#136 研究所
はしごをゆっくりと登り背後から監視役の魔族を強襲する。術でボールを造形し他の監視塔にいる人たちに制圧したことを伝える。他の塔がある方向を見ると青色のボール、黄緑色のボール、赤色のボールが見えた他の皆も上手くいったようだ。合図に合わせて監視塔の横にシーウェーブさんの迎えの船が出現しそれに乗り集合地点へと向かう。
「合図が見えたってことは制圧が完了したんだな?」
「あんなの朝飯前だろ。だが後ろから襲うのは嫌なもんだよなやっぱ正面から戦いたんもんだな」
「おじちゃんこのあと戦うかもなんだから落ち着いてよ」
「そうだよ、だから信用がないんだよ!」
「そうかも知れないなガッハッハッハッハ!」
そんな話をしながら私達は研究所に突入していく。雪山から景色が急に変わり研究所らしい不思議なものが並ぶ道中を進んでいく。昇降機がある部屋に辿り着きそれとは別に三方向に分かれたどこかに続く部屋に辿り着いた。
「高度な封印術ですね動きませんね」
「ということはこの別れた部屋の先に封印が施されているのかな?」
「じゃあここいらで分かれて探索と行くか俺はこっち行くぞ」
「フォルちゃんこの部屋行こう!」「うん!いいよー」
「ネモじゃあ私達はこの部屋に」
「ええそうですね!」
「俺はフォル王女とヒュリル王女に着いていくぞ。何があるか分からないからな」
赤色の扉は私とネモ、青色の扉にはフォルとキュミーとシーウェーブさん、そして緑の扉にはベルゴフさんが攻略することになった。この先に昇降機の封印の手がかりがあることを信じて皆分かれていった。
襲い掛かる魔像を叩き壊しながら前に進んでいく。いや自然と1人にされたもんだな、人数の割合で言うなら普通は部屋数に対して2人ずつが妥当だろう。シーウェーブが王女達の警護に行ったことで自然と1人になった。
「俺も一応王族なんだがな。まぁ俺は強いからって判断だろうけどよ」
あの場の誰も人数分けに異議を唱えなかったてことはそれだけ俺の実力をみんなが信じてくれてる。この前の三魔将軍と戦った時みたいにまた全力で戦いたいものだが、そんな相手がいるとは思えない。狂猛のフュペーガも全力を出していないだろうしそれは俺も一緒だ。憶測だがその気になれば相討ちまでは持って行けるとは思っているが実際は分からない。
「おっここが最後っぽいな、だがこの作りどっかで見たことがあるような...」
先程まで研究所だったがこの部屋に近づくにつれて建築様式が変わっていき見覚えのある光景に辿り着いた。扉を開けるとそこには道場が広がっていたのだ。辺りの建築様式に見覚えがあったのはこれはサルドリア帝国で使われている建材だからだ。
その部屋の真ん中で座禅をしている魔族を見てすぐに奴が拳術士であることに気づいた。この部屋に充満している禍々しいオーラは魔力ではなく闘気だ。これが全て奴から漏れ出たものならば相当な手練れだ。
「やはり来ましたね、サピダム様が言っていた通りです」
「あぁなんだ?俺らが来るのはお見通しだったてわけか?」
「ええその通りです。その上でここで待つように言われ長いこと気を練っていました。ようやく来てくれて助かりました。退屈で死んでしまいそうだったんでね」
「なら惜しいことをしたな痛い思いをしないで済んだかもしれないのによ。運の尽きってもんだなお前さんもよ」
奴は立ち上がり壁にかけられたガントレットとグリーブをつけ始める。流石に素手で相手するには荷が重いと判断しこちらも英具{オールブレイカー}を装着する。元々は師匠の英具だが力を継承した時にこの英具も継承し今日初めて本気の力で使用する。
この英具を付けたマイオア・フィーザーはその拳と脚でこの世で砕けぬものはないと言われ、その拳を振るったため拳神と呼ばれるようになったのだ。いざ装着すると自身の拳、脚じゃないような感覚に一瞬襲われた。その違和感は瞬時になくなり身体の一部のように動かせた。拳を固めてガンガンとぶつけて火花を散らして感触を確かめて構えをとる。
「それじゃ拳術士同士だしよ自己紹介と行こうじゃねぇか。俺は拳神流のマイオア・ベルゴフ・サルドリアだ」
「あなたが我が師が褒め称えていたマイオアですか?」
「我が師だぁ?誰のこと言ってんだ?」
「私は狂猛流のジャックと申します。あなたには恨みはないですが偽勇者に恨みがあるのでね。存分に暴れさせてもらいます」




