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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

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149/246

#149 許してはならない


「まさかとは思ってたが今戦ってるこいつは本当にアルドリア王なんだな」

「てめぇなんて術を創りやがったサピダム!」

「おお怖い怖い。じゃがこれは世紀の開発じゃぞ?一度死んだ者が何ら変わらぬ力で蘇り、術者の意のままに操ることが出来る。まぁ意識がないただの戦闘奴隷じゃが、それでも儂は遂に魔道の神髄に辿り着いたのじゃよ!」


 笑い声が響く、確かに死者を蘇らせるなんて術が出来たと知ったら世界規模で大騒ぎになるだろう。若くして死ぬ者も多いしもう一度でいいから会いたいなんて誰もが思う。死者蘇生は術の研究をしている誰もが夢を見ることだろう。だがそれを開発したとして使用者が相当な人格者でない限りは()()()()には使われないだろう。


「ほれそこのフィンシーとビースはあまりのことに涙を流しているではないか。その顔を見るため...そして私を拾って下さった魔王様へと捧げる最高の術を開発させたのじゃよ」


 キュミーとフォル、どちらの父親も魔王軍との戦いで命を落とし親が死ぬのはどんな時でも辛いものだ。こんな俺でも父親が息を引き取ったと聞いた日はまだ闘気の修行中の身だった。俺は魔力を全く闘気に変えることが出来ない程に平常心を保てなかった。

 元々味方だった人が敵に回るそんなことをあまり経験したことがない2人は甘えが捨てきれないのだろう。表情からは嬉しさを感じとることが出来ない。どうしていいか分からず困惑してとりあえず涙がこぼれてしまっているのだろう。


「おまえがどうして魔に堕ちたのかよく分かったわ」

「情などあっても戦場では何の役にも立たない、拳神から学ばなかったか?現にこうして目の前の敵を倒せるのに倒さないでどうにかしようと考えるふりをしているのだろう」

「俺が師匠から学んだことか...あの人は闘気の練り方と拳術を感覚でしか教えてくれなかったからな。その中でも直接教わったのは『それ以上に人との繋がりがあったからこそこうして俺は生きていけてる』ってな!」


 戦っていた坊ちゃんから距離を取り闘気ではなく、珍しく魔力を練り造形ランク4であるフレイムスパイラルへと変化させる。それを放つのではなく手に持ち鞭のように応用造形して持つ。それを坊ちゃんに向けて鞭を振るい身体を巻くように動かし拘束に成功させる。

 この力は嬢ちゃんが使うバーティカルソードを見て思いついた応用魔術で、まだまだ改良の余地はあるが込めた魔力が消えない限りは鞭が残り続ける。これで骨船長の救援に行け...る予定だったんだがな。


「ほぉ、その力はあのヒュードから学んだのじゃな。そしてそのまま加勢に行こうとしたのじゃな。劣等種なりによく考えつくものだがそう簡単にはいかないのが人生というものじゃ覚えておくんじゃよ。その劣等種の中でもお主は唯一我ら三魔将軍と戦える実力を持っている。それを新たに覚えるがよい」


 そんな俺のことを買ってくれてるのか、それとも()()()()()()()()()()()()()()()()ことがバレているのか。確かに坊ちゃんをどうにか行動不能にした後に加勢に行こうとしたのは研究好きであるサピダムならば読んでくるな。奴はあそこから降りてこないと予想したがここで骨、いや確実にシーウェーブを仕留めようとしてるんだな。


「ベルゴフ、こっちのことはいいからその罰当たりをどうにかしてくれよ。こんな術が今後も使われりゃ俺の存在価値がないのと一緒だぜ?」

「へっ、それならもっと腰入れて死ぬ気でやってくれよ。亡骸の先輩としてその新参者共をぶっ倒せよ、伝説の海賊シーウェーブさんよ!」

「そっちこそあのサルドリア帝と同じ血を継いでるんだからよ。もっと勇ましい所見せてくれよな!」


 はっ、言ってくれるな。俺が知ってる親父の姿はサルドリア帝国領の辺境で狩りの仕方を教えたっきり。もう家でゆっくりと過ごしてた姿しか知らねぇぞ。あんなんでよく師匠の前にサルドリアを治めてたもんだぜ。かと言って今の俺があの国を治められるほどの器があるとは思えないがな。昔の親父も見て見たかったもんだぜ。ん、いや待てよこの術ってそういうことなんじゃないか。


「サピダムお前この術で再現できる死者ってのは、一度お前と戦ったその上で死んでいる者に限られてるから今ここで俺のことを倒そうとしているってことなのか」


 その答えに対して返ってきたものは不敵な笑みと術弾。左右に弾くと地面から煙が上がる。そうだよな、不死の軍隊が作れるというなら俺らの世界で過去の英雄と呼ばれる人物。それをただひたすらに作り出せばそれだけで圧倒的な力の差が生まれるはずだ。その他にも条件があるのかもしれないが、今ここにいるのはこの前の戦いでサピダム達と接敵していたアルドリア王とヒルドリア王のたった2人だけだ。


「例え、我らが主ラ・ザイール様と言えども完璧とは言えない。この世は不完全なのじゃよ何かが足りても何かしらが足りなくなるそう出来ている。じゃが完璧の為に動くからこそ成長をし続ける、それはこの世に生きる全てのモノに適用されるのじゃよ」

「その考え方を持ってるならどうしてそんな醜いもんになったんだがね」

「何を言っておる醜いのはそっちじゃろう?成長を続けようとしてもいずれ辞めなければならない、続けることが出来ず歩みが止まるじゃろう」

「あ、何言ってんだ?終わりが一生来ないなんて考えたくもねぇよ。だから懸命に毎日を面白おかしく色々と豊かに生きるんだよ」

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