表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/246

#139 数あるうちの一つ

 2体は剣と盾を構え突っ込んでいき斬りかかると靄の様に消えた。こいつは魔の扱いに長けていると使える幻術か。流石にサピダムに守りを任されるだけの実力はあるようだな。

 今出しているこの2体のスケルトンは俺が前までずっと出していた疑似的な海賊団とは実力的に見ても上だ。知能がないため一度幻術にかけられたら幻を攻撃し続ける。術にかけられた2体を戻し自身の身体に{操人形(マリオネット)}をかけ宙に浮いて辺りを見渡す。


「ネクロパイレーツにはそんな力はない。ということはお前さんの魔能じゃな?」

「勘が鋭い爺さんだけどよこれからはもう俺本来の戦い方だから覚悟しておけよ」

「フォフォフォいいのか後ろの小童を使わなくても?」

「使う?この能力はあいにく俺専用でなあの2人にはかけられねぇんだよ」


 今王女達を物扱いしたな。魔族ってのは他の種族より優れてると思って、見下す傾向にあるようだがこいつだけは倒した方が良さそうだ。使うと魔族に転化する術具を作るやつだからな何をされるか分かったもんじゃねぇな。

 レイピアを構え視界の中にいる幻ではなく本体がいるであろう場所へと突きを放つ。突然姿を消しまた違う場所に現れていた。どういうことだ?そこにあったはずの俺と同じ魔の力は別の場所へ瞬間的に移動していた。そして大量の術のつぶてが飛んできたのでマントに魔の力を込めてかき消した。


「ほぉこれも防ぐか。生前はかなりの実力者じゃったようじゃな」

「当たり前だろこんなとこに閉じこもってなければお前も知ってるだろうよ」

「なるほどな、じゃがこれならどうかの」


 四方を突然ウォールで囲まれたが全く動じず、自身の辺りの地面を盛り上がらせて頭上を守ると土が破裂し砕け散る。そう辺りに見えたウォールは幻で本命は巨大なボールをぶつけようとしていた。

 守りを任されるのも分かる、これなら確かにこいつを任せるな。幻と魔術を合わせる巧みな攻撃、これは俺も魔族に転化したからこそ魔の力を感じ取れてるからどうにかなっている。この種に気づかれてしまえば奴がもし他に術適性持っていたら今の様に防げないだろう。


「なかなかやるの。ここまで我が魔道が通じぬ相手はサピダム様以外に初めてじゃ。幻が使えぬ貴様にどうして効かぬのか研究させてもらえないか?」

「その代わりに封印解いてくれるなら別にいいぞ?」

「フォッフォッフォッそんな冗談を言っておるが大丈夫か?ぬしでないものを狙われるとは考えていないのか?」

「{ドーム}はいかなる攻撃も通さないのは魔族なら知ってるだろう?」

「なるほど魔について正しい知識を持っておる。となればこれはどう防ぐ」


 杖をこちらに突き出すと辺りから植物が伸びてきて反応が遅れマントが剝がされてしまった。今のがやつの魔能か。俺が使う物などを操る{操人形(マリオネット)}とは違う{地形操作}もしくは{植物操作}か。いやそれにしては操作速度が速すぎるなまさか!?


「個能まで持ってるのか!?」

「まぁ近いものじゃよ種族特有の能力。植物は我が手足じゃからなこんなことも出来るぞ」


 作り出したのはもう一体のキングを模した彫刻だ...!?先程と同じように枝がまとまり手を形成し杖を持った魔族となった。あれは幻ではなく紛れもない本物と同じ魔の力を持つ意識のない分身体だ。

 そんなことが出来るわけが、いや出来ても不思議はない。俺も似たような力を持っているしなんならこの力を持つに至った元はこいつではないか。


「ようやく理解したぞ。おぬし何らかの方法で儂の魔の力が分かるのじゃな?」


 遂にバレたとなると奴が繰り出してくる攻撃は...地面から鋭利な根とツタが飛び出しこちらに向きを変えた。既に違う力が働いている為{操人形(マリオネット)}では操れず、こちらに襲いかかってくる触手攻撃のような根とツタをレイピアで処理をする。

 流石にキリが無くな...レイピアを弾かれ直撃し、壁へと吹き飛ばされ一部の骨が折られてしまった。普段ならばこれぐらいすぐに再生するはずなのだが治る気配がしなかった。


「どうして再生しないんだ!?

「それは簡単じゃよ儂が根とツタを介して吸収、いや儂の元に戻しておるだけじゃからな」


 今の発言と状況で転化する際に使った{死霊の魂}の制作者という話が本当だと確信した。冗談ではなく俺に似た能力で全くの上位互換のものを持つ。たった一撃喰らっただけで魔力を吸収され弱体化させられてしまった。

 俺には相手が悪すぎるな、だが他の2人が戦えない以上どうにかしなければならない。どうしたものか、背後から見覚えのある水術が放たれる。分身体に直撃し大木に戻り本体の方に斬りかかり刃は空を斬った。


「海賊おじさん!大丈夫?」

「フォル王女、ヒュリル王女!助けてくれるんだな」

「うん、あの敵を倒して船長が消えちゃうのはいや。だけどそれ以上に何もしないで待ってるなんて絶対に嫌だ!」


 先程戦意喪失していた2人はどうやら迷いを断ち切ってくれたようだ。どんな時も決断は大事だ、それも早くて自信があればあるほど尚更良い。俺が見るに2人の太刀筋に迷いはない、本気で倒す気になってくれて良かった。

 過去に同じような選択を迫られた時何も出来なかった。最愛なる人を失い海にだけ生きる男となった。この姿になってから一度も寝ていないがもし夢を見ていたら永遠に悩まされていただろう。それほどの後悔が残っていた。何かを失う代わりに何かを守るための戦い、この2人はそういう選択をこれからもしていくだろう。そのうちの一つが今日に過ぎないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