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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
運命の雪山

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133/246

#133 魔狼

 だが雪が止んだからと言って安心も出来ない。吹雪の時に出れなかった自分達もそうだが魔獣や魔物が活動を始める。雪が降れば生命そのものの危機、晴れていれば魔獣や魔物と接敵しやすくなる。

 他の地域で希少種と言われていてもこの山では普通に遭遇する。それとはまた別の亜種なんかも存在するぐらいだ。メルクディン山脈が青ランク2人以上でなければ攻略させられないのは納得できた。

 1人で戦うのはなんだかんだ久しぶりかもしれない。昔に比べてかなり個人として実力をつけたので負けはしない、だが単純に戦闘回数が多いので少し疲れてきたな。


「そろそろ集落が見えてきてもいいよな?もう獣と戯れるのは疲れたぞ...」


 この山に詳しいであろうアンクル様に聞いておくべきだった。人が住んでるであろう、何かしらの痕跡があればと思ったが先日の吹雪で残ってるはずもなかった。風も吹いていないので宙へと浮かび辺りを見渡す。

 家らしきものも見当たらない本当にあるのか?民家よりも魔獣の群れの方が目に入る。しかも誰か追われていないか?狼ゾリを引いているが追いつかれそうだ。急降下して駆けつけ先団を蹴散らして着陸する。

 狼ゾリを引いていた人の顔はゴーグルで覆われており表情は分からない。何が起きたか分からない感じが伝わってきたが今はそれどころではない。


「ここは引き受けます!早く逃げて!」

「は、はい!」


 襲いかかる狼の群れに対して竜剣を振るっていく。この前編み出した溢れ出た魔力を使ってさらに剣を作り出せるようになったことで、術耐性のない敵に対しては楽に勝てるようになった。

 次々と首を落として数を減らしているはずなのだが減っている気がしない。それどころか増えていないか?何かがおかしいぞ一旦空へと離脱し状況を確認するとすぐに分かった。


「そういうことか、もしかしてただの狼の群れじゃなくてキマイラじゃないか?」


 増えているのは無理もなかった自分が首を切り落とし胴体と首だけに分離したはず。だがそこから黒い靄が発生し身体を再生させているため数が増えているようだ。要は倒しているつもりが増やしていたようだ。相手の策にハマっていたらしくよく見ると一匹だけ明らかに容姿が違った。他の狼は自分のことを探していたがそいつだけはこっちを見ていた。


「あれが本体か?逆になんで気づかなかったんだあれだけめだ...いや段々と大きくなってるのか」


 再生が出来なくなった個体を吸収して段々と成長し、さらに新しいのを生み出しているのか。この特性はどこかで聞いたことがあるような...似たような敵と戦ったことがあるような無いような。

 とりあえず本体を狙う為に急降下で場を荒らして他の狼と本体を分断させる。{ドーム}を発動させこれで他の狼が邪魔してくることもないだろう。外からの干渉を受けないのでこれ以上成長することもないだろう。


「これで一対一だな」

「グルルル・・・ワオオォォォン!!」


 咆哮を放つ奴の姿が重なって見えた何か能力を発動させたのかもしれない。複数の魔能を持つという時点でやつはキマイラ確定だろうがいったい何と何の合成獣なのだろう。増え続ける魔能を持つ魔獣や魔物のことを自分は知らないが今奴が発動させている魔能が本来の能力。

 {ドーム}内部に掴まり目まぐるしい速度で動き始めた。残った残像が連続で跳びかかってきたので身をかわしたりガードをすると切り裂かれた。常に高速で動き続けていて残像を残して、本体がどこにいるかを掴ませないようにしているようだ。

 この能力は確か希少種のシルバーウルフのはずだが自慢の銀色の体毛ではなかった。それにしてもいつまで動いてるんだ休みなく動き続けて疲れないのか?頭に生えた角が光り続けているので赤い光が繋がって見えるほどの速さだ。


「これは手強いな流石は希少種だな」

「グルルル・・・グガァァァァ!!」


 一度止まったと思いきやもう一度高速で動いた。先程も同じ速度で動いていたがあの一瞬で回復す...さっきより角の輝きが弱くなってないか?あの角が動力源だとするとあと何回か動くと隙が出来る可能性があるのでそれまで耐えよう。

 先程と同じく攻撃を弾こうとするが突然背中を引き裂かれ正面からの攻撃を辛うじて回避した。念のため貼っていた物理障壁が一撃で壊された。となると相当な威力なのでまた貼り直して相手の攻撃に集中する。先程よりも手数が増しており流石に無傷では済まなくなってきた。二回目の攻撃が終わりこちらもかなり消耗している。


「あと何回あるんだ、多くても二、三回しか受けれないぞ」

「グルルル・・・グ、グガァァァァ...」


 咆哮はしたが動く気配がなく口をだらしなく開けてよだれを垂らしている。その表情はどこか苦しそうにも見える。あの頭の角、もしかして身体を乗っ取って無理やり動かす術具なのではないか?

 先程までの殺意が感じられないぞ、とか考えていたら角が赤く光り苦しみだした。またも殺意のある目に戻り咆哮をして高速で動き始めた。輝きが弱くなっているが速度は衰えていなかったし攻撃も激しさを増していた。

 あの角を破壊すればこの攻撃も止むかもしれないな。今回を耐えきって次止まった時に角を狙ってみよう何か起こるかもしれない。剣に魔力を込めつつ相手の攻撃を躱そうとするが一回目や二回目よりも攻撃回数と攻撃時間が延びている。なので無傷では済まないが歯を食いしばって耐える。チャンスを伺い、ついに動きを止めた瞬間魔力を具現化させながら跳びかかる。


「{渾竜斬(スラッシュ)}!!」


 角に触れ火花が散るが強化された竜剣の刃を止めることは出来ない。障壁を打ち砕き綺麗に角を切り落とすと力無く倒れ辺りにいた他の狼達も霧散した。

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