#151 死者転生
地中から柱を出現させて2人の王目掛けて発射する。ヒルドリア王は回避、アルドリア王は破壊、それぞれが最も得意とする方法を使い俺の攻撃を避けた。今の俺は1人ではない、空中で身動きが取りづらいヒルドリア王と立ち止まっているアルドリア王にスケルトンが拘束するべく跳びかかる。
しかし相手は仮にも一国を納めていた武闘派な王達だ。ヒルドリア王は鱗槍術を使い、アルドリア王は地に手を付け回し蹴りを放ちスケルトンを砕いた。その攻撃終わりにまるで行動を読んでいた、いや動きを知っていた2人の王の子供が飛び出した。
「お父様なら!」「お父さんなら!」
「「絶対にこうする!」」
素晴らしいタイミングではあるがまだ未熟な2人。その攻撃よりも先に2人の王達はもう既に次の攻撃に移っていた。だがキュミーの間には魔力で固めたマント、フォルの間には俺が割り込み攻撃を代わりに受けすぐさま転移する。
「鮫突牙!!」「獣沈!!」
それぞれが最も威力が高い鱗槍術と獣剣術を放ち見事攻撃が命中する。身体が限界に近いのか少し視界がぼやけはじめた。さらなる追撃をかけようとした時2人の王が膝をついた。
「な、なんだ今度は何を...!?」
身体から蒸気が上がり皮膚がそれぞれ種族本来の色へと戻っていき崩壊が始まっていく。だがそれ以上に驚いたことがある。無表情だった両者はまるで生きているかのように辺りを見渡しているのだ。
確かサピダムは死んだ者が生前と変わらぬ状態で蘇らせて術者の意のままと言った。だが厳密に言うと違うな。これは、この魔術は死んでしまった者と同じ実力の新しい生命を作り術者の意のままに操る魔術だ。
肌の色が戻り崩壊していく2人の王いや父親の元に2人が駆け寄っていく、一瞬驚いた表情を見せた父親達は不思議な顔をした。当然だろう顔は似ていても血のつながりがない全くの赤の他人に抱き着かれているのだ。
「お父様、ありがとう。あの時逃がしてくれてなかったら私は生きてなかったんだよ。ほら私こんなに成長したんだよ。だからあとは任せて上から見守ってて」
「どうだったかな、教えてもらった技上手く出来てたでしょ?お父さんやお母さんが教えてくれたこと一つ一つ出来るようになってるんだよ。次会う時は全部出来るようになるから先に行ってお父さん」
そんな2人を父親達は急に眼の色を変えて突き飛ばしたので再び戦闘態勢に入る。真下から黒い何かが飛び出し完全に崩壊した。あのままであれば2人は巻き込まれていたがどうしてそんなことをしたのだろうか。
「一度崩壊が始まると戦わなくなり、いくら魔力が無限だとしても耐久性はまた別。完全な死者蘇生ではなく新たな魔族を生み出している為言葉は愚か感情も何もかも分からないと」
向こうでベルゴフに向けて術を放っているはずのサピダムがこちらにも攻撃を仕掛けてきた。突き飛ばされた2人も立ち上がりサピダムに武器を構える。
「ほぉこれは多勢に無勢それでも儂には叶わんだろうな。唯一倒す可能性を持った勇者も今やこっちの手駒。さぁ次の手はどうする」
ウェンが{ディザスター}に囚われてから1人で竜騎兵と戦っている。エルドリアを守護するゴース家の当主ルメガ・ゴース・ウィンガル、またの名をルメガ・エルドリア・ウィンガルを倒した重罪人。
その娘である私が倒さなければならない相手がこいつだ。私もエルドリアで遭遇してから強くなっているはず。だがこの相手はベルゴフさん並みの実力者というのが分かっている。
「お前達には本当に感謝している」
「どういう意味?」
「私はサピダム様によって生み出された何もないただの竜騎兵だった。その中で常に成長し続けるお前達に出会い、私も変わりさらに強くなったような気がしなくもないからだ」
魔族の序列は単純な力量で決まりその理由は単純な力押しや駆け引きを必要としない。いや頭を使わず戦いに特化していて知略を使うことが少なった。だからかつての魔王軍は敗れたと言われている。その話を聞いて育ち、これまで色んな魔族と戦った。新生魔王軍が絡んだ戦闘では知能を持った指揮官クラスが1人は存在している気もする。でも私が思うに知能というよりかは...
「それって感情じゃないの?」
「感情だと?この私があなた達劣等種のようなつまらぬものを持ち始めたと」
「あなたの場合は勝ち負けを学んで悔しかったりするってことはじゃない?あとは誰かの為に何かをしたいなんて言い出すのは私達と何も変わらないよ」
しばらくの沈黙と共に何とも言えない表情に変化し、少し間が置かれた後頭を下げ高笑いが始まった。こんなにも笑うとはエルドリアで会った時には想像出来なかった。こうやって笑っている間も{ディザスター}は止む気配がなくずっとウェンを閉じ込めている。一見傍から見たら隙だらけなこの光景だが迂闊に攻撃しようものならすぐさま反撃が来るはず。
「・・・馬鹿な劣等種は飛び込んでくると思ったがどうやら分かっているようだな。でも王女よ、言われてずっと不思議でしょうがないことがようやく解決出来た。やはりサピダム様は天才で私は過去の出来損ないの量産型ではなく新魔王軍唯一の完成された竜騎兵なのだとな!」
奴が何かの術式を展開し始めたので止めようと飛び出した。私の攻撃を躱しながらあらかじめ術式が張り巡らされていて躱しきれずに肩を撃ち抜かれてしまう。展開が終わり術式が発動されるとその下から竜騎兵という象徴である竜が出てきてその上に奴は乗った。




