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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

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146/246

#146 乙女達


「・・・・ェン!」


 誰か呼んでるけど眠たいから寝ていた、い...って待って私今どこで寝ようとしてるの。寝ようとしていた意識を起こし目を擦りながら身体を持ち上げる。視界が開けてきてようやくサピダムの研究所にいて戦闘していたことを思い出した。


「良かった目が覚めないかと思ったよウェン」


 胸に手を下ろし安堵の息を吐くネモを見て私はすぐさま抱きしめてしまった。そうだ、ネモはクイーンに身体を乗っ取られて、全力で戦って私もネモも共倒れになったはずなのにどうして生きているの。


「あ、あのウェン、く、苦しい...」

「ご、ごめん!」

「良かったじゃない感動の再開でしょ、もっと強く抱擁してあげなさいよ」


 遠くから弱弱しく聞こえてくる声の方に視線を向ける。そこにはクイーンが倒れていて身体が徐々に崩壊しているのが見えた。


「クイーン!」

「ふふふようやく気づいたわね。ご覧の通り私は消えるからこの場所にはもう用はないでしょ」

「ねぇウェンいったい何があったの。部屋に入ったと思ったらいつの間にか床に寝ていた。ネモも横になってたし魔族は倒れてるし説明してくれない?」


 私はこの場所に入ってからのことを説明し始めた。まず私達はクイーンの{夢}に囚われてしまったが私だけはどうにか脱出した。そのままクイーンと戦い始めたがネモの身体を乗っ取り、ギリギリの戦いになってこの身諸共クイーンとネモを倒そうとした。とちゃんと説明し終えたがその上でやっぱりおかしい。


「ねぇでもその説明だと私達がここにいるのはおかしくない?」

「最後に何が起きたか説明しましょうかウィンガルとヒュードのお2人」


 {サクリファイス}を受けたはずの当の本人がそこにいて語ってくれるらしい。声を聞きやすいように念のため杖を構えながら近づいていく。途中で戦闘の意志がないことが分かりクイーンの隣に座る。改めて崩れる身体を見ると肌のあちこちに痛々しい傷が入ってるのに気づいた。


「何があったか教えてくれるクイーン」

「いいわよ。私はもう魔王軍とは呼べないことをしてしまった。サピダム様や助けて下さったキング様には申し訳ないけど全部話すわ。まずごめんなさいね、ネモリアあなたの身体を好きに使ってしまってどこか痛いところはない?」

「いえ特にどこにも異常はないですし、少し身体が軽くなったような気がします」

「そうならよかったわ。結論から言うとウェルンあなたが放とうとした{サクリファイス}は私が吸収して爆発を阻止したわ」


 吸収!?確かにソールもそんなことが出来るけどでもそんなことをすれば...


「そう私は魔の力を使う魔族であなたは聖の適性を持つヒュード。乗っ取った状態を保つことが出来なくてネモリアの身体から出て発散しようとした。それは叶わないで私の中で爆発した」

「なんでそんな助けるようなことをしたの!?」

「・・・私もそんな風に命を懸けてとある1人の為に力を使ったことがあるのよ。でもそれで得られたものは何もなくていつ間にか私は魔族になっていたの」


 その言葉を聞いて少し胸が痛くなった。少し前に自分がやろうとしていたことを振り返ってみた。生きて帰れないそれがどれだけの人を悲しませるかを考えていなかった。確かに状況は良くなるかもしれないけど、もしソールがこのことを知ったらどうなる?ソールのことだ、無茶なことをしたに決まっている。そうなってしまっては私が命を懸けた意味がなくなってしまう。


「あなた達で私は人だった時のことを、あなた達と同じで恋をしていたことを思い出したの。魔族になってからどうして常に最も美しくあろうとしたのかもね」

「クイーン・・・」

「いいのよ、私はいずれにせよ倒されていたのだから完敗よ。本当ならあなた達と共に倒されていれば死後に褒められていた。でもこの感情を思い出してしまったら助けるしかなくなるじゃない」

「感情ですか?」

「あなた達はそれぞれ叶えられるといいわね。例え叶えられるのが片方だけだとしても恨まないことをオススメするわ、あぁネモリア一つだけ」

「は、はいなんですか?」

「子供五人は流石に頑張らせ過ぎよ」

「!?ど、どうしてそのことを!!」


 弓を引き魔力を込めて矢を絞り全力でとどめを刺そうとするネモを止めにかかる。クイーンはそのまま笑顔で崩れさっていった。どんな夢を見ていたのだろうか気になるが教えてくれない。

 それにしても子供か...クイーンがもし魔族ではなく、思い人と生きていたならば私達ぐらいの子供がいたのかもしれない。魔王軍との戦いが終わったら私も結婚したりとかして子供も作って幸せに暮らせるのかな。頭の中で子供を抱えソールと一緒に見る姿をそうぞ、って今はそんなことを考えている場合じゃない!


「ネモ行くよ!」

「う、うん早く戻らないとね!」


 そそくさと私達は部屋を後にして辿ってきた道を戻っていく。少し時間をかけてしまったが他のみんなは私達よりもしっかりした人達だからきっと大丈夫のはずだ。一つだけ気になることを言うなら私達がここで無事に研究所を制圧したとしてもソールのことを気にしなければならない。ソールも勇者だし私達が本当に危ないところで助けに来てくれるそう信じてる。

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