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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
偽りの執行者

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128/246

#128 種族会談

 自分がいるこの場所はアルドリア城の会議室。アルドリア王家であるフィオルン様とフォルちゃんの2名、ヒルドリア王家であるミュリル様とキュミーもといヒュリルちゃんの2名。さらにサルドリア王家のベルゴフさん、エルドリア王家のネモリアさん。エクスキューションのジャッジマスターであるガッシュさんと三闘士であるハウゼントの2人。種族の代表会議が始まりそうな一室に自分とウェルンのようなただの冒険者がいる。


「ねぇソールちょっと息が詰まりそうなんだけど」

「勇者パーティとして特別にこの場に参加しているんだ少し我慢しよう」


 ベルゴフさんはいつも通り雑談をしているように見える、だがよく聞いて見るとその会話の内容は至って真面目だ。特に自分の正面に座っている世界最強の武人であるジャッジマスターガッシュ・バグラスからとんでもない程の威圧を感じる。気のせいかもしれないがすごく見られているような気がする。


「それではそろそろ始めましょう。今この場にはそれぞれの代表としてこの会議に参加してもらってます」

「じゃあ坊ちゃん達はこの場にいないヒュード族メルドリア王家の代表という事だな」

「そうなるわね、まぁそれについての話もあるから今はとりあえず進めましょう」


 今の一瞬で遂ウェルンと顔を見合わせてしまう。どうやら自分たち2人がグラス王の代わりとしてこの場にいるらしい。


「まず今回の魔王軍との戦いで分かったことをまとめたので表示させていただきます」


 キュミーの横についていたジューグラさんが前に進み、机に魔力を流すと円卓の中心から色々な情報を出てきた。今回の戦いでの被害や魔王軍の情報が事細やかに記しだされており目を通していく。

 三魔将軍が全員集結していたためかアルドリア軍とヒルドリア軍どちらも兵力が低下している。特にアルドリア軍は夢幻のドリューションが寄生したことにより、一時的にアルドリア軍を乗っ取られてしまった。アルドリア騎士団団長ゴルドレス、アルドリア王のようなその他兵団長クラスが軒並み倒されてしまっているか今回の戦いで傷を負った。


「こうやって情報としてまとめてみるとやはりアルドリアは痛手を負いましたね」

「そうだな、そもそものこの大陸そのものの軍事力が落ちたから今すぐ補強もきついな」


 同じくマクイル大陸に配属された者も全て寄生されていたことが確認された。エクスキューション三闘士である巧技のギルガバースと剛力のドーガはドリューションによって取り込まれた。いつからかは分からない、マクイル大陸とメルクディン大陸の2つが魔王軍に掌握されていることも発覚し現在調査中とのこと。


「夢幻のドリューションがあんな力を秘めていたとは思いもしませんでした。あれ程の力を有していながらもまだ実力を隠しているようでした」

「魔王軍には余力がありこちらの戦力が激減で、」

「発言してもいいか?」


 ここまで腕を組み言葉を発していなかったガッシュさんの低い声が会議室に響く。声に魔力を纏わしているのではないかと思うぐらい耳に響いたな。


「今からまた更に頭を抱えるかもしれない情報をここに出してもいいか?」

「その言い方はここにいる全員が把握したほうがいい情報なんですねガッシュ」


 ガッシュさんは頷き、机に手を置き魔力を流していくとそこには驚くべきことが書かれていた。自分だけでなく部屋にいるキュミーとフォルを除いた全員が動揺を隠せていなかった。


「本当なのですか?これが本当なら今までソール君達は踊らされていたことになりますよ?」


 そこに示されていたことを要約すると自分達が代わりを務めているグラス・メルドリア王家が偽物ということだった。どうやら自分達が関わるよりもかなり前にグラス・メルドリア王が暗殺され、夢幻のドリューションによってなりすまされていたようだ。

 この裏付けを取るために一時的にガッシュさんは姿を隠した。その結果最後の三魔将軍である無限のドリューションを暗躍させ炙りだすことに成功したという。


「まぁそのおかげでソールもこんなに冒険するとは思わなかったよね?」

「そうだね...待ってくださいそれってもしかして自分が勇者かもしれな、」

「いや坊ちゃんそこは本当なんじゃねえか?じゃなきゃその紋章着けれてないだろう?」


 そうか自分に{勇者のオーラ}があるということだけは変わらないのか。何をいまさらなことを言っているんだ、これまで使えた自分の力じゃないか。そしてデビアとして覚醒し魔の力も開放し強くなりはした。だがまだ自分が叶わない相手ばかりだろう。

 頭の中で今まで戦ってきた強者達を思い出す。叡智のサピダム、狂猛のフュペーガ、竜騎兵のことを思い出し机の上で拳が握られる。また叶わなかった、もしシーウェーブさんが来てなければ自分はやられていたかもしれない。


「ああそうですね皆さんにご紹介したい人がいまして...」


 と言うとシャンデリアの上から当の本人が降りてきた。突然登場したスケルトンに護衛の方々全員が身構えた。各々の武器を抜くがその武器が全て宙に浮き元の所に戻った。


「こちらには戦うつもりもねぇよ。てかわざわざこんなところで暴れるほど馬鹿なやつじゃねぇよ。警戒するのはいいことだが少し考えな、頭の固い若い野郎共がよ」

「今の能力もしかしてあなたあのシーウェーブなの?」

「確かにこの能力はシーウェーブさんですけどまさか魔族に転化していたのね」

「我々が追ってきたのはお前だったのか。確か数日前にエルドリア王家から私掠船の通達が...」

「意外と分かってくれるやつの方が多いのか、ガハハハハハ!!」


 少し堅い空気が流れていた空間だったがシーウェーブさんが現れたことによってそれもだいぶ落ち着いたようだ。

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