#129 会議終結
「まず一連の魔王軍の動きについてまとめた上で、我々エクスキューションはメルドリア王家に戦いを挑む」
「え!?あの街が戦場になるんですか!?」
「被害を城内だけで抑えるために私が結界を貼るからそれには及ばないように努めるよ」
「ハウゼントさんの結界なら安心ですね。でも戦力ダウンしている自分達からどれだけの兵力を投じるつもりですか」
「私とハウゼントそして選りすぐりのエクスキューション兵数名だ」
ガッシュ・バグラス、ゼク・ハウゼントとその他数名で一国家に挑むのか!?現世界最強と言われているガッシュ・バグラスがいるにしてもいくらなんでも無謀なのでは...
「驚くのは無理もないけどソール君、彼の強さは敵も知っているので囮としても最適でしょ?」
「囮ですか?」
「ええそうです、私達は別の場所でとある作戦を決行する為の時間稼ぎをしてもらうのです」
「私達はその話を聞いていないのですが...」
「ソール君一行が来る前に決まったことなのよ。ついさっきのことだから伝わってなくて当然ね」
国葬が終わってからまだ数時間と経っていないのにもうそんな重大なことを決めた。という事はそれほど大事ことなのだろう一体どんな作戦だ?
「メルドリアでガッシュをぶつけて敵軍の戦力を分散させるのが狙いだな?」
「ええそうです、そして私達はメルクディン大陸の北西部にあるとされるサピダムの研究所を襲撃します」
「サピダムの研究所?」
メルクディン大陸北西部と言えば人が住むにはとても厳しい環境下で有名だ。独自に発達した珍しい魔獣や絶滅危惧種の魔獣もいる。
冒険者ギルドも高ランクである青以上でなければ許可証を出せない。メルクディン山脈で成果を上げられた暁には最高ランクである紫になるのもほぼ確実らしい。過去数年で昇格試験を数多の冒険者が挑戦したが紫に上がった者はおらず棄権もしくは行方不明になってしまったという。
「あの雪山か、しかしよ姉...フィオ姐、坊ちゃん達含めても誰も青に到達してないんじゃないか?ほら俺のカードだって・・・青色だな」
「あなた自分のカードの色把握してないの?この前の戦いで相当稼いだからランクも上がってるんじゃないかと思ってたけどやっぱりね」
「ですがメルクディン山脈にはパーティーメンバー内に最低でも青ランク以上の冒険者が2人はいります」
「ウェンとソールのランクはまだ赤になりたて、私は赤と青ランクの中間ぐらいですね」
「私達はそれぞれ国のことがあるので手を貸せませんが特別に許可する方法も可能になりました」
ミュリル様が目を向けた先にいるのはシーウェーブさんだ。当の本人はなんのことだか分かっておらず首を傾げている。
「過去に功績を上げた人が冒険者となった際は高めのランクを振られます。私達勇者一行は皆最初は青でしたのでシーウェーブさんも青のはずです」
そうか前の大戦の時には冒険者制度は今ほどしっかりしてた訳ではない。どれだけ強くても今の制度になってからランクがついてない人もいる。今まで大陸に一度も上がることがなかったし、仮にも魔族だから街に現れては大混乱だろうからランクをつける間も無かったのだろう。
「魔族を冒険者として扱うってことか?そりゃ異例にも程があるもんだなガハハハハ!」
「この場にいる誰かが不審感を示すようだったら私が行くつもりだったけど、エクスキューションも許してくれるってことでいいの?」
「・・・任務遂行の為ならば猫の手でも借りるべきだ。本来ならば我々から派遣すべきなのだが青ランク以上となると私とハウゼントしかもういないからな」
この前の戦いですぐに派遣出来るこの大陸のエクスキューション兵実力者は戦死。エクスキューション三闘士マクイル大陸を担当し名付けられた二つ名は剛力ことドーガ・べレイス。メルクディン大陸を担当し名付けられた二つ名は巧技ことザガ・ギルガバース。
両者共に既に寄生され夢幻のドリューションに取り込まれていたことが発覚したんだったな。それぞれが抱えていた特殊部隊である剛力隊及び巧技隊も消息不明、いつか自分達の前に敵として現れるかもしれない。
「それではまとめるとメルドリア王都へはエクスキューションに行き囮として動いてもらう。メルクディン山脈に行くのは、ソール、ウェルン、ベルゴフ、ネモリア、ヒュリルに加えてシーウェーブでよろしいですか?」
「あ、そのことなのだけどこの娘も連れていってくれないかしら?」
「えっお母さまいいの?今アルドリアとても大変だって...」
「私が一緒に戦えない以上少しでも成功率を上げるならあなたが行くべきよ。あとずっと国内にいても面白くないでしょう?」
「うん!ありがとうお母さま!私絶対に成功させてくるね!」
その後はそれぞれの国の未来の為に話し合いが進行し会議は終わった。各々が自身の部屋に戻った自分はカーテンを開けると月明かりが入り部屋を照らした。窓を開けると涼しい風が入り込んできた。
最初は自分1人で冒険者として旅をすると思っていた。ウェルンも着いてきて2人になって段々と仲間が増え一時的ではあるが、ヒュード、マイオア、ビース、ウィンガル、フィンシー、デビア、魔族の全種族の一行になるとは。
勇者の紋章を掲げ月の光りに照らしより輝きが増す。この紋章から勇者として自分の冒険が始まったんだよな。ここまで歩んできた道を一つ一つ思い返し自分の成長、今まで出会ったみんなのことを振り返りながら夜が更けていく。
久しぶりのふかふかなベッドだったからか布団に入るとすぐ眠気に襲われ、気がつけば朝になるほど熟睡出来たようだ・・・本来の出発時間まで寝てしまう程ね。




