くて敵を蹴散らしてしまっても魔王軍に勝てるわけがない。成長を見守りつつ力をセーブして誰一人仲間が欠けないように努めてきたのね。

 そんなベルの実力は私達と同等、いえフィーザーと同じ実力を持っている可能性があり下手をすれば私達よりも強いだろう。闘気を纏い光り輝いている彼からは独特の緊張感が放たれているような気がする。誰がどう見ても強さが伝わってくる純粋な力の塊。そこもフィーザーと同じだ。


「んでフィオ姐あそこの2人もらっていいか?」

「いいわよ。私1人だと流石に手を余していたから引き取ってくれると嬉しいわ」


 ベルゴフはそう言ってヒュードとマイオアの2人に対して衝撃波を放ち吹き飛ばした。突然放たれた私よりも重たく速い攻撃に対応出来ずかなりのダメージを負っているのが分かる。辛うじてマイオアの方は意識を保っているように見えるがヒュードの方はかなり濃い紫煙を上げている。そこまであっさりと攻撃が通るのも無理はない。私達とはまるで重さが違う攻撃が急に飛んできて尚且つ速さも桁違いときたものだ。私達のような半端な武器術使いではなく彼らは戦闘に特化した専門家達なのだ。

 当たらなければどうということはない、と言えるのは本当に強い人達だけ。私達に対して本気の拳が向けられることはなくて本当に良かったと思っている。本気で喧嘩をしてしまえば互いの身を案じる余裕がない、彼もその領域にいる。

 そのまま続けてマイオアに対して瞬時に詰め寄り空いていた腹部へと拳を叩き込むと身体の中心に穴が開いた。ベルが何かを耳元でささやくと何やら満足そうな顔をしながら身体が崩壊し始めていた。その光景を回復しながら見ていたヒュードの表情がどう見ても恐怖に染まっていた。死人達は表情も豊かではあるが感情は伝わってこない何もない見せかけのものでしかない。そのはずなのに行動にも表情にも感情が現れ回復しようとしていたヒュードの再生が止まり身体が崩壊し始めた。


「フィオ姐、なんとなく{リバース}が分かったんだがよ。理屈で説明できねぇんだよな・・・」

「ええ大丈夫よベル、大体分かったわ。つまりそういうことなのね?」

「分かってくれたならいいんだがそこの3人に対して聞くかどうかは分からねぇぞ」


 ヒュードとマイオアが消え、残されたのは戦場の極星ことローガ・ビース、初代アルドリア王ことフィル・ビース、そして前ヒルドリア王であるゼリル・フィンシー。先に倒した2人が種族内では有名な人の可能性はあってもここに残っている3人は種族問わず誰もが知っている実力の持ち主である。

 歳老いていた姿ではなくかつての姿で私達の前に立ち塞がっていて、私1人では太刀打ち出来ないと分かっている。でもそれはさっきまでのお話で今ここにはもう1人頼れる仲間がいる。それはかつての仲間であって私の大事な物をあげた拳神、マイオア・フィーザーのたった1人の弟子。

 出来ることならフィーザーと肩を並べてもう一度戦いたかった。もしかしたら生きているのではと、そんな簡単に力尽きてしまうわけがない、そう誰しもが思ってたしあの人も抗うと言っていた。あの日見た予知とこの間見た光は全く同じもので彼が亡くなったという事実を物語っていた。そして彼の力を継承したという弟子がこうやって一緒に戦ってくれているしこの世界にとっての希望を守ってくれた。

 やはりここに来る前に見たあの{未来予知}は夢だったんだろう。知らぬ間に魔能を使おうとして何も起きていなかった。そんな夢を見るくらいには私はフィーザーのことを好きになっていたのね。ベルの構えを見ていると懐かしくなり頼もしさが湧いてくる。少し肩の息を抜く為に目を閉じこれまでをさらに振り返る。

 フィーザー、私も早く向こうに行ってあなたに会ってもいいのかもとか思ってたわ。でもそれは違った、この美しい世界を守る為に多くの人達が命を捧げてきた。1人がみんなの為にみんなが1人の為にと、協力し合って生きてきた。少し醜い部分もあるかもしれなくても魔王がいたあの暗黒の時代にしてはいけない。失う事しかないあの時代に戻してはならない、悲しみに溢れた世界にしてはならない。


「フィオ姐、色々と準備出来たか?」

「ええおかげさまでね。時間稼ぎをありがとうベル」


 目を開けると3人がベルに対して集中攻撃を仕掛けているが余裕があるようにも見える。これ、私いるかしら?ここはベルに任せてもいいかもしれない。だけどそれは流石に勇者ゴレリアス一行だった私の名が廃ってしまう。ローガ・ビース目掛けて高速で狩猟具を射出し負傷させる。そろそろまた寝てもらいましょう、もう十分楽しんだでしょ、じぃや、お父様。さっそく{リバース}を解かせてもらおうじゃない!

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