#14 裁判長(ジャッジマスター)
「本当にありがとうございました!ソール殿、ウェルン殿そして・・・?」
「うん?あぁ俺のことか?俺はベルゴフって言うんだぜ爺さんよ」
「ベルゴフ殿もありがとうございました」
自分達の絶体絶命のピンチを助けてくれたこの人は冒険者のベルゴフさん。この人はたった1人であのダンジョンを走破して最深部までたどり着き、魔力切れとはいえ巨大なフレイペントに一撃でトドメをさした。手負いとはいえ自分達が苦戦した歳を重ねた赤ランク相当の蛇竜種を倒したのだ。相当な実力者だろう。
いったいランクはどれくらいなのだろうか?そんなことを考えながら自分達は村を後にして王都のギルドへと向かっていた。村長さんが馬車で送ってくれると言うので甘えさせてもらうことにした。ウェルンはこの前の戦いの疲れからぐっすり寝ている。正直自分も眠いが冒険者同士挨拶しなければ。
「あ、あの・・・」
「うん?あっそういやお前ら見かけねぇ顔だけど新人か?」
「はい!自分は数日前に冒険者になったばっかりです!」
「にしちゃあ強いな白とは思えんな」
「そういうベルゴフさんのランクは?」
「ベルでいいよ、ったく最近の若いのはかしこまってんなー」
「いやこれは癖で・・・」
「まぁいい、ランクは黄、色々腕試しでぶっ倒してきたからな!」
そう言って橙色のカードを取り出している。自分も自己紹介のためにってあれ?カードの色が若干黄色っぽくなってるような・・・
「おおこりゃもう上がる直前じゃねぇか」
「えっ?そうなんですか?」
「おうよあとは探索ポイントをギルドから貰って綺麗な色に変わるってこったな微妙な色合いしてんのは実力ランクだけ高いって証拠だからな」
「じゃあ橙色ってことは・・・」
「まぁあれだ探索と実力ランクの色が混じって判定しづらくなってんだよな!ガハハハハハハ!」
「ああそうなんです、ね、す、すいません!」
「疲れてるなら王都まで寝てていいぞ着いたら起こしてやるから」
「そ、そうです、か、それならお言葉に甘、え、て...」
「すぐ寝ちまったなそんな眠かったなら寝てていいのにな見張りは数時間前まで寝てたおじさんだけで充分だっての、まぁしかし...遂にこの時が来ちまったか・・・」
「うん?お客さんなんか言いました?」
「なんでもねぇよ!ちゃんと前見とけ村長!」
********************************************************
「それは大変でしたね、本当にお疲れ様でしたそしておめでとうございますこれであなたも黄色ランクですよ、ではまたお願いいたします」
色が変わったギルドカードと報酬を受け取った。受付の人に簡単なクエストでなぜすぐ戻らなかった、と聞かれたので今回の旅で起こったことを一部内容を伏せて伝えた。村が魔族による被害にあったことと、ダンジョンを制覇したことの二つだ。伏せて話したのはもちろん確証がない魔王関連の話だ。カードの裏面にはサタニエルキラーの他に蛇竜殺しのA級称号が増えていた。あとあれからなんでかは知らないが、いつの間にかベルゴフさんともパーティを組むことになっていた。仲間が増えるのはいいことなのだが、本当に何故なのだろう?理由を聞いたら『そんな細けぇこと気にしてるとこの先やっていけないぞ!』とのこと。
通りに出ると何やらいつもより騒がしい気がした。揉め事か?人の集まるところに行くとチンピラと女の人が言い争っている。会話内容から察するに子供がぶつかってチンピラが怒鳴り泣いてしまったらしい。てかあの女の人も随分と気が強いな正論を投げまくって言い負かしている。あのチンピラ相当頭にきてるなって、あっ、短剣を抜いた!?流石に止めに入ろうとした刹那、もう既に奴の背後には黒鎧の人がいつの間にかいてチンピラの腕をひねりあげられていた。
「い、い、痛たたた!誰だてめ、ってゲェ!?」
「ただの言い合いまでなら見過ごそう、だがこんな人の往来が激しい所でそんな危ないものを取り出して秩序を乱そうとしたな貴様は牢獄送りだ」
