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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
加速する世界

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164/246

#163 矛盾

 体当たりが直撃したかに見えたドリューションからゲルの塊が飛び出しハウゼントが捉えられてしまったのですぐさま開放する。今攻撃して分かったがこれは闘気で身体を固めているのと同じような強度になっていた。果たしてここまで形態変化をして尚且つ倒れる気配がない奴はいただろうか?


「マスターありがとうございます。ですがこいつどうしましょうこのままだと...」


 目の前でうごめくドリューション、他の三魔将軍からも実力を認められるだけのことはあるな。あと何回変化するのかは分からないがこいつはまだ本気を出していない。理由としては簡単だ、それは魔族として当たり前である魔の力そのもので攻撃をしてきていないからだ。

 これまでの攻撃は奴の能力によって取り込まれてきた者達の術や武器を用いた攻撃だ。本物と何も変わらないその攻撃は本物だった者達よりも強力になっている。にも関わらずそのすべてが魔の力による強化ではなく他に取り込んだ者達の力を応用していた。

 そして今このスリイらしい見た目においてようやく魔を象徴する紫色が出てきた。先程から攻撃を繰り出してくるドリューションだがこれも全て魔の力抜きでこの力なのである。私とハウゼントどちらもまだ全力でないが相手もそれは同じである。ここまでの攻撃でまだ試していないこともあるので試してみよう。


「{ジャッジサンダー}!」


 手を前に広げ奴の真上に青ランク相当までの魔族や魔物を一撃で倒せる威力を持つ雷を落とす。少し動きを止めたがこちらに攻撃を繰り出してくる。口も顔も無くなり完全にスリイとなった奴には効いているのか効いていないのか全く分からない。

 あくまでも憶測の範囲を出ないがドリューションはこちらの攻撃に合わせて形を変えているようにも見える。先程までと違い人型として戦うのではなく段々とスリイの生態に近いものになっているのだ。現在奴は武器などを用いた打撃や斬撃に対して耐性がある。そこでここまで試していない術での攻撃をしたところ若干の変化があった。


「ハウゼントお前は守ることに集中しろ。奴が何をしてくるか分からないが取り込まれることだけは避けてくれ」

「了解しましたマスター。あなたのことは私が守り切って見せます」


 私の後ろに引き護りの力で壁が作られる。こちらも術を唱える準備をしていると触手がこちらに襲い掛かってくる。本来ならば叩き潰される程の威力を持つ攻撃なのだが、壁にぶつかると形を保てず飛び散る。こちらには最強の盾が存在しているのだ、私が最強の矛とならなくてどうするというのだ。

 術式を奴の周りに展開すると火属性の攻撃術{ヘルインフェルノ}を発生させる。またも動きが鈍り始めたので立て続けに次の術式を展開していく。水属性の{アブソリュートゼロ}、風属性{ジャッジサンダー}、そして土属性{グランドクェイク}、聖属性{アンパイアホーリー}。私が出せる限りでの最大威力の五術の攻撃を繰り出す。


「これがマスターの術攻撃、つたわってくる衝撃だけでも分かる威力なんだ。流石にドリューションといえどこれだけ喰らえば」


 術を繰り出しドリューションに直撃した際に発生した煙が段々と晴れていく。そこにいたのは再び人の形を模していたドリューションらしき姿だった。何よりも今までの巨大な姿と違いヒュードのマネキンに近い見た目で王冠をしていた。これが奴の正体、ロイヤルスリイ本来のすが...


「っ!?」


 衝撃が突き抜け私の後ろで護りの力を展開していたハウゼントが飛ばされる。辺りに展開していた壁がなくなりいつの間にか私の前に現れたドリューションが攻撃をしていた。両刃刀を合わせると金属音がなり火花が散った。護りの力が施され壊れるはずのないメルドリア城の床に互いに身体がめり込む。ハウゼントが間に入り盾でドリューションを突き放す。


「ハウゼント無事か?」

「ええなんとか...あいつまさか」


 そのまさかだろう、こちらを見る奴からは魔族なら溢れていて当然の魔力が一切溢れていない。今までのどの姿よりも弱く見えるはず。だが先程の攻撃を受け最強の盾である護りの力が貫通して城に傷を付けてしまった。

 来たる時まで全力を出すことが出来ない私にこの怪物は倒せない。ハウゼントも分かってしまったようだ、こいつは私達2人では手に負えないこと。これは勇者ゴレリアスと同等、他の6人が束になってようやく倒せる可能性が出てくる、魔王ラ・ザイールの右腕と呼ばれる夢幻のドリューションという魔族だ。


「ハウゼント、これからお前にエクスキューション、ジャッジマスターガッシュ・バグラスとして最後の指令を出す。準備はいいか」

「...はい」

「ここから撤退しドリューションのことを伝えろ。残ったエクスキューションの指揮はお前が取れ私はここでこいつを食い止める」


 そう伝えると背を向けハウゼントは走り出した。それに反応するドリューションの動きにこちらも合わせてハウゼントを攻撃から守る。奴を羽交い絞めにして動けないようにしてさらに魔力で奴の身体が分裂することを防ぐ。ハウゼントが術具を使いどこかに移動する様を見届けると拘束を解き奴に蹴りを入れて弾き飛ばす。

 こちらに構えたドリューションの姿を見て再度英具{ワールドオーダー}を呼び出し覚悟を決める。どうやらここが死地になるのかもしれないな。だが遥か昔にやり残したことを成し遂げる為にこの命は来たる時まで落とすわけにはいかないのだ。

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