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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

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145/246

#145 研究内容

 胸が痛い、薄い意識の中でそれだけがはっきりと認識できた。ただ痛い、それだけだったがようやく辺りを認識できるまで意識が戻ってきた。視界には鉄格子、足と手は枷をかけられて魔力を封じ込まれている。どうやら自分は捕まっているようだ。確か魔獣の群れに襲われていた人達を助けて...


「はっ、キナップさん達は!?」

「なんじゃようやく気付いたと思ったら騒がしいのぉ勇者よ」

「お前は...」


 格子の向こうから声をかけてくるのは今まで何度も戦ってきた三魔将軍叡智のサピダムだった。長杖で何やら怪しい術式を展開しているようで真ん中には顔を隠されて縄で縛られた誰かがいた。


「まさかここを攻めようとしていたとは思いもしなくてな。スカブの連絡が無ければ危うく研究成果が無くなるとこじゃったわ」


 スカブ?確かこの雪山で狩りをしている一家の大黒柱の人だ。今の言葉のおかげで何故この雪山にいるのかという疑問が解消された。この雪山が紫ランクに上がるための舞台となっているが過去数年で行方不明者が多い理由が。自分と同じようにこの一家の所で一休みするなど、なんらかの理由で魔王軍に捕らえられてしまいここに連れてこられて命を落としているのだろう。


「それで自分はまんまと掴まったって訳ですね」

「本来なら男は皆魔獣の餌としたりこやつみたいに実験体とするのじゃがな。おぬしは別じゃ、ここで捕らえておくことで我らが優位に事を運べるとみたのじゃよ」

「サピダム様お持ちしました」

「おおご苦労、それをそいつに与えてやりなさい」


 お盆を持ち給仕服に身を包んだキナップさんとマーチェさん。自分の横まで来ると自分の口元に食事らしきものを運んでくれた。2人とも家で話していた時に比べて心なしか覇気がないように感じる。味はあまり良いものではなかったがお腹は空いていた。何よりもここからどうにかするためにもちゃんと食べた。


「しかしよくこの状況で食べられますねあなたも、そんなに食べるのならば毒でも仕込んでおくべきでしたね」


 考えて見たら簡単なことだ、毒が入ってるかもしれないのに不用心に食べてしまったな。こういうところに気をつけないから不利な状況に陥りやすいんだな。


「まぁただ捕らえられそこで時間を使っているのも暇じゃろう。今から面白いものを見せてやろうではないか」


 サピダムはそう言うと術式から離れ杖を構える。無数の黒い手が飛び出してきて真ん中にいる人物へと次々に刺さっていき苦しい叫び声と共に変化が始まった。全身が段々と黒ずんでいき魔族と大差ない肌色に変化し筋肉質なものに変わる。なんと頭からは見覚えのある耳が生えてきた、術式の真ん中に新たに表れた人物はこの前の戦いで亡くなったアルドリア王だった。


「長年の研究の末に完成した死者を甦らせ、儂の手足として再利用する{リバース}はどうじゃ?」

「まさか他の人も呼びだせてしまうのか!?」

「もちろんじゃよ、儂と戦いを一度でもして尚且つ死んでいる。それを{魔力源}を使って全く同じ力を再現し今度は仲間にしてしまう。得しかない最強の魔術じゃよ!一つだけ欠点があるとすれば素体に使う生贄は生者でなければならぬ点じゃな」


 余りの出来事に目を奪われていたが隣にいた2人の様子が変わっていた。何故か顔を背けて震えているキナップさんとお盆を落として何故か涙を流しているマーチェさん。まさか...


「お爺ちゃん・・・」

「サピダム貴様!!」

「落ち着け勇者よ。老い先短いヒュードをこの世に貢献できるよう、儂が生まれ変わらせたのじゃぞ?ただただ無意味に朽ち果てて行くよりもよっぽど良いことではないか」

「そんなことあるか!」


 アルドリア王はこちらに向かってきてキナップさんの腕を掴み...顔が歪んで大口になり腰から上を嚙み千切った。その光景を見てマーチェさんは腰を抜かしている。


「素体が痩せすぎいてお腹が空いていたようなのでな。丁度良い肉があったから食べるように命令させてもらったぞ。おやまだ本調子ではないようだからこちらも頂こうではないか」

「う、噓でしょ...お母さん?お、お爺ちゃんやめてよ...」


 自分が出来る精一杯の抵抗で力を込めるが鎖が鳴るだけで壊れる気配がしない。次の獲物目掛けてゆっくりと進んでいくアルドリア王、マーチェさんも後ろに後退している。壁に辿り着いてしまい距離が段々と詰められていく。手の届きそうな目の前でまた命が無くなるのか?一体どうすれば彼女のことを助けられるんだ?






「待てサピダム」

「うん?なんじゃまさかおぬしが代わりになるとか言うのか?」

「そうだその子を生かすならお前の配下になろう」

「ほお、つまり魔王軍になりたいということか?良いのかおぬしは勇者ではないのか?」


 確かに今、自分が言っていることがとんでもないとは分かってはいる。武器は取り上げられて竜剣術を扱うことも出来ないし、勇者の力も満足に使えないのに加えて魔の力を解放できない。だがこの二人、サピダムとアルドリア王には勝てないだろう。まだ諦めているわけではない、生きていればチャンスはあるはずだ。


「ふん良かろう」


 杖を振り術式を発生させるとマーチェさんは消えた。おそらくどこかに飛ばされたのだろう。安全な場所に行ってることを願うしかない。


「そうじゃなまずはおぬしの鎖を解かねば動けぬよな」


 サピダムが近づいてきて正面で止まっ...!?頭を掴まれ嫌な感じが流れてくる。これは魔力だ、いつも自分が使っているものとはまるで質が違う!


「ああああああ!!」

「おぬしに眠っている魔の力をわしが解放してやろうではないか!」


 サピダムの力に抗おうとするが黒く塗りつぶされていく感覚がする。みんなごめん、でも後悔はしてないよ。大丈夫、今のみんななら絶対に勝てるしきっと自分のことをどうにかしてくれるさ。

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