「ひひぃ!!許してくだせぇつい出来心なんです!!」
「おいこいつを牢に送れ」
「はっ!了解しました!おい!大人しくしろ!!」
もう周りに野次馬の類はなく通りは賑やかさを取り戻していた。これも日常茶飯事なのか。今の人達はこの国の兵士ではないな、あんな黒鎧見たことがないぞ。ウェルンとベルゴフさんもギルドから出てきたので聞いてみる。
「ソールおまたせーってどうしたの?」
「なぁ聞きたいんだけどさ、王国の兵士達と違う黒鎧の人達がいたんだけど・・・」
「あぁーエクスキューションの連中のことか?」
「えくすきゅーしょん?」
「そっか村じゃ見かけないもんねじゃあ帰りながら説明するよ」
エクスキューション、それは世界の秩序を守るために結成された。自警団で所属するものは黒鎧と黒兜を装着しており、それぞれの得意な物に合わせて他の物資を支給されるらしい。各国からの信頼が厚く、中でも上の階級の人は国の許可なくして罪人とみなした者を牢に入れられる権限があるという。にしても本当に黒ずくめの集団だったなさっきの人達も。そういえば明らかに装備に差があったな、紋章が描かれた黒マントを羽織っていた人物がいたことを話す。二人は驚いた表情でこちらに振り向いた。
「「それは本当!?」か!?」
「う、うん」
「そりゃあどえらい奴がこの国に来ているもんだな」
「あのねそのソールが見たって人ね、実はエクスキューションを取り仕切るジャッジマスターガッシュ・バグラスって人なの」
「へ、へぇーそうなんだでも、その人がどうしたの?」
「要はそいつがいるってことはなんか一大事なんだよ世界最強と言われるバグラスがこの王都に来てるんだぞ!」
「その人ちなみにどれくらい強いんですか?」
「強さはね、私も実際に見たことは無いんだけど国一つと対等なんだって」
「国一つ!?」
なんだそのデタラメな強さは!?たった1人で国と戦えるのか。言われてみれば確かにチンピラの腕をひねりあげる時全然姿が見えなかったな。そんな話をしていたら宿に着いたのでそれぞれ部屋に別れる・・・やっぱりサピダムとかいうやつが言ってたことは本当なのか。勇者ゴレリアスが倒したはずの魔王が生きているのか?そんなことを考えていたらまた眠気に襲われそのまま眠りについた。
********************************************************
「以上が調査結果です」
「ジャッジマスターよご苦労だった、しかし遂にこの時が来てしまったか」
「はい、そして村に保管されていたペンダントも持ち去られておりました」
「なんと!あのペンダントを奪われてしまったのか?!」
「いえ奪われた確率は低いかとあの村には魔力が開放されたあとがありました」
「それはつまり勇者が覚醒したということか!すぐに捜索をしなければならな、」
「いえグラス王、心配には及びませんもう勇者は見つかっておりますこちらをどうぞ」
と言って資料を差し出した。そこにはとある人物についてまとめられたレポートだった。グラス王はその資料にしばらく目を凝らして顔を上げた。
「この情報は確かなのか?」
「確率は高いかと、勇者ゴレリアスと同じ剣術を使いあの村の生き残りです」
「ふむふむソールと言うのか、ならばやることは一つ!兵士長!この者を探して連れてまいれ!」
「はっ!了解しました!速やかに取り掛かります!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
皆様いかがお過ごしでしょうか、どうも新村夜遊です
ココ最近は描ける時間が多くお話が進みどんどんと進んで
新しいキャラ達が出てくるようになってきました
ですがまだ物語は始まったばかりここからどういう展開になるかは
楽しみに待っていてくださいまし、ネタが切れない限りは
どんどんと更新していきますのでよろしくお願いいたします
2020/04 新村夜遊




