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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
暗黒への序章

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#184 剛拳と剛剣

 ジャックを倒した直後戦場の雰囲気が変わり各所に術式が浮かび上がり何者かがを出現したのを感じた。その中でも特に戦力が集中している場所と気配を感じ取る。その場所はおそらくフィオ姐がいる場所、相手も相当な手練れだろう。流石のフィオ姐と言えど{リバース}で蘇った無限の魔力を持つ死者達を多数相手するのは危険だろう。すぐさま駆けつけなくては最悪の事態も考えられてしまうがそれは叶わないようだ。

 俺の前にも術式が現れそこからとあるビース族の剣術士が現れた。俺達はこいつに会ったことがある。この前の戦いで死んでしまったアルドリア騎士団長、そして勇者ゴレリアスから剣術を教えられた子供達、通称竜の子供のゴルドレス・ビースだった。


「へっ、これはこれは、然るべき相手に対して手札を切ってくれるなんてよ。サピダムも親切なこったな」


「なぁゴルド、お前はそんな弱い奴じゃなかっただろう?ここで決着をつける必要はねぇんだよ、今は一刻を争うんだ通してくれないか?」


 ゴルドの手に大剣が生成されこちらに構えてきた。剣を向けてきたつまりそれがゴルドの答えだ。それならこっちもそれに応えないとな。全身に闘気を纏わせて{纏神}を使いこちらも構える。今思えば師匠から力を継承して鍛錬を続けてきたが勇者一行以外で対等に戦えると思えた奴は少なかったんだよな。坊ちゃんや嬢ちゃん達はまだまだ安定しているわけじゃねぇ。もちろんガッシュ・バグラス、ゼク・ハウゼントは俺以上の実力者なのも分かる。

 今まで旅をしてきた中で一番俺と近い実力を持った奴がゴルドだった。アルドリア行く道中で初めて剣を振るう姿を見て何故か俺が剣を振るっている錯覚に襲われた。身体の大きさも戦い方も似ていて、似すぎてこいつとは魔族との戦いが終わったら本気で(やりあいた)いと心の底から思った。だが魔族達と戦い死んだという知らせを聞いてそれは叶わないものだと、そう思っていたがまさかこんな機会に恵まれるなんてな。


「縁起悪いかも知んねぇがよこういう機会があるなら死者が蘇ってもいいもんだな!」


 こちらが勢いよく飛び出すも向こうも飛び出し剣を振るってきた。それに対して拳を合わせゴルドの剣の重みを感じる。この感覚は師匠と拳を合わせた時にも似ている攻撃の質、そんな重い一撃を相殺しつつ距離を取る。

 次の一手として掌底を繰り出すとビース族にしては大きめの身体のゴルドが宙に打ちあがった。追撃しようと飛び上がるとゴルドの背後に何かの魔獣が見えた。腕を十字にして闘気を固めその一撃を受け止めるがそのまま地面に叩きつけられる。止めてはいるが固めていなければこの腕は使い物になっていなかっただろう。

 勇者ゴレリアスから武器術の才を認められそれぞれの個性に合わせ別の武器術が生まれた。その竜の子供の中でも正統剣術{竜剣術}に近い{獣剣術}を使うのがゴルドだ。本来の竜剣に比べても一撃ごとの威力に差があり一部の獣剣は竜剣の威力を越えている可能性があるらしい。これは本人が言ってたのと他の竜の子供に聞いてもそう答えていた。

 今の攻撃も一度見ていなければ俺は闘気を緩めていてかなり苦しい戦いを強いられていたな。ゴルドの腹に蹴りを入れ弾き飛ばすが飛ばされた先で攻撃箇所から薄紫色の煙が上がっていた。中途半端な攻撃では{リバース}によって修復されてしまうようだ。


「こっちは消耗してんのにそっちはずっと回復し続けるなんてよぉ、本当にフェアじゃねぇな」


「本物もそんな感じだろうけどな1つだけ違う所があるぜ」


 更に気を張り{纏神}の練度を上げさらに強度を上げ攻撃を仕掛けに行く。当然奴はそれに対して対応しようとしてくるのでフェイントを入れたフリをしてもう一撃加える。再び攻撃を仕掛けるとこちらの攻撃は簡単に通り相手の攻撃は防ぐことに成功する。やっぱりな薄々そんな気はしてたんだよ。確かに奴は{獣剣術}も使うし仕草や見た目はゴルドではあるが決定的な物が足りない。これもある意味{リバース}の弱点なのかもな。


「俺のような奴らはな、決められたことに縛られてちゃ弱いんだよ!分かるか!理論で真似出来る闘い方じゃねんだよこの野郎!」


 相手の攻撃に対してカウンターを決めゴルドが派手に地面へと転がっていく。おそらくだがサピダムは見様見真似でしかゴルドのことを見ていない、つまりは直接手を合わせていないのだろう。この前の戦いで死んだとされているが殺したのはサピダムではなく別の奴。本来の荒々しい理論のない攻撃ではなく理論立てた対応するだけの人形になってしまっている。

 俺らのような単細胞は術に対しての耐性がないがそれはサピダムのようなガリベン野郎にも通じる。身体を鍛え方を知っていても鍛えたことがない身体には俺らの攻撃が通りやすい。奴がいくら無限に回復するとしても一撃でも喰らってしまえば万が一がありえてしまう。そんなリスクをサピダムのような狡猾な野郎が負うわけがねぇ。


「お前の攻撃を感じられて良かったぜゴルド!少し休んでな!」


 闘気を集中し奥義{玉神滅殺}を右拳で放つ準備をして奴の顔面目掛けて放つ。派手に地面を転がりながら何かが飛び散っているのを確認した。手応えはある、本来ならこの技を生身の人間に放つ拳術じゃねぇんだがなこれで少しは止ま...らねぇよな。

 首が本来なら曲がってはならない方向にあったが元の位置に戻っていき、拳の跡がついていた顔の形も元に戻った。飛び散った皮膚のような者は地面に溶けて無くなり顔の傷が修復されていた。先程よりも濃い紫煙が立ち昇るゴルドの姿を見て本当に生きてる奴じゃねぇんだなと再認識した。

 そしていつの間にか懐に入り込まれ剣を振るわれ見事に直撃してしまいぶっ飛ばされた。{纏神}していいたにも関わらずかなりの痛みを伴っている。何が起きたんだ?さっきまでとまるで違う感じがするぞ。まさか戦いの中で進化したってのか?面白いじゃねぇか!

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