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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
暗黒への序章

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187/246

#186 推論

 こういう時に都合よく誰か、いやきっとゴレリアスなら来てくれたはずだけどここには彼はいない。今この戦場でノレージやミュリルのようにかつて魔王軍と戦った人はほとんどもういない。ヒュードの知り合いもマイオアの知り合いはおろかビース、フィンシーの知り合いも皆老いて力を失った人がほとんどだ。それも私達が一度でも仮初の平和を作り戦いから身を引かせた。

 魔族との戦いは常に何かを失う覚悟、例えば身体の一部や大事な人だ。ある人は脚を失い希望を失い、親友、左腕を失い姿を眩ました者。私も家族を失った、父と最後に交わした言葉は『行ってらっしゃい、頑張って来るんだぞ』、母とは抱擁をしてまた会えることを信じて旅に出た。

 この戦場にもしかしたら父である初代アルドリア王だけでなく母もいるのかもしれない。だがサピダムが何を基準にして{リバース}で死人を生み出しているのかは分からない。一度でも手を合わせたことがあれば{リバース}可能だと言うがそれにしてはおかしなこともある。それはじぃやのことで理由は簡単だ。どこかで戦ったことがあると言われても誰も不思議がらないが()()()()()()()()()()と本人が言っていた。


「それにしても生前会ったことがないはずなのにこのレベルの連携が出来るのもどうしてなのかしらね!」


 {リバース}、魔王軍三魔将軍、叡智のサピダムが生み出してしまった死者蘇生を可能とした術の真髄にして禁忌術である。術者の生前の記憶を媒介としてかつての姿で蘇り、魔力の限り本能のままに動き続ける死人として現世へと呼び戻す術。ただし全くの無から呼び戻すことは出来ない様で生贄が必要となるがその素体となる人物の実力は関係がないとされている。

 そして死人達は生前の記憶がないのにも関わらず全盛期の力を惜しみなく振るい続ける。その中でおかしな点として死人達同士が連携して攻撃を仕掛けてくることだ。術の連携はサピダムが術者である以上まだギリギリ理解できる。だが武術の心得など知るはずのないサピダムがどうして生前交流があるはずのない死人達による連携をさせることが出来るのか。

 可能性としてだがサピダムが戦ったことがなくても{リバース}出来るのではないかと思った。だがノレージ曰くそれだけはありえないという。何故そう言い切れるのか・・・私達は疑問に思ったが術理論としておかしいという言葉と共に、ノレージは{リバース}と似たような術を作ろうとしたことを告白した。

 剣神ヒュード・ウヌベクスを蘇らせ来たるべき戦いに備えようとした。だが記憶の通りに死人として外見を再現できても、ノレージが扱えない武器術の分野を再現できずただ剣を振るうことしかしなかったという。出力も安定せず魔力の消費が激しかった為、術を開発することは諦めていたが{リバース}のことを聞いた時に1人だけ、やはりと口を滑らせていたのも頷けた。

 そんな相手の連携にこちらの気が休まらずそろそろボロが出てきそうだ。ローガ・ビースと初代アルドリア王のビース同士の連携攻撃ならまだしも、そこにヒュード、マイオア、フィンシー族の英雄の攻撃も加わっているのだ。この光景を見ているとかつての私達を思い出すような気もする。マイオア、ビース、フィンシー、ウィンガル、デビア、そしてヒュード2人、で旅をしていたあの頃を。


「くっ...」


 あれだけ生み出していた血の武器も残すところ周囲に漂う数本だけになりこちらから攻撃することが不可能となった。本当にあと1人、あの旅をしていた誰かがいればこの状況をなんとか出来るかもしれない。その中で最も適任なのは拳神、マイオア・フィーザーではあるが彼はもう確実にこの世にはいない。私がこの眼で最期を視てしまい、ついこの間それと同じことが起きてしまった。

 実はここに来る前にあり得るはずのない{未来予知}を視たがあまりに夢でしかない内容だった。それはフィーザーが私のこと助けてくれるというものだ。私は彼の最後を視たはず、それなのに何故また彼のことが視えてしまったのか?最初はベルゴフをフィーザーと見間違えたのかと思ったが何度思い返してもあれはフィーザーだった。寝ている時に見たので夢なのかもしれない、でも能力が働いていたことは私自身が一番理解をしていた。

 でもやっぱり夢だったのかもしれないわね、周囲に漂っていた最後の狩猟具も砕かれマイオアに首を掴まれ締め上げられてしまう。抵抗しようとするも身体に力が入らないのはヒュードが何かしらの術をかけているようだ。仮にこの拘束を解いてもヒルドリア王の{水竜弾}が襲い掛かるか、ローガによって再び捕らえられ息を止めにかかるだろう。





 薄れいく意識の中で私は1つの可能性を信じていた。なぜ信じていたのかって?例えどこからどう誰が見ても絶望ともいう状況であっても確定していない未来なら諦めるのはもったいないからだ。


「どりゃぁぁぁ!」


 拘束されている私の前に1人のマイオアが降り立ち辺りの死人達を吹き飛ばした。マイオアで尚且つ拳術士な男っていつも遅いの?危うくあなたの師匠の元に行く所だったじゃない。ゴレリアスだったらもっと早く助けてくれるけど、こういう場ではゴレリアスよりも頼りになるのよね筋力馬鹿は。


「まったくいつも遅いわね、ベルゴフ」

「へっすまねぇな姉御、大丈夫か?」

「大丈夫に決まってるでしょ。あと、帰ったら覚えてなさいよ」

「これはこれは失礼しました女王陛下様」

「まぁ助かったわベル。おかげでここから私達の番て所かもね」


 辺りの血だまりから狩猟具を生成し周囲に再展開し体勢を立て直す。ベルもまだまだ元気そうだしなんだかは分からないけど自信に満ち溢れてるわね。もしかしなくても{リバース}の対処法でも見つけたのかしら?だとしたらかなり好都合ね。さぁ反撃といこうじゃないのお父様達、さっきまでよくもやってくれたわね。

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