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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

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144/246

#144 覚悟の聖術

 ソールやネモが一緒に飛んで戦ってるのを見ていいなーと思ってた。今空中戦を実際にやれてる、こんな高速で飛び回っていながら互いに攻撃を放ちながら戦ってるなんてね。私こんなに戦えたんだな、二度目の{全開放}をして身体に魔力が満ちているけど腕とか脚が激しい痛みに襲われている。

 ソールも竜剣術を放った後によく腕とか抑えてたけどあれよりもっとひどい症状が今私にも出ている。魔力が切れたら完全に動けなくなるんだろうな。でもそれくらいの覚悟がないと私はネモの身体を奪ったクイーンのことを倒せない。

 何かきっかけを作らなければこのまま私だけが消耗して負けてしまうだろう。{バーティカルソード}と牽制に使っている{ライトボール}で並の相手。今この時点で倒していてもおかしくはない。相手は常に空を飛んで遠距離から戦うことに長けた射手。生半可な術壁では貫通してしまう鳥弓術の使い手だ。


「そろそろ勝手が分かってきたわこうすればいいのね!・・・{翔鳥(フライ)}!」


 魔力で具現化された鳥が高速で飛んできた。展開していた厚めの術壁を容易く砕き左腹部を貫通してしまう。今のはネモが現在使える中で最も単発威力が高い{翔鳥(フライ)}だ。急いで地上に降りクイーンの周りにウォールを球体状に造形しながら展開して閉じ込め回復に集中する。これで少しだけ時間が稼げっ!?いつの間にか正面に回り込んでいたクイーンに首を締め上げられてしまう。


「ど、どうして確かに閉じ込めたはずなのに」

「あなたが見ていたのは幻、あなたが相手しているのは仮にも魔族なのよ使えて当然じゃない」


 そうだった、彼女はウィンガル族であって魔族でもあるから魔の力があって幻も使えるんだ。そのことを完全に忘れていたとはいえなんて精巧な幻で見事に騙されてしまった。傷は塞がったが現在は首の周りに魔力を集中させ呼吸を確保しているがこのままで本当に不味い。


「もうあとは時間の問題なかなか楽しかったけど残念ね。この子もあなたももう仲間には会えないわ」


 その言葉を聞いて何とか抵抗しようとするが身体の内側から魔力が溢れてこない。遂に{全開放}も効果が切れてしまい全身を激痛が走りだす。それでも何とか生きようとクイーンの手を振りほどこうとするがまるで岩の様に硬く重い。首が絞まり始めたのか息が苦しくなってくる。


「こんなに楽しませてもらったんだもの遺言ぐらいは聞いてあげるわ。さぁ最後の言葉を言いなさい」


 拘束が若干緩むが首を掴まれていることに変わりはなく状況は変わらなかった。ごめんね、みんなやっぱり私じゃ駄目みたいだ。ソールやベルゴフさんみたいに前で戦って私達の代わりに傷ついて守ることも出来ない。キュミーやフォルちゃん、そしてネモみたいに前の2人を助けながら戦闘に貢献出来ないもんね。

 私はただ皆に守られて生かされるただそれだけだった。勇気を振り絞って戦っても良い方向に傾いたことは一度もないやっぱり私は足手まといだったんだね。必死にみんなの為と思って聖術を磨きに磨いた。ミュリル様にも指導してもらったのにこの有様。せめてネモだけでも解放してあげたいけど私は勇者じゃないからそんな奇跡も起こせない。私はずっと何をしていたの?


「何も言わないのね本当にあなた達は惨めね。夢、希望、そんなものに縋るから弱いのよ。そんなもの捨ててしまえば楽に強くなって自分のやりたいことが出来るのよ?」






「・・・・・・・・」

「ん?今何か言ったかしら」

「何が楽しいのそれ。他者がいるから楽しさや喜びはさらに良くなる。1人でやりたいことをやってもその先には何もなくて楽しさも喜びも感じられないよ」


 まだだ、まだ最後の手があったミュリル様に教えてもらったもう一つの技が。どうやるかは分からないけどきっとこうすれば出来るそのはずだ。でもこれを使えば私は確実に死んでしまう...でもそれで倒せるなら。うん、いいよね私は足手まといなんだし。


「まだなにかやる気ね」

「なんで分かったの」

「諦めているならこの手は何?状況をどうにかしたいからじゃないの?まだ放そうとしないじゃない」


 そっか、でももうこれしか手はないんだ。ごめんねネモ、あなたのことを助けられなくて私もあなたと一緒に行くよ。やり方は分からないはずなのに{全開放}をした時と同じく何故かイメージだけははっきりとある。身体の中心に僅かに残った魔力を集中させお湯を沸かすように濃くしていく。


「あなた!?ま、まさか、{サクリファイス}まで!?」


 {サクリファイス}、身体の内側で魔力を暴走させ発動者諸共絶大な威力の爆発攻撃を放つ。残っている魔力が少なければ少ない程威力が増す性質があり今のこの状況はうってつけ。これを発動すれば私だけでなく、今目の前にいるクイーンもただでは済まないし身体を乗っ取られているネモも...


「もうこれしかないのあなたを倒せるのはこうでもしないと私達は進めないから」

「や、やめなさいそれだけはダメよ!」

「怖気づいたの?この身を犠牲にしてでも私はあなたを倒すの!」


 なんだか熱くなってきて私の身体が光っているようないないような。ここまで来たら止められないみたいだ絶対に成功させる!みんなあとは頼んだよ私とネモは先に行ってるよ。唯一心残りだとするならもっと世界の美味しいもの食べたかったな。あぁ段々と意識が遠くなっ、てき...た...な...

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