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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

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141/246

#141 望んでいた景色

 あれここはどこだっけ?でもなんだか心地がいいからこのまま寝ていよ・・・


「・・いウェ・・!」

「こん・・ころで寝・・と風邪引・ぞー」


 なんだか懐かしい声が聞こえるような...ゆっくりと目を開けるとそこは村近くのよく来る花畑の真ん中にいた。辺りを見渡し状況を確認すると私は息を吞んだ。ソールと共にいる人物をじっと見続け涙が流れ視界がぼやけるがその人物に向けて駆け出し抱きつく。


「コルロ!良かった、無事だったんだね良かった、良かったよぉぉぉ・・・」

「な、ど、どうしたんだウェルン?無事って俺最近大きなけがをしたか?」

「だ、だってA級のサタニエルに...」


 頭の中で彼が死んだ時のことを思い出す。勇者の紋章を巡ってA級サタニエルと戦いをしてソールと私のことを庇ってその胸を貫かれたはずだ。コルロの服を捲り上半身を見るが傷らしい傷はついておらず筋肉質な良い身体だった。


「あーもしかして悪夢を見ててその延長戦でこんなことをやってるならいい。だがいきなり人の服を脱がせるのはやめてくれねぇかウェルン?」

「ご、ごめんなさい!そう夢、夢だったかも!」

「びっくりしたよ、ウェルンいきなりコルロに抱きつくわ服は脱がせようとするわ。そういうのをやるならせめて自分がいない時にやってくれよ...」

「い、今のは気が動転してたの忘れて!」


 そうだ、私は2人の訓練をこの丘から見ていて思った以上に暖かったからウトウトしていたら寝てしまったんだった。しかもあんな生々しい夢を見るなんて...何かを忘れているような気がするけど何だっけ。

 2人共訓練が終わったとのことなので村に帰るがやはり何かが引っかかる感覚がする。いったい何がおかしいと言うのだろうかこれが私の日常のはずだ。突然頭痛に襲われあまりの痛みに動きを止める。その場に止まってしまいコルロとソールが駆け寄ってくる。何か声を掛けているが何も聞こえない。

 三魔将軍サピダムと遭遇しフレイペントの麻痺ブレスを喰らったこと。巨大なゴーレムの前からとてつもない程眩い光が生まれたこと。戦場の極星ことローガ・ビースがワンクネスという魔族に転化し絶体絶命の事態の時に助けに来てくれた半覚醒状態のソールの姿。魔大剣が胸に突き刺さるエルドリア王とそこに駆け寄る私の親友ネモの姿。キュミーを肩車して城下を巡りまるで種族は違くなければまるで親子の様に見えるベルゴフさんの姿。雪が崩れ谷底に落ちていくソールに手を差し伸べる私。


「だ、大丈夫?ウェルン」

「やっぱり体調が悪いみたいだな村に帰ったら休...」

「ううん大丈夫、私やることを思い出したから先に帰ってて2人とも」

「やること?それならコルロと自分も一緒に行、」

「やっぱりどんな時でもソールだね。だから私はあなたのことが大好きになったんだよ」

「お、こんなところで告白か?いいねーお2人さん!」

「また元気な姿が見れるなんて思ってもみなかったよコルロ。あなたの敵は絶対にとるから待ってて」


 全てを思い出した私は覚悟を決めて元来た道を駆けていく。花畑に戻れることはなく森を抜ける気配がなかった。目を閉じ何かおかしなところがないか魔力の流れを感じ取る。一箇所だけ何かが漏れ出しているようなところに目掛けて{バーティカルソード}を放つ。すると自分が見ている景色そのものにヒビが入り割れて別の空間に辿り着いた。


「あら、戻ってきちゃったの?残念ね。あのまま見たいものだけ見ていればいいのにどうして戻ってきたの?」

「見たいものだけが人生じゃないし楽しいことだけ見ていたらつまらないんだよ?」

「ふっそうね、まぁでももう1人の彼女はまだ戻ってこないところを見るとそうでもないのかもね」


 魔族が見る方向に視線を向けるとそこには薄紫色の球体の中で目を瞑り笑うネモの姿があった。私もあんな感じで笑っていたのかもしれない。けどそれ以上にこなさなければならない使命がある。杖を構えバーティカルを出現させ剣の形に造形し私の後ろに複数本構える。


「例えあなたの能力が人に幸せを届けるものだとしても、私達は前に進まないといけない。だから私は夢を見ていられない邪魔をしてくるあなたを倒す」

「あなた特別な力を持っているのね。私の個能{夢}をかけて逃れるなんて中々精神力が高いのね」

「私はヒュード・ウェルン、あなたの名前は?」

「そうね、この能力を破ったあなたには教えてあげるわ。キング様によって転化してもらい最上の美を持つことが出来た愛に生きる淫魔(サキュバス)。そして私はクイーン、あなたみたいな若い子には負ける気はないわよ」


 とても性的な魔族だ、ここにソールがいたならもしかしたらクイーンの胸を凝視していたかもしれない。遂自身の身体に視線を落としてしまった、いや特に私怨が込められてるわけじゃない。

 どうして私の周りの女の子はみんなスタイルがいいの!ネモだって...アンクル様やフィオルン様やミュリル様、それにジューグラさんだって...少し前まで子供だったキュミーとフォルもなんであんなに...

 何が何でも倒そう、何がとは言わないけどこの魔族だけはソールと戦わせるわけにはいかせない。虚しさ、苛立ち、悲しさ、悔しさ、と色々な感情が私の中でうごめき続けている。今なら私だけで戦えるような気がする。待っててネモ今助けてあげるから。

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