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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
暗黒への序章

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182/246

#181 光り輝く力

 城壁に触れるとその部分から壁が消えハウゼントと魔力で作った砦が見えた。その砦が崩壊しその中から二闘士が現れ、こちらに襲い掛かってきたがハウゼントが間に入り2人の攻撃を防ぐ。二闘士に対して反撃をしようとするがすぐさま距離をとられてしまう。ハウゼントと同じく巧技、剛力という二つ名を持つエクスキューション三闘士と呼ばれた人達。おそらくだがかつての勇者一行と同等程の実力を持っていてもおかしくはない。


「そっちは終わったんだな」

「はい、なんとか」

「私もまだまだ行けるよ」

「守ることに自信があってもこの2人相手だと...攻撃まで手を回せない」


 両腕に新しい盾を換装しながら汗を拭う様子、換装する前の盾も損傷がかなり激しかった。ハウゼントがここまでの姿になっていたのを見たことはない、流石はエクスキューション三闘士と呼ばれていただけのことはある。

 人数的にはこちらが多いが有利になったとは言い切れない。ギルガバース、ドーガ、どちらもサピダムの{リバース}によって蘇った死者。元々の戦闘能力に合わせて無限の魔力と再生能力を持っていて、未だ対処法は判明していない。残っていた最後の回復剤を打ち魔力を完全に元通りにして戦闘態勢を整えると不思議といつもより身体が軽いような気がした。


「今ならこの2人をなんとか出来るかもしれない」

「そっか!今のソールにはデビアの力と勇者の力があるんだ!」

「それなら話が早いかもしれないな」


 コルロと戦っていた時に比べてもかなり消耗したとはいえ、自分に眠っていた{勇者のオーラ}の力もまだ残っている。ウェルンも回復し{全開放}を使い身体能力を向上させたようだ。ウェルンも自分が持っていた回復剤は尽きたのでさっきのような無茶はもう出来ない。幸い二闘士の攻撃には反応が出来るのでハウゼントに助けてもらいながら突破口を考える。

 こういった時に勇者ならどんな行動をするか、{勇者のオーラ}を使って一体何が出来るのかと。どこかで聞いたことがあるような...ないような...それにしても魔王軍はこの2人をよく倒せたな。扱う術の練度と精度の高さにはとても驚いている。

 典型的な遠距離から攻撃する術士ではなく棍術も扱い近接も出来る巧技のギルガバース。あれだけ大きな刃がついている片手斧を両方の手に握り軽々しく振るいとてつもない破壊力で攻撃してくる剛力のドーガ。これがエクスキューション三闘士と呼ばれていた者達の実力なのか、そしてこの場に最後の闘士である慈愛のハウゼントもいる。

 自身に対する攻撃術や棍術から身を守りながらこちらが危ないと思った瞬間に盾が展開され防いでくれている。自身を含め3人もいるのに誰も傷を負っていない、つまりそれだけ戦況が良く見えている。守りに関しては右に出る者はいないと言われているがここまでくると異常とも言える。だが攻撃の手は一切としてあるわけではないのでこちらがただ消耗しているだけだ。


「それにしてもこんなにずっと全力を出していられるのも魔力が無限なんだろうな」

「あっ!そういえば、ノレージ様が言ってたんだけど。サピダムとの繋がりをどうにかして無くさない限りは勝ち目はないって!」


 繋がりを無くす?それは{リバース}・・・いや違う奴の個能である{魔力源}と{自己再生}からか?






『あいつだけが放て...』






 そうかそんなことが出来るんだったな。でもそれをする為には、まずほぼ致命傷になりえる攻撃を加えなければならない。あの二闘士達に対して最も有効な攻撃は...


「ウェルン()()いける?」

「分かった()()だね!」

「ハウゼント、あの2人を一箇所にまとめて隙を作れないか?」

「出来はするがそれだと守りが、」

「ハウゼントこういう時のソールの作戦は絶対上手くいくから!」

「...分かった。怪我をしても文句を言うなよ!」


 攻撃を防ぐべく自分達の周りを漂っていた盾が消滅した。魔力を込め{竜獄爪(スクラッチ)}を放つ準備をしながらドーガの攻撃を避けようとして攻撃を喰らってしまう。だがここで倒れようものならウェルンにこの矛先が向いてしまうのでこちらが致命傷をもらわないように攻撃を引きつける。


「ソール、いけるよ!」


 ウェルンのその言葉を合図にハウゼントも術壁をを展開し離れていた二闘士を一カ所に閉じ込める。だがまたも一瞬で破壊されてしまったがその一瞬があれば混術(フュージョンスペル)が出来る!{竜獄爪(スクラッチ)}を放ちながらウェルンはその剣の振り合わせて{バーティカルソード}を複数本操り同時攻撃を放った。


「{シャイニングフォース}!」


 ふと自然と出てきた技名と共に攻撃が見事に直撃し瀕死状態となった二闘士。回復が始まる前に残り少ない{勇者のオーラ}を込めて専用術を放った。


「{ディスキル}!!」


 {リバース}の効果でサピダムと同じく無限の魔力を持ち自己再生が始まるはずの二闘士には何の変化も訪れず身体が崩壊していく。{ディスキル}、勇者ゴレリアスが熾烈を極める魔族との闘いの中で編み出したいかなる魔能も無効とする専用聖術。これによってサピダムのような厄介な能力を無効化し物事を優位にしていたという。

 自分は一度この術をメルクディン山でサピダムにかけることに成功した。だがその当時に使えた{勇者のオーラ}で使えた魔力量で使えた時間が短すぎて全くの意味をなさなかった。今回の場合は本人ではないのでサピダムとの繋がりを一瞬でも消える。そうすれば魔力が繋がることないのではと考えたがどうやら当たりのようだ。


「ソール今の私達の?」

「うん?ああそうだよ。いつものあの混合術{シャイニングフォース}ってつけちゃったけどどうかな?」

「すごくいいと思う!ありがとう!」


 崩れていく二闘士に向け兜を外して片膝をつけ顔を伏せ始めたハウゼント。{リバース}の一番凶悪ともいえるところはやはりこの感情を強く揺さぶってくるところだろう。今後も知り合いが出てこないとも限らないのでより一層気を引き締めなければならない。ようやく見つけた{リバース}の対処法、おそらくこの方法だけではないはずだ。

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