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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
加速する世界

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161/246

#160 最強の2人

 私と同じ姿になったのを見るのはアルドリアで遭遇した後二度目だ。今回はあの時のような見た目だけでなく奴の身体からとんでもない量の魔力を感じる。過去の魔王軍との戦い時点で噂の存在かと思われる程に三魔将軍の中でも目撃例がなかった。その中でようやく姿を現した臆病者夢幻のドリューション。

 情報によると奴の実力と正体は魔王ラ・ザイールの右腕でロイヤルスリイというスリイ種らしい。スリイというと旅の道中に出てくる敵対意思が少なく、新人冒険者がいたずらに手を出して怪我をすることが多い中級者向けの魔物だ。

 攻撃は通りやすいが再生速度も速く核を貫くまたは術による攻撃が有効。またそれぞれの大陸ごとの環境に適応し個性も生まれ、効きやすい術も個体によって違い核の位置も異なるので倒すことが難しいのである。


「どうして私の姿をする?」

「お前のことだ。全力を出せるようにハウゼントに護りの力を張らせてるならこちらも全力でしなければな。あとは最強の相手をするならば最強の姿がふさわしいだろう?」


 奴が前に手を構えると紫色のゲル状の物が両刃刀に変わり、私と全く同じ通りに構え始めたので私も英具を取り出し構える。すると奴の両刃刀の見た目が変わり全く同じものになった。おそらく普通の両刃刀から英具{ワールドオーダー}に近いものいや同じものになったのだろう。

 奴の魔能{擬態}は本来人の容姿を真似るだけのハズレ能力、だがドリューションにはもう一つ恐ろしい能力がある。奴の身体の一部が体内に侵入すると寄生されたり、吸収されてしまい経験や魔能を取り込まれてしまうのだ。


「なるほど、能力はないが武器としてはテーク―オーバーに勝るとも劣らない素晴らしい物なのだな」

「付け焼き刃の戦い方でなんとかなるほど私は甘くないぞドリューション」

「それはこの前までの話だろう?この前ちょうどいい剣術士を取り込んだおかげで...」


 奴が刃を合わせ斬撃を放ってきたので攻撃を合わせて霧散させる。これは紛れもなく私達が使うのと同じ武器に魔力を込めて放つ武器術だ。続けて剣に魔力込める奴の背後には何かが具現化されそれを見て流派が分かってしまった。

 そこに具現化されたのは紛れもなく竜で奴が剣を振るう。魔の力を帯びた衝撃波がブレスの様に放たれた。こちらも同じく武器に魔力を込め回転させなんとか相殺をすることが出来た。


「まさかそれは・・・」


 武器術の流派で竜を具現化する剣術など一つしかないし、私はこの剣術の相手と戦ったことがあるので今使ったのが竜剣術だと分かってしまった。奴が取り込んだとされ勇者ソール以外竜剣の使い手となるとその他にはこの世に2人しかいない。

 1人は四十八年前魔王ラ・ザイールとの戦いで行方不明となった勇者ゴレリアス。そしてもう1人はソールの育ての親であるウアブクスしかいないが奴が取り込んだのは後者だろう。


「これがザイールを苦しめた剣術なのだな。先程、付け焼き刃がどうとか言っていたな。なら私はこれまで取り込んできた猛者の力でお前を苦しめようではないか」


 奴の手に握られた両刃刀が槍、ガントレット、短剣と次々に武器が変化した。私のこれまでの経験と奴が取り込んできた多数の人々が相手か。なので報告にもあった、海底王国ヒルドリア、第五代国王キール・ヒルドリア・フィンシーも取り込まれているはずなので鱗槍術も使える。

 他にはエクスキューション三闘士で剛力のドーガと巧技のギルガバースなどの実力者達も取り込んでいるのか。各国の行方不明者リストにも目を通しておくべきだったか。私が相手するのは1人ではない何人が立ち塞がっているのかは分からない。改めて全身に魔力を纏わせ{ワールドオーダー}の刃に模様が浮かび上がる。


「その力は武器の性質ではないな。となるとガッシュ・バグラス貴様の個能だな?」

「貴様に教える義務はない」

「ハハハハハハおもしろい!ここでお前を倒しその力をもらい受けようではないか!」


 と言って飛び込んできたドリューションの攻撃に刃を合わせる。すると奴は苦しみすぐに後ろに飛び態勢を崩し刃が触れた箇所から煙が上がっている。奴の身体そのものが武器となったとしても本質が魔の力で尚且つ身体の一部であることには変わらない。魔族に対抗するならば()()を使うのが一番だ。正体同様この力が何なのかはまだ誰にも明かすことだけは出来ない。


「なんだその力は聖に近い何かを感じたぞ!?」

「...答えは同じだ、貴様に教える義務はない」


 答えたところで魔族に扱える個能ではないのだがな。この能力は魔族に対してとてつもない効力を発揮し、武器の攻撃に加えて術による追加ダメージが発生する。魔族ましてや三魔将軍、普通に戦えば確かに強いかも知れないが私はこれ以上に強い相手と戦ったことがある。

 全力を出さずとも倒せるだろうがそんなに気を抜いてもいけない。相手は魔族、何をしてくるかは分からない。常に不測の事態に備えておくぐらい、


「今のも躱されるのか、お前は本当にどこの誰なんだ」

「それも同じで答える義務はない」


 死角からの術弾の強襲を術壁で防いだ。このクラスの魔族は術式展開や射出が速すぎて目で追ってからでは対処が不能なのでもはや感覚頼りになることが多い。


「・・・世界最強と言われてこれまで情報を集めてきた。ここまでの強さを持っているのにかつての勇者一行ではない?いやお、」

「無駄口をたたいている場合かドリューション?」


 奴の瞬きの瞬間に後ろに回り首を断ち切ろうとする。空を切り正面から高威力の術弾の嵐が飛んでくるので全てをいなす。


「どうやらお前のことを格下と認識していたが修正しよう。お前は倒さなければならない相手と再認識する」


 やはり奴も本気ではなかったようだ。仮にも魔王の右腕と呼ばれているのに私が強すぎて相手にならないなんていうことがあるわけない。奴は私と同じ姿だったが脚や腕や背中が色々な種族が混じり歪になり頭の数も三つに増えていた。両者実力を隠していたことが分かりここからまた戦いが始まることを告げていた。

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