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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
暗黒への序章

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181/246

#180 最大の壁

 城壁に近づいて合流する前にポーチの中を確認して残った2本の回復剤を自分とウェルンに渡して息を整える。自分達にとって悲しいことでも世間から見たら魔王軍の幹部クラスを倒すことに成功したという事実には変わりはない。本来なら大きな成果を上げたはず、それも三魔将軍叡智のサピダムによって開発された{リバース}のせいで意味がないのかもしれない。

 こちらの戦力が削れてしまえばサピダムが魔族として蘇生させ敵が増えるという話を誰かが話していた。だがそれはあくまでもサピダムが接敵した個体にのみ限られるはず、そして同じ個体が2体以上を生み出さない、いや生み出せないのかもしれない。過去にアルドリア王とヒルドリア王を倒した時に思ったことだったがやはりそこが弱点とも言えるのかもしれない。一度蘇生した個体を倒してしまえば再び蘇生されることはなくなるがまず倒せるかどうかが怪しい。

 まず前提として魔の力、サピダムの力で蘇っているのは分かる。聖、{勇者のオーラ}が有効なのも分かる。それでも奴らは{魔力源}で魔力が尽きることがないし、{自己再生}によって寿命以外で死ぬことはあり得ないが魔族は寿命で死なない。倒すまでにどれだけの犠牲を払うか、サピダムからしてみたらノーリスクで戦力を確保する可能性があるとんでもない術だ。

 ウェルンも落ち着いたようなのでハウゼントの作った壁に近づく。壁に触れて思うがこれが魔力で作ったと言わなければ気づかないぐらいの頑丈さが分かる。理屈として竜騎兵の能力と同じで魔力がある限り守りに関連した盾や壁などを生成しているのだろう。改めてハウゼントの{守護}の力には驚かされるがこの中にどうやって入ればいいんだ?






 こうやって手合わせをするのもエクスキューション三闘士として認められた後にしたのが最後だった。ギルガバース、ドーガとは大陸が違うのもあって会う機会はさほどはなかったが連絡はしていた。その2人がまさか魔族の手に落ちるとは思いもしなかった。

 エクスキューションの中でも三魔将軍に対抗しうる力を持っている可能性がある者達、それがエクスキューション三闘士だった。元々は二闘士で巧技のギルガバース、剛力のドーガの2人だけだった、そこにもう1人、慈愛のハウゼントが入ったことによりエクスキューション三闘士となった。

 私は入団して瞬く間に三闘士まで昇りつめた、ただ一部の者からは反感もありヴァル大陸以外ではあまり良い印象を持たれていなかった。そんな時にギルガバースとドーガの二人に呼び出され手合わせをしてほぼ互角の戦いをしてからは団員からの信頼度が上がった。後にマスターから聞いたことだがこの手合わせは新しい闘士の実力を示すために他の二闘士が計画してくれたことらしい。


「でもまさかこうやって本気の殺し合いをするとは思いもしませんでしたね御二方?」

「「・・・」」


 ドーガの振るう斧を盾で防ぐが衝撃が貫通しているような気がするぐらい重たい攻撃。ここで反撃に移りたくてもギルガバースの針穴に糸を通すが如く鋭い攻撃がくるのでこれも防がざるを得ない。生前の記憶がないはずなのにこれだけ完璧な連携が出来るのはこの2人が積み重ねてきた鍛錬の量が私と違う。仮にもこの2人は私と同じくガッシュ・バグラスに認められ闘士と呼ばれていた人達だ。これぐらい出来て当然だろう。

 だがそれは私も同じだ。山をも砕くとされている剛力のドーガの一撃を真正面から受け止め、技のキレや術の練度が高い巧技のギルガバースの攻撃を全て受けとめる。それが全ての者を護る力を持つ慈愛のハウゼントなのだ。どんな攻撃からも護るこの力を破ったのはガッシュ・バグラス以外に誰一人としていない。

 この壁の向こうには絶対に行かせない、何時間でも護ってみせるそれが私に出来る最善の手。もし竜騎兵、エクスキューション二闘士が一緒だったならこちらは負けていたかもしれない。それで勝つ可能性が最も高い選択肢としてこの2人を私1人で抱え込むことを選んだ。


「くっ...」


 2人の攻撃をひたすら防ぎ続けて流石に少し疲れが出てきたような気がする。魔力量はまだまだ余裕があるからまだまだ防げていてもこのままだとジリ貧だろう。相手は無限の魔力と再生力を持つ魔族で疲れや魔力切れが起こることは絶対にない。こちらが確実に負けへの道を辿っているのは確か、だがこれ以上良い展開を望んで状況を悪化させてしまえば勝機が確実になくなる。

 頑丈さに特化し動くことを考えない大盾を着け攻撃に耐え、術壁を破られないように魔力をひたすらに込めながらただひたすらに耐える。壁の向こうで戦っている今の仲間達を護る為にこの身を削る。私が出来る最大限の力を持って二闘士の攻撃に耐え続ける。

 外壁に誰かが触れたのを感じて外の戦いが終わったことを理解する。大盾を地面へと突き立てて砦を召喚し2人を閉じ込め時間を稼ぐ。仮にこれで竜騎兵が出てきても多少の時間稼ぎになるはずだ。触れた箇所から遠い箇所から城壁を解除するとそこに立っていたのはソールとウェルンだった。

 どうやら2人はあの竜騎兵に勝つことが出来たようだ。信じていなかったわけではないがそれでもよく勝ってくれた。さぁここからが反撃の時間だ回復材を刺し無くなっていた魔力を回復する。その瞬間砦が崩壊し中からエクスキューション二闘士が再び現れたのだった。

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